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309頁

街へ出た俺とファルシュの姿をしたスゥは、少しだけゆっくりと歩いて自分達を見せつける様に歩く。

特に目立つのはやはり、体のあちこちに傷があり汚れも目立っているファルシュに擬態したスゥだろう。

ファルシュを傷つける事無く、おそらくレオノーラさんが本気で戦う理由の1つになる…と、俺は思っている。

そう考えながら歩き続けて闘技場へと辿り着くと、人族が闘技場の前で賑わっているのが見える。


「遂にこの帝都が綺麗になる時が来たぁ~ッ!」

「うるさい、静かにしていろ!」

「トカゲ女なんかに帝都の安全は守れねぇッ!」

「仕事に戻るんだッ!」


エルヴァンの、俺の勝利を確信している人族の者達が闘技場の前でそう叫ぶと、周りの騎士が静かにしろと何度も注意をする。

そんな光景に、俺はヤダヤダと思いながらも近づいて行き、


「退け」


ただ一言、静かにそう言いながら威圧スキルを発動する。

その瞬間、今まで闘技場の前で騒いでいた連中が俺の方へと振り返り、急いで俺が通れる様に人々が別れて道を作る。

俺は左右に人がいる道を進んでいくと、騎士の1人が歩いている俺を立ち止まる様に言うと、


「申し訳ないが、冒険者カードの提示を」


そう言ってきた…。

あ、危なかった…。

エルヴァンが必要になるかもと渡してくれた冒険者カードが、最初から役に立つ。

俺は騎士に冒険者カードを渡すと、俺から渡されたエルヴァンの冒険者カードを見つめる騎士。

何を見ているのかは謎だが、今はそんな事よりもエルヴァンに感謝の気持ちを…と考える俺。

少し時間が経ち、


「確認しました。…どうぞ、お入りください」


俺に冒険者カードを返して騎士がそう言うと、道を開ける様に立っている場所から横に移動した。

俺は騎士の様子を確認した後に歩いて建物に入ろうとすると、


「中に案内の者がいます。その者に従ってください」


退いた騎士が俺にそう言ってきた。

俺は彼の言葉に頷くだけで返事をすると、闘技場の中へと入る。

建物の中は基本的に通路の様で、通路にも見える範囲で一定の距離で騎士が立っている姿が見える。

それだけ、警戒しているのだろうか?

そこでふと、彼らの装備が城の中で見た騎士達のと同じ事に気がつき、もしかして亜人族の騎士達、レオノーラさんの配下の騎士達はここにはいないのではないかと考える。

それなら彼らに嫌われなくて大丈夫なのか。

少し安心して歩いていると、


「お待ちしておりました、こちらへどうぞ」


通路に立っていた騎士がそう言って俺の事を案内してくれる。

そこから地下へと向かっているのか、階段を下っていき控室の様な、少し乱雑に物が置かれている場所に辿り着くと、


「ここでお待ちください。時間になりましたら、お呼びに来ます」


騎士はそう言って一礼をすると、控室の扉を閉める。

早く来た自覚はあるが、こんな場所で待たされるのもな…。

俺はそう思っていると、上の方から歓声の様な雄叫びが聞こえてくる。

この賑わい様、おそらく俺が予想している以上の事が起きているかもしれないな。

俺はそう思いつつ、


「スゥ、おそらくお前はこのままここで待機になるだろう。ここで待機している間、何者かが侵入した際には手加減しなくて構わない」


スゥにそう指示を出しておくと、スゥはファルシュの体を少しプルプルと揺らす。

そんなスゥの様子を見て、ファルシュの頭を、スゥの体で言うとどの部分かは分からないが撫でると、


「~~♪」


スゥはファルシュの体を保たずに体を揺らしている。

それからスゥを落ち着かせて呼びに来る騎士が来るまで静かに過ごしていると、


コンコンコン


「準備が整いました。こちらへどうぞ」


扉がノックされると、俺が返事をする前に扉が開いて騎士がそう言ってくる。

ノックの意味…。

俺はそう思いながら、


「分かった。ファルシュ、待っていろ」


俺はエルヴァンの様にそう言ってスゥに指示を出すと、スゥが頷く。

しかし、


「いや、その奴隷も連れて来る様に言われています」


騎士がそんな事を言ってきて、俺は少し警戒する。

ファルシュ、スゥを連れて歩いているのは2つの理由がある。

1つは闘技場の前に集まっていた人達に、支持をされる様に亜人族の扱いを見て貰う様にしていた。

もう1つは運任せではあるが、ボロボロな姿をしているファルシュの姿を見た亜人族が、レオノーラさんに伝えている可能性に賭けた。

その結果レオノーラさんが怒り本気で、殺しにくる勢いで闘志を燃やせれば良いと思っていたのだが…。

これからの戦いに、何故ファルシュの姿をしたスゥが必要なのか?

俺はそう思いつつ、今はとりあえず従っておこうと思い、


「だそうだ、ファルシュも来い」


スゥにそう言うと、スゥは俺の斜め後ろに立って俺に付いて来ようとする。

そうして控室を抜けると、廊下を歩いて進んでいき外の景色が見えた。

廊下や控室が暗かった所為で、外に出ると同時に少しだけ眩しく感じて目を細める。

しかし何が起きても対処出来る様に目は完全に閉じない様にしていると、俺が出てきた通路の反対側からレオノーラさんが、いつもよりも真剣な表情で外に出てくるのが見えた。

彼女の着けている装備と、そして既に戦闘態勢なのか肌が紅蓮の鱗に変わっている所が陽を反射してキラキラと輝いている様に見える。

俺がそう思っていると、レオノーラさんが俺の後ろに視線を向けると、先程よりも真剣な、おそらく怒りを宿した瞳で俺の事を見てくる。

直接的に見せてしまったが、とりあえず彼女の闘志を昂らせた事は成功したようだ。

俺がそう思っていると、


「注目ッ!全員体のこちらに向けると同時に、視線は地に伏せるのだッ!」


聞いた事がある声が聞こえる。

すると、俺の事を見ていたレオノーラさんが頭を少しだけ下げる様にして、体を真横に向ける。

とりあえず、同じ様にしてみるか。

俺がそう思ってレオノーラさんと同じ事をすると、視界の端に映ったスゥも俺と同じ様に動く。

そして、


「今回の決闘に、皇帝陛下と御后様が見物として訪問してくださった!至高なるお二方の為にも、存分に剣を交える事を期待しているッ!」


そんな言葉が聞こえる。

あぁ、少し威厳というか声を張っているが、この声はエメリッツの声か。

それにしても皇帝陛下がいるという事は、閃光が今もっとも近くにいるという事。

この場で殺すか?

いや、気持ちを落ち着かせろ。

俺が今やる事は閃光を殺す事では無い。

レオノーラさんと、帝都に住んでいる亜人族を助けるために今俺はここにいるのだ。


「戦闘が続行出来なくなるまでの闘い、それでは………」


今は、レオノーラさんとの戦いに集中するんだ。

でなければ…。


「始めッッッ!!!」


負ける可能性も十分にある。


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