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書類が読めない事を素直に白状した俺は、書類を差し出してきた女性騎士に怒りが宿っている様な視線を向けられて、街の警護をしつつ城に言って来ると伝えて仕事を押し付ける形で詰所を後にした。

申し訳ない事をしたと思い、反省の気持ちのまま帝都の街を歩いていると、流石に店を開け始める為に準備を始めた帝都の住民達が活発に動いている。

そんな様子を見ていると、


「これはこれは騎士団長様!お早い見回りですね!」


1人の男性が俺にそう言ってくる。

彼の言葉に、


「あぁ、私は元々剣の腕を高める為にここへと来ていたからな。見回りをすれば、喧嘩の仲裁に入る機会も多くなる。書類を読み書きしているより、私はこの方が性に合っている」


そう答え、追加で俺は昨夜に話し合った際に言おうと思っていた事を、


「今日の夕刻から、申し訳無いが詰所に騎士を集めるつもりだ。夕刻以降に問題を起こされても、すぐには対処する事が出来ないと周りの皆にも教えて回ってくれ。対処をする際には、私自ら腕の力だけで解決するつもりだという事をよろしく頼む」


周りを歩いていた人達にも聞こえる様に、大きな声でそうお願いをすると、


「怖い怖い、腕っぷしの強さで敵う相手なんかいないでしょうに!無駄に怪我人が出ない様、店に来る者達にも伝えておきますよぉ!」

「背負っている大剣で殴られただけで、大怪我になっちまうからなぁ!」


周りの者達がそう言って笑い始める。

実際はそんな事をするつもりは無いが、亜人族を虐げている姿を確認したら夜道に気をつけるんだな…。

俺はそんな事を思いながらも、よろしく頼むと伝えると城へと向かって歩み始める。

城に到達すると、俺は城の敷地に入る為に見張りをしている騎士達に声を掛け、エメリッツを呼んでくれるか、俺自身が来た事を伝えて欲しいとお願いすると、騎士達は問題が無いという事で俺をそのまま城の敷地内に入れてくれた。

ここまであっさりと城に入る事が出来る今の立場は良いとは思うが、それでもこんな国の為に労力を使う必要は無いだろうし、今の立場はやはり必要ないなと思いながら俺は城に向かい、出迎えてくれたメイドさんにエメリッツの場所を問う。

俺の質問を聞いたメイドさんがエメリッツが今は自分の職務室で仕事をしている時間である事を教えて貰い、俺は記憶を頼りにエメリッツの部屋まで向かう事にして城の廊下を進む。

少し道に迷いそうになりながらもエメリッツの部屋まで辿り着いた俺は、部屋の扉をノックする。

少しして、


「どうぞ」


低い声が扉の向こうから聞こえて、


「失礼する」


俺はそう言って部屋の扉を開ける。

中にはエメリッツが机に向かって書類に羽ペンをサラサラと動かしている姿が見え、それを書き終えるとハンコを押しているのか、何やら強めに紙に物を押し付けている。

遠くではあまり見えないな…。

俺はそう思い、扉を閉めて部屋の中を歩きエメリッツの座っている机の前に行く。

一応立場上俺の方が下だ、彼が話し掛けてくるまで待っていた方が良いだろう。

俺がそう思っていると、エメリッツはまるで俺が見えていないかの様に次の書類にペンを走らせると、またハンコを押す。

ハンコは名前や字では無く、紋章の様な絵が描かれている。

そんな様子を見てそう思っていると、


「今日は何の様ですかエルヴァン殿?」


少し機嫌が悪いのか、それとも書類に集中しているのか普段よりも低い声でそう質問をしてくるエメリッツ。

彼の言葉を聞いた俺は、


「1つ頼みたい事があるのだが…」


そう言葉を濁しながら彼に言葉を伝えると、書類の上を走っていたペンが動きを止め、エメリッツがゆっくりと顔を上げて俺の事を見てくる。


「何でしょうか?結構私は貴方に対して寛容にしているつもりではありますが、それでも聞けるモノとそうでないモノがありますよ?」


怒りは宿していないが、俺を非難してくる様な言葉を使うエメリッツ。

俺はそんな彼に、


「私が今管理している騎士団に、人族の騎士達を入れたいと思っているのだがそれは駄目だろうか?」


俺がそう伝えると、エメリッツは握っているペンを一度ペン立ての様な小さな器に入れると、


「わざわざ亜人族なんかと仕事をしたいなんて人はなかなかいませんよ。それにこれ以上騎士を増やす事は不可能です。資金難とまでは言いませんが、これ以上の人手を増やす事は難しい所ですね」


俺の事を見ながらそう言ってくる。

彼の言葉を聞いた俺は都合が良いと思わせる様に気にしながら、


「あぁ、だからその為に亜人族の騎士達は人族の騎士と交代させる様に止めて貰おうと思っている。元々前騎士団長を殺した事で、彼らからの私の印象はあまり良くない。それでは帝都の街の平和の維持も出来なくなって来るだろう。それでようやく、帝都の騎士団も綺麗になるのではないかと私は考える」


そう彼に進言をしてみる。

俺の言葉を聞いたエメリッツは少し考える様に顎の下を指でなぞり、視線を俺から動かして部屋の様々な方向に移動している。

そして、


「エルヴァン殿の言う通りですが、まずは騎士になってくれる者を街などから集めなければいけません。今すぐにとは、流石に出来ませんよ?」


俺の提案を聞き入れてくれた事と、すぐには行動出来ない事を伝えてくる。

彼のその言葉を聞いた俺は、


「城の騎士達は駄目なのか?」


試しにそう聞いてみると、エメリッツは焦った様な必死の形相になって、


「城の騎士達は駄目です!城の警備を厳重にしていますが、それでも足りないのではないかと言われているのですから!」


そう言ってきた。

一応俺の提案を聞き、案として実行してくれるのだ。

ここが引き時だろう。

俺はそう思い、


「そうだな。まだ騎士としても未熟な私が言う事では無かった。謝罪しようエメリッツ殿」


そう言って軽く頭を下げると、


「大丈夫です。エルヴァン殿の配下となる騎士の募集はすぐにでも始めさせてもらいます。後の対応はエルヴァン殿にお任せしますので、よろしくお願いします」


エメリッツがそう言ってくる。

彼の言葉を聞き、


「了解した。それでは、この件に関してはこちらで動こう」


そう返事をすると、エメリッツはペン立てに入れていたペンを再度持つと書類に目を通し始めた。

もう話し掛けても聞こえなさそうだと判断した俺は、そのままエメリッツの部屋を出ると次の目的地へと出向く為に廊下を歩き始めた。


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