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レオノーラさんとルミルフルも、お互いに一緒のテーブルを囲う事になるとは思わなかっただろう。

俺は今の現状に少しだけ目を背けつつそう考え、


「お互いに言いたい事はあると思いますが、とりあえず俺の方から少しだけ話をします」


視線をぶつけ合っている2人にそう言い、まずはルミルフルの事を見る。

レオノーラさんに少し敵意と言うか、警戒している様子を見せている。


「ルミルフル、彼女の事は知っているだろうから紹介という紹介は必要ないだろう。彼女にはこれから行う予定の帝都の亜人族保護、その重要な人物だ。帝都の亜人族の事なら、おそらく彼女が一番信頼され、彼女が一番情報を握っているだろう」


俺がそう説明すると、


「…ふ~ん」


ルミルフルはレオノーラさんに鋭い視線を向けながら、俺の言葉に意味がありそうな反応をする。

そんなルミルフルの反応に俺は頬を引き攣らせて、


「レオノーラさんも、彼女の事はご存知だと思いますが紹介します。彼女はルミルフル、魔王の娘であり今は俺達の家族でもあります。危害を加える様な事はしないで下さいね」


今度はレオノーラさんに簡潔にルミルフルの説明を行う。


「知っているさ。帝都襲撃の際に私自ら戦い、捕らえた者だ」


俺の説明を聞いたレオノーラさんが、ルミルフルの事を見ながらそう言うと、


「しかし、少し危険な空気が無くなっている。どこか無鉄砲な感じだった気迫が、今は感じさせない」


続けて彼女自身の事を改めて認識した様子だ。


「…まぁ私もあの時は色々と考えが復讐一辺倒だったのは認める。今もその気持ちは薄れてはいないけど、冷静に考えて自分が力量不足だった事も確認出来たし、今度は簡単には倒せないと思いなさい」


レオノーラさんの言葉を聞いたルミルフルが、好戦的な笑みを浮かべてレオノーラさんにそう言うと、


「…私は帝都の騎士団にはもう所属していない。帝都を護る義務は無くなっている。しかし、貴様が帝都の私の大切な者達を傷つけようと思うのなら、私は容赦するつもりは無い」


ルミルフルの言葉に、レオノーラさんがそう返した。

こう思うと、レオノーラさんは騎士団団長だからこそ帝都を襲撃したルミルフルと対決したが、彼女が護っていたのはおそらく帝都では無くて、帝都に住んでいる亜人族だったのだろう。

そして、ルミルフルもおそらく帝都に復讐するつもりだったのだろうが、帝都の皇帝、つまり閃光や人族を殺したい考えはあっただろう。

しかし帝都で虐げられている亜人族、レオノーラさんが護ろうとしていた人達には直接攻撃するつもりは無かったのだろう。

復讐に心が支配され暴れた結果、被害が亜人族にも及んでしまったのだ。

おそらく、彼女達は和解する事が出来るはずだと俺は考えている。

何故なら、レオノーラさんは騎士団団長という任だからこそ帝都を護ったが、その肩書きが無い今は帝都の亜人族は護っても、帝都自体を護る必要は無い。

ルミルフルも帝都の人族や皇帝、閃光などを恨みはしているが、帝都に住んでいる亜人族の事は恨んでいない。

これからもう少し状況が動き、これからレオノーラさんと一緒に行う計画が終わった時、2人は互いを認めて友人になれるのではと、俺は期待を持つ。


「その時はもう一回戦ってやるわ。前回の私だと思ったら、大間違いだったと認めさせてあげる」

「私こそこれから更なる高みへと昇り、護るべき者達が傷つかない程の強さを手に入れるつもりだ」


………友人というよりは、ライバル関係になりそうな気がしてきたな。


「……どれ程の実力があるのだろうか?」


後ろからボソッと聞こえた声に、エルヴァンも色々とやる気が出てきたようだと思いつつ、未だに更に強くなってみせると言い合うレオノーラさんとルミルフルを傍観する事に決めた。

…この2人の言い合いの間に入る事など、俺には出来ないぞ…。

そんな事を思いレオノーラさんとルミルフルの事を見ていると、


「ヴァルダ様、少しご相談したい事があるのですが…」


後ろから声を掛けられて、俺は声の主であるエルヴァンの方に体ごと向ける。


「これからのエルヴァンの動きについてだろう?俺もその事については色々と考えてはいるのだ。レオノーラさんと帝都の亜人族を塔に迎える為に、第一級冒険者エルヴァンの肩書きを潰してしまったからな。エルヴァンからしたら勝手な話だとは思うのだが、俺個人としてはアンリと共にセンジンさん達の元で鍛練か、塔のレオノーラさんとルミルフルの鍛練に付き合って欲しいと思っている。エルヴァンは、何かしたい事や行きたい場所とかあるか?」


俺が一気にエルヴァンにそう伝えると、エルヴァンは膝を食堂の床に付けて、


「私の為にそこまで考えて頂いてありがとうございます。やはり、冒険者としての活動は自身の未熟さを知る良い機会になりました。それを踏まえて、私は今はヴァルダ様の力になるべく、ルミルフルや新たに塔に向かえる者達の剣技の育成を、共にしていきたいと思っています。しかしそれがある程度終わった際には、また冒険者や旅人、傭兵として剣の腕を高めたいと思っています」


俺に感謝を伝えて、これからの事について話をしてくれる。

エルヴァンの言葉を聞いた俺は、


「そこまで考えていたのか。…分かった、とりあえずエルヴァンは少しの間だけ塔でルミルフルやレオノーラさん、帝都から連れて来て志願した者達の育成を頼もう。彼らの事が済むまでには、俺の方でもエルヴァンが次に生活していける環境を外で探しておこう」


彼にそう伝えると、エルヴァンは再度お礼の言葉を言ってくる。

俺にお礼を言ってきたエルヴァンは立ち上がると、


「ルミルフル、休憩はした。水を飲んだ後にもう一度先程の動きの確認だ」


ルミルフルの元に歩み寄り、レオノーラさんと言い合っていたルミルフルにそう声を掛けた。

エルヴァンの言葉を聞いたルミルフルは、まだ何か言い足り無さそうではあったが、


「分かったわ。今度会った時に私の強さを見せつけてあげるわ」


席を立ってレオノーラさんにそう言うと、俺達の席から移動をして厨房に水をお願いし、渡されたコップに入った水を一気に呷ると食堂を後にした。

食堂を出て行くルミルフルとエルヴァンの後ろ姿を見送った後、


「では俺達は、これからの作戦について話し合いましょうか」

「あ、あぁ。よろしく頼む」


レオノーラさんに話を切り出した。


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