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スゥに、ファルシュの姿にスラムの人達の服装を着せた姿に変身できるか聞くと、
「~~♪」
スゥは俺の手の上で僅かに弾む。
おそらく、出来るのだろう。
俺はそう思うと、
「これから良く見える様に彼らに近づく。静かに行動するのだぞ」
俺はそう言って、アンジェの指輪を装備したままスゥを手の上に乗せて移動を開始する。
おそらく今、レオノーラさんに集中している彼らなら多少足音を出していても大丈夫だろうと思い、スゥを手に乗せている故の慎重さだけで、後は変わりなく普通に歩いて彼らに近づくと、俺はスゥに彼らの様子が見える様に移動をする。
そうして騎士団の人達には勘付かれる可能性を考えてスラムの人達の周りを歩いた俺は、そのままスゥを連れて帝都の外へと出た。
帝都近くの森に行き、更に奥まで進んで気配察知スキルを発動し、誰もいない事を確認してから俺はアンジェの指輪を外し、スゥを地面に降ろす。
スゥを地面に降ろした俺は、
「ではスゥ、まずはファルシュの姿になってくれ」
スゥにそう指示を出す。
それを聞いたスゥが淡く光り、体がゆっくりと変化していく。
スゥがファルシュの姿になった事を確認すると、
「そのまま、服装をスラムの人達の様に少しボロボロに出来るか?」
そう次の指示を出してみる。
ファルシュの姿をしたスゥが声を出さずに頷くと、また体を淡く光らせる。
徐々にファルシュの着ていた服が変化していき、スラムの人達が着ている汚れてボロボロな服に変身をする。
「凄いな、細かい所までしっかりと再現してある」
俺はそう言いつつ、ある違和感に気がつく。
普通のファルシュの姿に、ボロボロの服装。
汚れが目立たない綺麗な姿に、汚れや綻び、破けた場所を違う布で応急処置をした服装はどう見ても違和感がある。
「スゥ、ファルシュの肌を少し汚したり、怪我をしている様に見せる事は可能か?」
スゥにそう聞いてみると、ファルシュの姿をしているスゥが首を傾げる。
俺はそんなスゥを様子を見て、俺の言っている事が分からないかなと思い、俺は地面に触れて少し手を汚すと、
「こんな感じで、土汚れなんかを顔などに付けられないか?」
改めてそう聞いてみる。
すると、ファルシュの姿をしているスゥは少しパァッとした笑顔を浮かべてから、また体を淡く光らせる。
そして光が治まると、
「おお、完璧だなスゥ」
ファルシュの姿をしているスゥの肌が見える部分が、俺の手と同じ様に土汚れが付いている様に見える。
俺の褒めた言葉を聞いたスゥが、嬉しそうに体を震わせる…。
フ、ファルシュの体がボコボコと肌が隆起している姿は、少し猟奇的に見えたりするのだが…。
「スゥ、明日はあまりそういう事はしない様にな」
俺はそうスゥに注意事項の様な指示を出した後、スゥを一度塔に戻してから今度は俺が装備を変える。
「クラスチェンジ・騎士」
クラスを変更し、装備をエルヴァンに似せた完全武装の状態に変更をすると、背負っている大剣を抜いて構えてみる。
最近は片手剣が多かったし、やはり久しぶりに握るとやはり片手で扱える剣とは違う事を確認させられる。
俺はそう思うと、大剣を一度振り下ろす!
即座に頭の上に大剣を戻し、そこから斜めに横にと大剣を振るっていく。
これは、少しマズいな。
予想以上に大剣の振りが悪くなっている。
今日で取り返せれば良いのだが…。
俺はそう思いつつ、大剣を何度も振るい感触を思い出しつつ、今度は普段エルヴァンがやっている様に仮想の敵を思い浮かべながら大剣を構えて振るい続ける!
やがて両手での大剣の練習が終わると、今度は片手で上手く扱う為の練習に移行する。
隙を作らず、いかに連撃を繰り出せるのかが問題だ。
攻撃スキルを使う事も考えたが、あれは動きが固定されてあまり好きではないし、俺が使える攻撃スキルはあまり大したモノでも無い。
戦鬼さんみたいに、一撃が凄いダメージを出せるスキルとか持って無いしな。
俺は戦鬼さんとの戦っている時の光景を思い出しながら、スキルを発動していない時の彼の動きを真似てみる。
しかしあまり体には馴染まずに、俺はエルヴァンみたいな動きの方がしっくりとしているなと思うと、今度は両手に一振りずつ、大剣の二刀流に挑み始める。
だが、片手で大剣を振るうには少し俺には大剣を上手く扱える自信が無く、結局右手で握っている大剣しか振っていない事などに気がつき、大剣は一振りで練習しようと思い直して一振りを背中に背負い直す。
そうして黙々と大剣を振るい、仮想の敵を小回りが良く速い斬撃を放つ者としてバルドゥを思い浮かべて大剣を振るう。
レオノーラさんの装備的に、おそらく魔法と剣の複合の戦闘スタイルだと仮定して戦うとなると、速さと力強さ、魔法に対する回避手段も考えないといけないな。
俺はそう思って大剣を何度も振り直し、自分の動きを再確認している内に時間が随分と経過してしまい、俺は慌てて装備を直すとアンジェの指輪を装備して帝都へと戻った。
夕方前ではあるが、俺は急いで帝都の街を走る。
俺は忘れていたのだ、明日の戦う場所の闘技場の場所を確認するのを…。
エルヴァン達と別れてすぐに向かっていれば良かったのだが、スゥに擬態を細部のこだわりをして貰う事を優先してしまった。
俺は少し焦りながら人々の横を通り過ぎ、闘技場を探す。
今まで自分があまり行かなかった場所に向かい、それらしい建物を探し続ける。
時間も経過して、陽が傾いて夕陽になっていく…。
マズい、流石にエルヴァン達に夕方に行くという約束を守れないのはマズい。
俺がそう慌てて辺りを見回しながら走っていると、ふと朝のスラムでの騎士団やスラムの人達の集まりの様な光景が目に移る。
俺はもしかしたらと思いそちらに向かうと、騎士団が厳重に護っている建物が見えた。
アンジェの指輪を人がいない物陰で外すと、騎士団が護っている建物に近づく。
騎士団を団員を見た感じ、顔を知っている人はいないな。
俺は少し安心すると、
「すみません。ここが闘技場ですか?」
近くにいた騎士にそう質問をした。
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