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308頁

ルミルフルが頭を下げてきたのを見た俺は、彼女の気持ちを考えて了承すると、


「明日の早朝からでも大丈夫ですか?」


俺はそう質問をする。

俺の質問を聞いたルミルフルは、


「大丈夫だけど、何で早朝?」


素直に疑問に思ったであろう事を聞いてくる。


「それは、私が早朝から鍛練を行っているからだ」


ルミルフルの疑問に答えたのは、エルヴァンだった。

俺はエルヴァンの言葉に付け足す様に、


「出来れば効率良くレベルを上げられた方が良いかなと思いまして、エルヴァンの鍛練もとても重要だと思っています。俺も少しエルヴァンの様に1人で鍛練みたいな事をしましたが、改めて自分の体の動きなんかを再確認する事が出来ました。ルミルフルさんも大きい武器を使った動きなのは少しだけですが理解をしているので、その動きをエルヴァンに見て貰ってより良いモノに出来ると良いなと思ったんですよ」


そうルミルフルに伝えると、彼女は納得した様に頷き、


「分かったわ、じゃあ明日の早朝に塔のどこで待っていれば良いの?」


エルヴァンにそう質問をする。

それを聞いたエルヴァンは、


「塔の麓で良いだろう。その後朝食を食べた後、今度はもう少し広い場所での実戦に近い動きを確認する」


そうルミルフルに言う。

エルヴァンの言葉を聞いたルミルフルは頷くと、


「了解。じゃあ、明日麓で会いましょう」


そう言って席を立ち、子供達を追いかける様に少し早歩きで食堂を後にしたルミルフル。

残された俺とエルヴァンとセシリアも、


「では、俺は明日に備えて早めに休む。エルヴァン、久しぶりの塔だしゆっくりとしなさい。セシリア、明日の朝に俺が目覚めたと同時に部屋に来てくれ」


俺のそんな言葉を聞いて返事をしつつ席を立ち、俺達は一緒に食堂から出ると食堂の前の廊下で別れた。

その際に、エルヴァンからよろしくお願いしますと言われたが、


「俺は自分の我儘でエルヴァンに立場を変わって貰ったんだ。エルヴァンを信用していない訳では無い、むしろお礼を言わせてくれ。ありがとう、俺の我儘に付き合ってくれて」


俺がそう言うと、エルヴァンは頷いて何かを俺に差し出してくる。

見ると、それは身分を表す冒険者カード。


「もしもの事を考えて、お持ちください」


エルヴァンの言葉を聞いた俺は彼にお礼を言うと、エルヴァンは俺に背を向けて廊下を歩いていった。

俺はそんなエルヴァンの後ろ姿を少し見た後、その足で風呂へ行きゆっくりとした後に自室へと帰って来た。

部屋に帰って来た俺は、まず明日の準備の為に装備の確認とアイテムの確認を開始する。

それと同時に、明日の早朝にセシリアに預けておこうと思っているルミルフルさんへの大剣など、武器や装備をテーブルに置いていく。

そうして一通りの準備が終わった俺は、早めに寝るためにベッドに潜り込むと、まだ意識はしっかりとしていたが瞳を閉じて、考えている事などを止めてひたすらに何も考えない時間を過ごしている内に、いつの間にか眠ってしまった。

翌朝早朝、俺は目を覚ますとそれと同時にセシリアが部屋に現れる。

彼女の姿も、いつもの姿とは違ってパジャマを着ている姿に意識が覚醒すると、


「おはようセシリア。すまないが、これをルミルフルに渡しておいてくれないか?俺は先に外の世界に戻ってしまうから、それを頼みたいんだ」


俺はベッドから降りて装備を身に着けながらそう言うと、


「…分かりました」


セシリアが少し眠そうにそう言ってくる。

俺はそんな彼女の元に行き、


「ルミルフルが起きるまで、俺のベッドでも良いならそのまま寝てくれて構わない。すまないな、朝早くに起こしてしまって」


そう言って彼女を頭を撫でると、


「ありがとうございます。お言葉に甘えさせていただきます」


セシリアがそう言う。

そんな可愛らしいセシリアを見た俺は、


「では、行ってくる。………帰還」


そうセシリアに伝えて黒い靄を出現させると、


「いってらっしゃいませ、ヴァルダ様」


セシリアはそう言って俺のベッドにモゾモゾと潜り込んでいく姿が目に入る。

い、一緒に寝たい~!

そんな後ろ髪を引かれる気持ちのまま、俺は黒い靄へと進みエルヴァン達の借りている宿屋に来ると、


「クラスチェンジ・騎士(ナイト)


まずは装備をエルヴァンと同じ様にしてあるかの確認をし、武器は一応二振り背負っている事を確認する。

そうして全ての荷物の数などを確認し、結構時間が経過した事が分かった俺は、


「クラスチェンジ・召喚士(サモナー)


またクラスチェンジを行い、今度は召喚士(サモナー)になると、


召喚(サモン)、スゥ」


今回の作戦で必要なスゥを呼び出す。

俺に呼び出されたスゥは、まだ眠いのか少し動きが鈍い。

約束の時間まではまだ時間がある、スゥをしっかりと起こしてから出発だな。

俺はそう思うと、スゥを起こす為にスゥの体に触れてプルプルと揺さぶってみる。

感触がいつもより柔らかいのは、スゥが寝ぼけているからなのだろうか?

俺はそう思いつつ、今度はスゥの体を少しだけ摘むと引っ張ってみる。

すると、


「~~~ッッ!??!」


今までされるがままだったスゥがビクゥッッとした動きを見せ、俺から離れて行ってしまう…。

お、怒らせてしまっただろうか?

俺は少し心配になりながら、


「スゥ、すまない。まだ目をしっかりと覚ましていなかったから、起こそうと思っていただけなんだ」


そう謝罪をすると、スゥは徐々に俺に近づいてきてくれる。

よ、良かったぁ。

俺はスゥに嫌われていない事を確認すると、


「スゥ、昨日の様に少し汚れが目立つファルシュの姿になってくれ」


スゥにそうお願いをする。

俺の言葉を聞いたスゥが、スキルを発動して体を淡く光らせる。

そしてスゥがファルシュの姿になると、俺は変な所は無いかを確認して、


「よし、それで大丈夫だ。スゥ、今日はこれからこの状態で俺の元から離れない様に歩くんだ。大丈夫か?」


俺がスゥにそう指示を出すと、スゥはファルシュの姿で頷く。

俺はスゥの返事を見た後、クラスチェンジを行い騎士(ナイト)になると、


「エルヴァンの様に見えるか?」


スゥに確認してもらう。

俺の周りをゆっくりと回って確認をしたスゥがコクコクと頷いた姿を見てから、俺とスゥは宿屋の部屋を後にして闘技場へと出発した。


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