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ブルクハルトさんの悔しそうな表情を見た俺は、何か出来る事は無いかと考えるが、ヴァルダとしては帝都の冒険者ギルドの第二級冒険者、貴族に何かを進言する権力も金も無い平民だ。
エルヴァンとしての立場は権力を有してはいるのだが、それでもまだ騎士団の新参者故に発言をしたとしても、一蹴されてしまう可能性が十分にある。
どうする、どうすれば彼らを助ける事が出来る?
俺がそう思っていると、
「話が見えないのだが…」
今まで放置していたレオノーラさんが、俺とブルクハルトさんにそう言ってくる。
説明とかしていないし、突然彼女を呼び出してしまったからな…。
俺はそう思い、
「すみませんレオノーラさん。突然呼び出してしまって」
レオノーラさんに謝罪をすると、
「とりあえず話は勝手に聞いていたのだが、その亜人族はどの様な経緯で奴隷になったのかは分かるのか?それと、誰が奴隷兵士として使うとブルクハルト殿に依頼をしたのだ?」
レオノーラさんは俺とブルクハルトさんにそう聞いてくる。
彼女の言葉を聞いたブルクハルトさんは、
「か、彼らは様々な理由で奴隷になっています。私が直接彼らを買い取った訳では無いので書類にしかまだ目を通していませんが、犯罪を犯した者や口減らしの為に家族に売られた者もおります。依頼主は、大雑把に国からの命としか…」
レオノーラさんの質問にそう答える。
ブルクハルトさんの答えを聞いたレオノーラさんは、少し考える様な素振りをすると、
「犯罪を犯した奴隷は自業自得だとは思うのだが、ただ不幸な理由で奴隷にされてしまった者は助けたい気持ちは理解できる。しかし…」
そう呟いて、少し言葉を詰まらせる。
気持ちは理解出来るが、それでも国からの命令に背く事をするとどうなるのか、それもレオノーラさんは分かっているのだろう。
「数を誤魔化す事は出来ないですし、様々な奴隷商人にこの命令が下っています。他の奴隷商人から犯罪を犯した奴隷を買う事すら出来ない状態です」
ブルクハルトさんの言葉を聞き、流石に俺もどうしようかと考える。
………すると意外にも1つ、方法は思い付きはした。
しかし、それは長期的な計画になってしまうし、国からの命令の期限に間に合わないかもしれない。
俺はそう思いながらも、
「1つ、俺に考えがあります」
俺はそう言葉を発すると、ブルクハルトさんとレオノーラさんが俺に注目して視線を向けてくる。
「今から犯罪を犯している人を捕まえ、それを奴隷として国の奴隷兵士にさせてしまいましょう」
俺の言葉を聞いたブルクハルトさんとレオノーラさんは少し難しそうな表情をすると、
「ビステル様、それは簡単に出来る事ではありません。正式に騎士に通達し、騎士団の方で捕まえて貰う事になります。更にそこから騎士団から犯罪を犯した者の処分を上層部に委ね、犯罪奴隷として商人の元に売られるか、それとも極刑、もしくは開拓地の強制労働にするか様々な判決をされます」
ブルクハルトさんがそう言ってくる。
それに続いて、
「彼の言う通りだ、騎士団より上に犯罪者の身柄を動かすと、賄賂などで犯罪をもみ消される事もよくある。貴族連中は特にそうだ」
レオノーラさんがそう言ってくる。
2人の言葉を聞いた俺は、
「貴族には効果が薄くても、それに関与している者を全て捕まえてしまえば貴族の連中は下の者達を切り捨てるでしょう。それで数はある程度確保できると思います」
そう答えると、ブルクハルトさんとレオノーラさんに視線を向け、
「今ここで頭を悩ましていても解決できるかは分かりません。故に、今出来る事をしましょう」
そう言い、
「ブルクハルトさんは、出来る限り書類を読んで奴隷兵士として国に売れる者と売ってはいけない者の選定をお願いします。レオノーラさんは、レオノーラさんが現役であった頃に怪しかった者の詳細と、それに関する情報を教えてください。この際、レオノーラさんにも動いて貰います」
俺は2人にそう指示を出すと、ブルクハルトさんは分かりましたと言い、
「改めて、ビステル様を疑った事を謝罪します。申し訳ありませんでしたビステル様」
俺にそう謝罪をしてきた。
彼の言葉に俺は、
「見返りは、これから助ける奴隷になってしまった人達の身の安全をお願いしましょうかね」
笑いながらそう言うと、ビステル様は勢いよく返事をした後部屋から飛び出して行ってしまう。
彼がいなくなった部屋に残された俺とレオノーラさんは、
「さて、ではレオノーラさんは俺に騎士団長だった頃から目を付けていた人達の情報を教えて貰いましょう。騎士団の人達を動かさなくても、俺1人でどうにか出来るでしょうし」
俺の言葉を皮切りに、レオノーラさんから騎士団長の時から怪しんでいた者達や明らかに見過ごされている犯罪者の情報を教えて貰い始める。
やる事が多すぎるが、今が一番俺が奴隷となってしまった亜人族を保護、助けられる時だと思い気持ちを高ぶらせると、
「レオノーラさんには、エルヴァンとして騎士団長をしている俺の補佐として動いて貰います。装備を渡します、それを羽織って下さい」
俺はレオノーラさんにそう伝えて、大きめのフード付きのマントを彼女に手渡すと、
「随分と大きな物だな、裾辺りを引きずってしまうかもしれないが良いのか?」
俺に少し心配そうな様子でそう聞いてくる。
そんな彼女の言葉に大丈夫だと伝えると、レオノーラさんは着けている装備の上から全身を覆う様にマントを羽織り、フードを被る………。
つ、角が目立ってしまうな。
俺がそう思っていると、
「…今君が思っている事を、私も感じている。これは大丈夫なのだろうか?」
レオノーラさんが気まずそうにそう聞いてくる。
そんな彼女の言葉に俺は、
「いや、俺の様に大きめの装備を着けると全身が大きく見えて大丈夫かもしれませんよ!?」
レオノーラさんの魅力である角の事を気にしない様に伝えると、アイテム袋からエルヴァンやこれから俺が装備する予定と同じくらい、大きめでゴツい装備を取り出してレオノーラさんに差し出し、
「それを装備したら、声を掛けて下さい!」
俺はブルクハルトさんと同じ様に部屋を飛び出して、扉の前でレオノーラさんから声が掛けられるまで待つ事にした。
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