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俺が闘技場から外へ出ると、その瞬間闘技場の前に集まっていた者達が様々な反応を見せる。

集まっていた民衆は人族がほとんどではあるが、それでも騎士団に所属しているレオノーラさんの部下が僅かにいる。

俺が出てきた瞬間、帝都の住人達は歓声を上げて祝福をしてくる。

冒険者ギルドで見た事がある者達が急いでどこかへ行く姿を見て、ギルドマスターに報告をしにでも行ったのだろうと観察し、俺は他の者達に視線を移す。

レオノーラさんの部下達は俺が出てきた事により、自分達を護ってくれていたレオノーラさんの末路を知って絶望に染まり、静かに涙を流しているのが見える。

彼らは互いの仲間同士で肩に掴まると、よろよろと歩いて行ってしまう。

先程の冒険者達とは違うその速さが、彼らが伝えに行く者達に何と言えば良いのか悩んでいる様に感じる。

俺がそう思って周りの景色を見ていると、


「ありがとう英雄ッ!これで帝都には人族の安寧がやって来るんだッ!」

「獣共なんか全て帝都から追い出してやるぜッ!」


そんな事を言ってくる人達。

俺はそんな彼らに、


「亜人族の権限は、前騎士団団長から私に変わった。勝手な事はしないで貰おう。近い内に、私の方で亜人族をどうにかすると約束はする」


俺が少し声を低くしてそう言うと、所々に傷がある鎧の男という今の俺の様子に恐怖を抱いたのか、俺に亜人族の事を言ってきた者達が顔色を悪くして押し黙る。

俺はそんな人達を掻き分けてエメリッツを探し、彼を見つけると彼の元へと歩く。

そして、


「城まで行く程の話でも無いので、時間的に遅いですが昼食にしましょうか?」


そんな事を言ってくるエメリッツ。

しかし断る訳にはいかないと思い、


「先程の戦いで空腹は感じていない。すまないが、食事は出来ないのだが構わないだろうか?」


俺はそう聞いてみる。

俺の言葉を聞いたエメリッツは、俺の事を見ると、


「先程の激闘で気分が昂っているのでしょう。私は食事をしたいのですが、それでは冷たい水を出してくれる店にでも行きましょうかね」


そう言って歩き出す。

俺は先に歩き出したエメリッツの後を追って歩き出し、どんどんレオノーラさんが亡くなった事で住民達に歓喜が、仕事などをしていた亜人族、それに裏路地から大通りを窺っていたスラム街などの亜人族達が不安と恐怖に支配された表情をしていくのを見る。

これは、早めに動かなければいけないな。

俺はそう思いつつエメリッツの後を追い、一軒の店に入った。

店に入ると、ただの店では無くこの世界では高級レストランに分類される店である事が分かる。

給仕をしているのであろう人が、運んでいる食事を見てそう思うと、


「ここはある親交のある貴族の方のお店でしてね。ご子息が氷魔法を得意としているので、とても冷えた水が提供されるのですよ」


エメリッツがそう言って店の奥に声を掛けると、


「いらっしゃいませエメリッツ様。…そちらの御方は?」


まだ若い、清潔感のある男性が出て来てエメリッツに挨拶をすると、彼の後ろにいた俺の事を見てエメリッツにそう聞く。

男性に質問をされたエメリッツは、


「こちらは、新しく騎士団団長になりましたエルヴァン殿です。彼の今後の話をしたいので、一席設けて貰ってもよろしいですかね?」


俺の事を説明すると、男性にお願いをする。

エメリッツのお願いを聞いた男性は、


「すぐに」


そう言って建物の奥に入ると、何かの指示をして店の奥が少し騒がしくなる。

少しして慌てて動いている給仕さんを店に入ってすぐの場所で見ていると、


「お待たせしましたエメリッツ様、エルヴァン様。こちらへ」


エメリッツと最初に話をしていた男性が俺達を案内してくれて店の奥に進む。


「長くお待たせしてしまって申し訳ありません」

「構わないよ。今日は予約をしていなかったんだ、謝るのは私の方なのだから」


そんな会話をしている2人の後を追いかけると、一室の扉に辿り着き、


「どうぞ」


男性が扉を開けて、俺とエメリッツを部屋の中へと促してくる。

先に入ったエメリッツに続いて部屋の中に入ると、あれでお腹はいっぱいになるのだろうかと思ってしまう、美しさだけを極めた様な料理が数品置かれている。


「ごゆっくり」


俺がそう思って部屋を見ていると、男性が扉を音を立てない様に扉を閉めて俺とエメリッツだけが残される。

そうして席に座ったエメリッツと俺は、俺は装備を壁に立て掛けて氷が入っている水を飲む。

…マズくは無いが、特別美味しい訳でも無いな。

俺がそう思っていると、対面に座っているエメリッツが綺麗に盛られた料理を崩さない様に慎重にナイフを入れながら、


「それでエルヴァン殿、これからの事についてですが…」


そう話しを切り出してくる。

俺は水を飲みつつ、彼が続きを話し出しのを待っていると、


「…まずは式典でしょうな。エルヴァン殿が騎士団の団長になり、新生帝都騎士団になるとしたならば式典はとても重要。その次に元騎士団団長の仕事の引継ぎの説明、これは既に騎士団に所属している騎士達から話しを聞いてください。それから…」


彼が料理を口に運び、咀嚼しながらそう言ってくる。

食べるか喋るかにした方が良いのでは無いだろうか?

俺はそう思いつつ、


「式典をするにしても、私は明日からでも帝都に住む亜人族の事で仕事をするつもりなのだが、式典をするまではそういった事も控えなければいけないのか?」


彼にそう質問をすると、


「騎士団に巣食っている獣共の事とスラム街などの事でしたら、むしろ早急に動いてくれる事に感謝したいくらいですね。その件については、エルヴァン殿の都合が良い時にやってくださって構いません。その代わり、騎士団の獣達を除隊させた時は報告をしてください。彼らは帝都の騎士として、多少はこの街などの情報を握っています。外の獣共に情報を流されたら困りますので、彼らはこちらの方で処理は済ませます」


そう言ってくるエメリッツ。

なるほど、少し面倒ではあるがやる事が1つ増えたな。

俺はそう思い、


「話の途中であるが、すまないが席を外しても構わないだろうか?先程の戦闘で思った以上に体に限界が来ている」


エメリッツにそう言うと、


「そうですよね。鎧も穴が開いている部分もありますし…。しかし、前騎士団団長の家の権利もエルヴァン殿に献上しますが、私物などがまだあるでしょうしすみませんが、少しの間だけ宿屋生活を続けて貰っても構いませんか?」


エメリッツがそう言ってくる。

俺は彼の言葉に、


「大丈夫だ。すまないが、今日はこれで失礼させて貰う」


そう言って席を立った後、俺は扉の前で軽く一礼をした後に店を後にした。


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