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337頁

レオノーラさんへの愛が重い女性騎士の様子に仲間の騎士達はまたかと呆れている人達と、怯えている様子の人達に分かれている。

レオノーラさんは呆れている方であったが、


「静かにしないか。今は火急を要すると言っていい程、時間は無駄にしたくはない」


そう言葉を発すると、先程まで荒れ狂っていた女性騎士が大人しくなってレオノーラさんの方を向いた…。


「私が操られているかと心配していた者も、確かにその心配は分からなくもない。私も同じ考えをしていただろう。だが、私はこの通り生きている。一度は彼に敗北し死んでしまったが、また彼のお陰で生きている。そして、彼は私達亜人族を助けたいと行動している珍しい者だ。実力は私よりも上、下手に攻撃などしない様にな」


レオノーラさんが俺に手を向けながらそう言い、


「私は彼の力を借り、帝都に住む亜人族の皆を安全な場所で共に暮らしたいと思っている。実は昨夜から、スラム街の体が上手く動かせない者達や子供はその場所に移動をさせ始めている。私が帝都を護る騎士団長では無くなった事で、これから亜人族差別がこれまで以上になる事は分かり切った事だ。幸い、彼は私達を保護すると言っていたが、しっかりと対等な存在で見てくれている。私は、帝都の亜人族が安全な場所にいるのなら、この帝都に留まるつもりでは無い。それほど、皇族や上の者達は亜人族をただの道具として私達の事を見て、利用する。しかし彼はその様な事をしない。まだ会っても間もないし、しっかりとした話し合いすらしてもいない。しかし、私の意見を聞いて、それを実現できるか考え、改善策やより良い状況になる事を共に考えてくれる。私は、彼の元でなら配下になっても構わないつもりで、彼と共に行動している」


熱弁と言っても過言では無い、冷静であり語尾をしっかりと言い切るその姿に、流石は彼らを纏めてきた騎士団長だなと感心する。

少し上から目線と言うか、俺はレオノーラさんは仲間意識と言うよりも親が子を思う様に、騎士団の団員達やスラム街の人達を、護るべき者達として見ているのかと思っていたが、それは多分間違いだろうと反省する。

彼女が団員達やスラム街の人達を護る対象としているのは変わりは無い、しかしそれは自分が騎士団長だからとかでは無く、同じ亜人族として仲間を傷つけられたくない仲間意識の様な感じだという事だ。

彼女はただ、仲間を護りたいのだ。

俺はそう思い、冑の下で笑みを浮かべる。

そして、俺は何も言わずに手を挙げる。

突然動いた俺に注目した騎士達が俺に視線を向けてくるのが分かると、


「私の………、俺の言葉を信用出来ないのは理解しています。しかし、これだけは信じて欲しい。俺は、レオノーラさんを下の者として見てはいません。彼女の仲間を助ける為に、命を賭けるその姿に尊敬をし、彼女の心持ちを見習いたいと思っています。1つ訂正するとするならば、俺は亜人族の容姿が好きであり、保護をしたいと思っている。それはおそらく、彼女の言う対等とは違うかもしれません。それでも、亜人族を大切に接していき、交流を深めていきたいと思っているこの気持ちに嘘はありません」


俺はそう言葉を発しながら、完全に装備していた冑を外して姿を見せる。

俺の姿を確認した団員達が、数名俺に気がついた様子だ。

見回りの時などに、見た事がある俺の姿に驚いているのだろう。

俺はそう思いつつ、


「だから、レオノーラさんの気持ちを無下にはしないで下さい。俺が出来る事なら、出来る限り叶えるつもりでいます」


詰所に集まっている騎士団の団員達にそう言った。

俺の言葉を聞いた騎士達が、俺を見た後にレオノーラさんに視線を送る。

彼らのそんな視線は、どこかレオノーラさんに縋っている様にも感じられる。

レオノーラさんはその視線に気づいて、笑いながらため息を吐く。

そして、


「私達が何故、街の者達から笑われていても騎士として国に尽くしていた理由を考えろ!思い出せ!騎士に頼む仕事では無い事も、明らかに私達を下に見てきた報酬にも、全ての理不尽に私達は耐えてきた!何故、怒りを出さず、騎士を続けていけたのか!それは、私達が帝都の亜人族を少しでも助ける為だ!私達は常に、同胞を気遣い痛みを共有する!今、私達が同胞を救える機会を目の前にして、悩む事などありはしない!同胞を護り、仲間と助け合える場所であるのなら、私達はそこへ進むべきである!問おう!我々騎士団が何を護るのかッッ!?」


レオノーラさんが咆哮する!

その勢いと言葉の強みに威圧感を感じる。

そして、同時に絶叫する彼女の声が外に漏れていないか心配になってしまう。

俺は気配察知スキルを発動し、今のところ詰所の近くに人が集まっていない事を確認して安堵する。

俺が安堵すると同時に、


「「「「「仲間をッッ!同胞をッッ!友をッッ!」」」」」


今度は集まってくれた騎士達が彼女に負けじと咆哮する…。

勢いとか、連帯感が良いのは彼らを見て理解している。

でも、声のボリュームは下げて欲しい…。

俺がそう願っていると、流石にあまりにも騒がしくなった詰所の様子を不審に思ったのか、街の住民が集まってくるのを気配察知スキルで理解する。

仕方が無い。

俺はそう思い、威圧スキルを発動して詰所に近づいて来ていた人達を威圧して恐怖を感じさせる。

すると、詰所に近づいて来ていた人達が立ち止まったり、動きを止めるのを感じ取る。

上手くいった様だ。

俺はそう安心して、威圧スキルを発動し続けながら、


「レオノーラさん、そろそろ…」


彼女にそう声を掛けると、満足気にしていたレオノーラさんが俺の言葉に頷き、


「さて、おそらく皆の意思も固まっただろう。これからどうするのだ?」


未だに雄叫びを上げている騎士達を見ながらそう聞いてくる。

彼女の問いを聞いた俺は、


「班を二手に分けて、1つの班人数はあまり多くなくても十分でしょう。その班は明日以降に働く予定だった騎士団員の亜人族にスラム街に集まる様に声掛けをお願いしましょう。もう1つは、スラム街で残っている亜人族を数か所に分けるのと、スラム街の住民の荷物の整理などをお手伝いして貰いたいです」


そう伝えると、レオノーラさんは了解したと言い雄叫びを上げている騎士達を静め、俺が伝えた指示通りに騎士達を2つの班に分けて指示を出し始めた。


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