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323頁

本の中の世界(ワールドブック)で外の世界に戻ってきたのだが、夜になるまで待機だと判断して宿屋の一室で少しの間時間を潰した後、俺とレオノーラさんは帝都の街へと赴いた。

しかし道を歩いていると、意外にも人が多い事に気がつき、視線も普段よりも感じる。

1人でフードを深く被って歩く姿と、2人がフードを深く被って歩く姿とでは目立ち方が違う。

少しマズいだろうか?

俺はそう心配しているが、そんな視線を何とも思わない様にレオノーラさんは黙々と帝都の道を歩いている。

俺が心配している内に裏路地へと入っていくと、俺は一応警戒して気配察知スキルを発動しておく。

裏路地にも人の気配はするが、それが俺達を追って来ている訳でも無く、動かない気配も感じる故に酔い潰れた人だろうから大丈夫だと思い、


「流石に2人でフードを深く被っているのは怪しすぎましたかね?」


小さな声でそう質問をレオノーラさんにすると、


「私個人はああいう視線によく晒されていたからな。あまりにも長い間見られてきた所為か、もうあまり気にならなくなった」


彼女も小さな声でそう言ってくる。

彼女の言葉に、俺はそういうモノなのかと思っていると、


「そういえば、1つ君に言いたい事があったのだが…」


レオノーラさんが俺にそんな事を言ってくる。

しかし、彼女とは塔で結構話したつもりなのだが…。

俺がそう思っていると、


「君、第一級冒険者の話を私にしていないのは自覚しているのか?」

「……あ…」


レオノーラさんの言葉を聞いた俺は、塔の食堂での会話を思い出して口から声が漏れ出してしまった。


「…自覚無かったという事は、別に隠しているつもりではなかったのか。…私もルミルフルとの会話で気にならなかったが、今帝都に戻って来た時に思い出してな」


俺の口から漏れ出した声を聞いたレオノーラさんがそう言うと、


「怒っている訳では無い。ゆっくりとする時間が出来たら、その時に言ってくれ。今は、皆の為にゆっくりしている訳にもいかない」


レオノーラさんがそう言ってくれる。

彼女の言葉に、


「分かりました」


俺はそう短く答えると、レオノーラさんは頷いてスラム街へと歩みを進めた。

そうして帝都のスラム街へとやって来た俺達は、


「「………」」


今まで見てきた中で一番空気が悪いスラム街の様子に、俺とレオノーラさんは黙ってスラム街の様子を窺う。

スラム街の小屋や道の端に、亜人族の人達が生気が抜けた様子で虚空を見つめている。

大丈夫だろうか?

俺がそう思っていると、


「…仕方が無いと言うのも自意識が過剰なのかもしれないが、皆がここまで無気力になるとは…」


レオノーラさんがそう言うと、深く被っていたフードを取ると、


「おい大丈夫か?」


近くにいた男性にそう声を掛ける。

すると、


「あぁ、レオノーラ様。あの世から迎えに…」


男性がレオノーラさんの顔を見てそう言う。

そんな言葉を言われたレオノーラさんは、


「しっかりするのだ!夜中とはいえ、こんな所で寝ぼけるな!」


声量を抑えた声でお怒りの言葉を男性に放つと、男性の頬に平手打ちを一発ぶち込む…。

今の彼女のレベルは1。

彼女も本気で叩いてる訳では無いから良いが、それと同時にツッコミを入れる場所が違う様な気がする。

俺がそんな事を思っていると、


「…この叩き方…」


レオノーラさんに叩かれた男性が、ハッとした表情で視点をレオノーラさんに定める。

それで目を覚ますって、どうなんだろう…。

色々な意味で俺が感想を抱いていると、


「目を覚ましたか?ならば、静かに、しかし迅速に行動せよ!スラムの者達に声を掛け、広場に集合させるのだ!」


レオノーラさんが男性にそう指示を出す。

それを聞いた男性は、


「ハッ!」


先程まで道に座り込んでいた人とは思えない程勢いよく立ち上がると、レオノーラさんの指示に従って走り出す。

ま、まぁこれで速く動けるのなら良いだろう。

俺がそう思っていると、レオノーラさんは次々と近くの人達に声を掛けると、命令を出していく。

レオノーラさんの事を見たスラムの人達は最初は信じていなかったが、彼女に命令されたり叩かれたりするとそれが本人だと分かる様で、虚ろ気な瞳も一瞬で治ってしまう。

どうやら、相当彼女から色々と命令されたりしていた様だ。

俺がそう思っていると、


「君は皆を連れていく準備を始めていてくれ。私は皆を集め、すぐに移動出来るようにしておく」


レオノーラさんが、俺にそう言ってくる。

彼女の指示を聞いた俺は、


「分かりました。でも静かに動いてくださいね。貴女の素顔をスラム街以外の人に知られるのはマズいですから」


彼女に一応注意をしてから、本の中の世界(ワールドブック)を取り出してページの切れ端を準備し、レオノーラさんがスラム街の人達を集めるのを見守る事にした。

セシリアを召喚して、不帰の森の時の様に彼女のスキルを使って範囲を指定しようと思ったのだが、流石にスラム街を全ては範囲指定する事は出来ない。

レオノーラさんに予め聞いておくべきだったな…。

俺は少し後悔しながらも、レオノーラさんの後を追って広場に向かう。

そうして深夜だというのに帝都の中では小さな、しかしスラム街では広場として扱われている少し拓けた場所に、結構な人数が集まっている。

中でも眠そうな子供が多く、俺はそんな人達を見た後にレオノーラさんを見ると、


「私だって考え無しではないぞ。子供や老人、奴隷の時に主人に痛めつけられて上手く体を動かせない者と、その家族。最優先でここから助け出す者達をここに集めた」


俺の視線に気がついたレオノーラさんが、俺の方を向いてそう言ってくる。


「流石ですね」


俺が彼女の冷静な判断にそう言うと、


「いや、それでもこの人数では少ない方だ。まだまだここから逃がさないといけない人は多い。しかし今は隠密に動く事を優先させる。少しずつ確実に、皆をここから助けたい」


レオノーラさんが集まっている人達に視線を向き直しながら俺に伝えてくる。

確実に皆を助けたい。

その言葉には、希望と同時に一回で全員を助けられない焦燥感や心配な様子があるが、それを押し隠す様にしているのが、俺にだって分かる。

故に俺は、


「寝てられないですね。お互いに」


彼女に対して、俺はそう言い返した。

俺の言葉を聞いたレオノーラさんは少し笑った様に息を短く吐くと、


「騎士団団長は、いつでもすぐに起きて物事に対応出来る様に深く眠れないものさ」


そう言ってきた。


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