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306頁

闘技場にはあまり見えない建物の前に集まっている騎士の1人に、ここが闘技場かと質問をすると、


「その通りだが、ここへ何の用だ?」


俺の質問に答えてくれた騎士がゆっくりと剣の柄に手を伸ばす。

どうやら相当警戒している様子だ、おそらくだが明日の事で闘技場に怪しい人物を入れない様にしているのだろう。

俺はそう思いつつ、


「いえ、ただ色々と噂になっている明日の事で、もしかしたらここで帝都の歴史が変わるのでは?と思いまして、見に来ただけです。お仕事中に申し訳ありません」


騎士にそう言ってすぐに踵を返して、闘技場を後にする。

闘技場とか言っていたから、俺の想像だと立派な建築物かと思っていたのだが、予想以上に大きくなかったな。

横に広そうだったし、もしかしたら広大な土地を使っているのかもしれない。

俺は先程見た闘技場の事を思い出しながらそう考え、とりあえず宿屋で待ち合わせをしたエルヴァン達の元へと急ぐ事にした。

そうして宿屋に忍び込んだ俺は、エルヴァン達の部屋の扉をノックする。

少しして扉が部屋の扉が開かれると、


「どうぞ」


エルヴァンがそう言ってくれる。


「ありがとうエルヴァン」


俺はお礼を言って部屋の中に入ると、ファルシュがベッドの上でゴロゴロしている光景が目に入る。

すると、


「それでヴァルダ様、これから私はどうしたら良いでしょうか?」


エルヴァンが俺にそう聞いてくる。


「明日、私では無くヴァルダ様が戦いに行く事は分かっているのですが、私はここで静かに待っていた方がよろしいのでしょうか?他にも何かやる事があるのなら、ご指示をしていただければ」


続けてそう言ってくれるエルヴァンの言葉を聞いて、俺は少し考える。

明日エルヴァンは外に出す事は出来ない。

エルヴァンの姿は目立つし、変装も出来ない。

故に、エルヴァンには明日は外に出ないで欲しいと頼んだのだ。

俺はエルヴァンの言葉を聞いて少し考え、


「分かった。ではエルヴァンは一度塔に戻って貰おうか。ルミルフルの事で頼みたい事がある」


そう言って、ベッドの上にいるファルシュの事を考える。

ファルシュは疲れているのかベッドで横になっているが、俺とエルヴァンとの会話を聞いているのだろうか?

俺がそう思っていると、


「ファルシュの事ですか?」


エルヴァンがそう言ってくる。

それを聞いた俺がファルシュの事を見ながら無言で頷くと、


「ファルシュ、私は明日ヴァルダ様の元、塔という場所に行く。ファルシュはどうする?」


エルヴァンがファルシュにそう話しかけた。

それを聞いたファルシュはベッドの上を横になった状態でゴロゴロと動き、俺とエルヴァンの事を見て来ると、


「オレも一緒に行く」


そう言ってくる。

ファルシュのそんな言葉に、


「だがファルシュ、塔に行くには俺と契約しなければいけないんだ。それは構わないのか?」


俺がそう聞いてみると、ファルシュは俺の言葉を聞いてベッドから体を起こすと、


「別に良い。少しだけどヴァルダといて、そこまで悪い奴じゃないって分かったし」


俺にそう言ってくれるファルシュ。

それを聞いた俺は、エルヴァンにも確認を取る様に視線を向けると、


「私は何も言っておりません。ファルシュが自分で決めた事です。ヴァルダ様、よろしいのではないですか?」


そう言ってくる。

ファルシュとエルヴァンの言葉を聞いた俺は、


「分かった。ではファルシュ、一応仮契約と本契約があるのだが、どっちが良い?どちらもあまり差は無いが…」


ファルシュにそう質問をしながら、本の中の世界(ワールドブック)を開いて切れ端を作る。

俺の問いを聞いたファルシュは、


「エルヴァンはどっちなんだ?」


エルヴァンにそう聞く。

ファルシュに聞かれたエルヴァンは、


「私は本契約だ。ヴァルダ様との契約の恩恵は、おそらく本契約をした時に分かるだろう」


ファルシュの質問にそう答える。

それを聞いたファルシュは俺の事を見て、


「じゃあオレも本契約で良い」


そう言ってきた。

俺はまさか連日本契約をするとは思わなかった故に、少し驚きつつも、


「分かった。じゃあ悪いが、胸元を少し出してくれ。服を少しずらす程度で大丈夫だ」


ファルシュに気づかれない様にそう伝えると、ファルシュは特に気にしていない様に服をずらす。

その瞬間、俺はファルシュの体に微かな傷痕の様なモノが見える。

ただの傷痕では無く、おそらく命に関わる程の重傷だと思わせる傷痕を…。

しかしそれを見せてとは言えず、俺は淡々とファルシュの胸元に切れ端を押し付けて契約をすると、


「これでよし。改めて、これからよろしくなファルシュ」


俺がそう言うと、胸元に刻印された印を見て、


「エルヴァンのその鎧の印。これだったのか」


少し嬉しそうにエルヴァンにそう言う。

それを聞いたエルヴァンは、


「その通りだ」


そう言って荷物を纏めると、


「ヴァルダ様、準備が整いました」


俺にそう言ってくる。

エルヴァンの言葉を聞いた俺は頷き、


「では帰るとするか。帰還」


そう言うと、宿屋の部屋の中に黒い靄が出現する。

すると、


「敵か!」


ファルシュが警戒した様子で身構える。

それを見た俺は、


「いや、これが俺とエルヴァンの住んでいる塔に帰る為の扉なんだよ。怖いかもしれないが、通ってくれ」


少し笑いながらそう言うと、ファルシュは少し怒った様子で、


「怖くねぇッ!」


そう反論をしてくる。

俺とファルシュがそう言っている内に、


「ヴァルダ様、どうぞ。ファルシュは私の前を歩きなさい」


エルヴァンが俺にそう言って、ファルシュの背後に立つ。

見るとファルシュの肩に手を乗せて安心させようと思っている様子を見て、


「分かった。先に行こう」


俺はファルシュは大丈夫だろうと思うと、先に塔に帰る為に黒い靄を通り抜ける。

そうして塔の自室に戻って来た俺は、次に来るファルシュとエルヴァンを待つ。

少しして、やや緊張をした表情をしたファルシュと普通のエルヴァンが靄から出て来て、


「おかえりエルヴァン。ようこそ、ファルシュ。ここが俺とエルヴァン、それと他の家族の家だ」


俺は2人を出迎える様にしてそう言うと、


「何だこれ?!すげ~!」

「ただいま戻りました、ヴァルダ様」


ファルシュは驚いた様子で俺の部屋を見回し、エルヴァンは膝を床に付けてそう挨拶をしてきた…。

隣り合っている2人の温度差に、笑いが出そうなのを堪えながら俺は2人を連れて自室を出て、ルミルフル達がいるであろう食堂に移動した。


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