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324頁

俺との会話を一度中断したレオノーラさんは、広場に集まった人達の元に行き、


「すまないな。皆には心配掛けた。この通り一応生きている、もし信用出来ないのなら信用されるまで話をするつもりだ」


1人1人に声を掛けていく。

その様子を見ていると、レオノーラさんの顔に触れたりしている人や本人か確認する為に話をする人がいる。

レオノーラさんは触れてくる手を嫌がらずに相手の好きに触らせ、話をしっかりと聞いて喋っている。

…俺もレオノーラさんの角触りたい…。

俺はそう思いつつ、彼女が皆に信頼されるまで見守っている。

やがて全ての人達と話し終えると、


「彼は私の…今仕えている主と言っても良いヴァルダ・ビステルという者だ。彼が皆を安全な場所に移住させてくれる、私もこの目で見てきた。突然の事で申し訳無いが、今は騙されたと思って私に従ってくれないか?」


レオノーラさんが俺の事を手で指してそう言ってくる。

彼女の言葉を聞いた俺は、深く被っていたフードを取って素顔を見せると、


「初めまして。ヴァルダ・ビステルと言います」


俺は軽く一礼をして名前を告げる。

すると、


「人族だ」

「いや、魔族かもしれない」


少しスラム街の人達が動揺した様子で周りの人達と話し合う声が聞こえる。

俺はそんな彼らに、


「俺の事を信用出来ないのは仕方がないと思っています。故に、レオノーラさんの言葉を信用してください」


レオノーラさんの事を見ながらそう言うと、彼女は俺に一度視線を向けてきて、


「彼の言う通り、皆は彼の事を知らないから信用する事が難しいのは理解出来る。しかし私は彼と話しをし、信用する者だと確信している。そんな私を、信用してくれないか?」


すぐにスラム街の人達に視線を戻して、レオノーラさんはそう言う。

彼女の言葉を聞いたスラム街の人達は、少し戸惑いながらもレオノーラさんの事ならと呟き、皆の様子を窺っていたレオノーラさんは少し安堵した様子だった。

そして、


「私もそうだが、今から皆は彼と契約してもらう。理由は、彼が守護している安全な場所に行く為の許可証の役割の様なモノだと考えて欲しい。今日はここにいる者達しか移動させられないが、彼とは話し合い出来る限り早く皆を移動させたいと思っている。協力して欲しい」


レオノーラさんは目の前にいるスラム街の人達にそう説明すると、深く頭を下げた。

そんなレオノーラさんの姿を見たスラム街の人達は、俺の事を見た後に、


「レオノーラ様を信じよう」

「そうだな。今目の前にいるレオノーラ様が偽者だとしても、今のままだったらどうせ俺達は…」


彼らは思い思いの言葉を口にする。

少し諦めた様な言葉が多く、俺の事を信用していない様子がよく分かる。

しかし彼らが俺の事を信用できないのは理解出来る故に、苦笑して事の成り行きを見ていると、


「レオノーラさまの事、信じる!」


小さな、やっと言葉をしっかりと話せる様な子供が、レオノーラさんの元にフラフラと近寄りそう言った。

そんな子供をレオノーラさんはしゃがみ込んで視線を合わせる様に身を低くし、


「…ありがとう」


子供にお礼を言って頭を下げるレオノーラさん。

そんなレオノーラさんの頭を撫でる子供の様子を見ていたスラム街の人達は、


「…クソッ…子供の方が凄いぞお前ら!うじうじと悩んでる俺達より勇気がある!俺達のレオノーラ様への恩義は、今あの人がこうして頭を下げている姿を見て、何も言わずに頷くだけだ!俺達が今を生きていられるのも、このお方のお陰だろう!」


1人の活気の良い男性の発言で一気に前向きな言葉を言う様になった…。

だが、皆の声が大きい…。

静かにしないと、マズいぞ。

俺は少し慌ててどうしようかと考えていると、


「静まれッ!」


レオノーラさんも大きな声で皆の声を上書きする…。

あ、貴女の声も他の人達、特にスラム街じゃない人達には聞こえてはいけないんですけど!?

俺がそう思っていると、


「今の叱咤、まさしくレオノーラ様だ」


むしろ彼女の発言で、更に信憑性が増した様だ。

それからは早く、レオノーラさんの指示によって契約は次々に行われていき、あっという間に今夜集まったスラム街の人達は全て仮契約をする事が出来た。

両手を失っている人はいなかったが、片腕を失っている人が2人程おり、仮契約を今後する時にもっと詳しく話をしないといけない事も増えたと感じた。

レオノーラさんに聞くと両腕を失っている人もいる様で、その様な人には本契約するしかないと思い、その際には本契約の説明と仮契約との違いを話さないといけないなと考える。

そうして俺は本の中の世界(ワールドブック)を開いて帰還と呟くと、黒い靄が発生しスラム街の人達が少しどよめく。

これを見た時の反応は、種族関係無く少し不安そうになるんだな。

俺はそう思いながらも、


「レオノーラさん、先導して皆さんを塔に連れて行ってください」


レオノーラさんにそうお願いをすると、俺の言葉を聞いた彼女が頷いて、


「では皆、私に付いて来てくれ」


心配そうにしているスラム街の人達にそう言って、彼女は黒い靄の中へと入っていく。

彼女に続いて、スラム街の人達もおずおずと心配と緊張した様子で黒い靄の中に入っていく。

今いるスラム街の人達が全て靄の中に入っていったのを確認すると、俺は誰にも気づかれていないか確認しつつ俺自身も靄の中に入って塔へと戻った。

塔に戻って来ると、先に向かったスラム街の人達が塔の内装を見て唖然としている。

そんな様子に俺は、


「さて、ではまず皆さんにして頂く事があります」


少し大きな声で皆の意識を俺に集めると、


「ついでにレオノーラさんも」

「ん??」


俺はレオノーラさんにも声を掛けて、皆を連れて来た部屋を出て塔のある場所に向かう。

道中、


「おかえりなさいませヴァルダ様。………そちらの方々は??」


シェーファが俺の元に来て挨拶をしてくれる。

夜中だと言うのに起きていたのかと驚きつつ、


「ただいま。すまないがシェーファ、皆を浴場へ連れて行く。女性側の説明をお願いしても良いか?」


俺がそうお願いをすると、シェーファは俺の後ろにいるスラム街から来た人達を見て、


「分かりました。では、ご同行させていただきます」


納得してくれると、俺の後に続いて風呂場へと向かってくれる。

そうして浴場に着いた俺達は、女性側と男性側で別れた後女性側はシェーファに任せて、俺は男性達に風呂の入り方を説明した。


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