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エルヴァン達が泊まっている宿屋の前に着いた俺は、そそくさと裏道に隠れてアンジェの指輪を装備すると、俺は廊下の換気で開けてあるのであろう窓から宿屋へと侵入する。

廊下に侵入すると、丁度近くの扉から男性が薄着で出てくる姿が見える。

危ない、ぶつかる。

俺はそう思って少し壁に当たりながら男性との衝突を避け、アンジェの指輪を装備したままエルヴァン達がいる部屋に向かう。

エルヴァン達の部屋まで来ると、


「では………闘技……お待ち………ります」

「分かっ…」


部屋の中から話し声が聞こえて、俺は扉をノックする為に伸ばしていた手を引っ込めて扉の横の壁に移動すると、


「失礼します」


エルヴァン達の部屋から1人の男性、格好からして誰かの従者の様な、執事服を着ている男性が部屋を出てから部屋の中に一礼をして俺とは反対側の廊下の奥へと進んでいく。

そんな後姿を見ながら、今日は向こうの方が早かったのかと思いつつ、


コンコンコン


扉をノックする。


「どうぞ」


中からエルヴァンの声が聞こえてきて、俺は部屋の扉を開けると同時にアンジェの指輪を外して部屋へと入ると、


「ヴァルダ様、おはようございます」

「はよー」


部屋に入ってきたのが俺だと分かったエルヴァンとファルシュが挨拶をしてくる。

俺はそんな2人に、


「おはよう、さっきの来客は明日の事についてか?」


そう質問をすると、


「はい。明日の昼前に街にある闘技場へと来るように言われました」


エルヴァンがそう教えてくれる。

それを聞いた俺は、


「闘技場…。そういえば場所を知らないな」


エルヴァンの言葉にそう返し、今日は闘技場の場所を確認しなければと考える。

それと同時に、


「少し時間を貰っても良いか?」


エルヴァンにそう聞くと、エルヴァンは了承してくれる。

それを聞いた俺は、


「ファルシュ、少しそこに立っていて欲しい。報酬は、俺の住んでいる場所から持ってきた朝食でどうだ?」


ファルシュにそう話しかけると、


「やる!」


朝食に釣られたファルシュがすぐに答えてくれる。

彼女の言葉を聞いた俺は、


「よし、じゃあさっそく…。召喚(サモン)、スゥ」


本の中の世界(ワールドブック)を開いてスゥを呼び出す。


「~!」


召喚に応じてくれたスゥが出現すると、


「うわっ!スライムっ!」


ファルシュが驚いた様子でスゥを事を見ると、


「~~♪」


スゥは初めて見るファルシュに興味津々なのか、飛び跳ねてファルシュに近づき彼女の足に体を擦り付ける。


「く、くすぐったい~…」


スライムの感触に慣れていない所為で、ファルシュはくすぐったさを我慢している様だ。

流石にファルシュが可哀想だと思うと、


「スゥ、ファルシュが困っているから離れなさい。おいで」


俺はそう言って手をスゥに差し出すと、スゥは俺の手の上に上手く乗ってバランスを取る。

そして、


「スゥ、擬態スキルを発動して彼女の姿になるんだ」


俺がそう指示を出すと、スゥはスキルを発動させ体が淡く光ると、ふよふよのスゥの体がどんどん形作られるのを感じてベッドの上にスゥを置くと、淡く光りながらスゥの体はファルシュと同じ姿になった。

服装から爪が長い所まで、しっかりと細部まで再現させている。


「な、なんか変な気分だな。自分とまったく同じ顔の奴が目の前にいるのも…」


ファルシュの姿に擬態したスゥの事を見ながらファルシュがそう言うのを聞きつつ、俺は少しスゥから離れてファルシュの姿を確認すると、


「やはりこれでは、あまり向こうに効果は無いだろうな。もう少し弱っているというか、質素な服装をしておいた方が良いだろう」


俺はスゥにそう言って一度元に戻る様に伝えると、


「エルヴァンとファルシュは、今日は何をする予定とか決まっているのか?」


2人にそう質問をする。

ファルシュはスゥの方が気になるのか、今度は自分からおそるおそる近づいて行きスゥに無言で手をゆっくりと差し出すと、スゥは嬉しそうにファルシュの手に体を擦り付けに行った。

そんなファルシュを見ながらエルヴァンは、


「明日の事もありますし、今日はあまり動き過ぎない程度にしておこうかと考えていました。下手に動き過ぎて、周りの者達に変な心配などされたくはありませんから」


俺の問いにそう答えてくれる。

エルヴァンの言葉を聞いた俺は、


「俺はこれからスラムの方に行き、スゥの明日に向けての擬態の練習というか、確認をしに行くつもりだ。夕刻に、ここへ集まれる様に時間を調節してくれるとありがたい。それまでは2人共自由に動いてくれて構わない」


エルヴァンにそう指示を出すと、エルヴァンは分かりましたと言ってくれる。

俺はエルヴァンの言葉を聞き、


「では、スゥ。今日は少し外の世界を見せつつお願いが沢山あるのだ。それに付き合ってくれ」


未だにファルシュに体を擦り付けているスゥに話しかけると、スゥはピョンピョン飛び跳ねて俺の元へとやって来る。


「スゥ、俺の服の中で隠れてくれな」

「~!」


俺がそう言うと、スゥは俺の体に巻き付く様に体の伸ばして俺にくっ付いてくる。

さて、


「ではエルヴァンとファルシュ、今日の夕方にもう一度来る。それまでに帰ってくれていると助かる」


俺がそう言ってアンジェの指輪を再び装備しようとすると、


「分かりました」


エルヴァンがそう言ってくれる。

俺はエルヴァンの言葉を聞いてから部屋を後にすると、先程入ってきた窓から宿屋の脇道へと出ると、俺はスラム街へと向かって歩き出した。

そうしてスラム街にやって来ると、スラム街にレオノーラさん達や騎士達が集まっている光景が見えた。

そしてそんな騎士団の周りに、スラムに住んでいる亜人族の人達が囲むように集まり、レオノーラさんに心配そうに話している。

おそらく、明日の事で彼らも不安なんだろうな。

俺はそう思うと、今日は姿を現さずに静かにしていようと思い、離れた所からレオノーラさん達一行を見守りつつ、俺はスゥに彼らが見える様に手で土台を作ると、


「スゥ、手の上に乗ってくれ」


体に巻き付いているスゥにそう指示を出す。

俺の指示を聞いたスゥが胴体から肩、腕から手へと移動していき少しぐらつきながら俺の手の上に乗ると、


「スゥ、ファルシュの姿であそこにいる人達の服を着せている様な姿になれるか?」


スゥにそう聞いた。


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