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帝都の宿に戻った俺は、部屋の中へと入ると俺は塔にすぐに戻った。
塔に戻った俺は、ひとまず先に靜佳の部屋へとやって来ると扉をノックする。
すると、
「は~い」
部屋の中から声が聞こえて、いつもよりも早く靜佳が部屋の扉を開けてくれると、
「お兄ちゃん?どうしたの?」
来訪者である俺の事を見て、驚いた様子でそう聞いてきた。
そんな靜佳に、
「お礼の品を持ってきた。ここで渡すか?」
そう言ってアイテム袋の中に手を入れると、
「ちょっと待って!そんな冷たい反応しないでよ!」
靜佳がそう言ってアイテム袋に入れている俺の手首を掴むと、
「入って」
部屋の中へと引っ張ってくる。
俺は靜佳に引っ張られて部屋の中へと入ると、
「今日はアイテムなんかが床に置いてないんだな」
靜佳の部屋が綺麗に整頓されている事に気がついてそう口にする。
すると、俺の手を掴んでいた力が強くなり、
「お兄ちゃん?私が部屋を片付けられないタイプだって思ってる?」
笑みを俺に向けながらそう聞いてくる。
笑顔だが、目は笑っていないな。
俺は靜佳の様子を見てそう思い、細心の注意をして言葉を発しようと心に決め、
「いや、何かに集中している時の靜佳は結構部屋を荒らしているイメージだが、普段の靜佳はそこまで部屋を乱雑に散らかさないと分かってるぞ。一緒に住んでいる時に、チラッと見た靜佳の部屋の床は物が散乱していなかったし」
そう言うと、靜佳は少し目を細めて、
「なんか含みがある言い方に聞こえるけど、まぁそれは置いといてあげる」
俺の言葉を一応許してくれる。
とりあえず、俺はアイテム袋からティーセットを取り出すと、
「靜佳の好きそうな、いや…俺も気に入った物があったんだ。靜佳も気に入ってくれると嬉しい」
そう言って箱に入っているティーセットを贈ると、靜佳は大切そうにゆっくりと俺からティーセットを受け取ると、
「開けても良い?」
俺にそう聞いてくる。
靜佳の言葉を聞いた俺は頷くと、
「ありがとうお兄ちゃん」
俺に感謝の言葉を伝えて、置かれているテーブルの上にゆっくりと置くと箱を開ける。
「凄い。綺麗だし可愛い」
箱からティーカップを取り出した靜佳は、光に当てる様にカップを持ち上げてそう呟く。
良かった、反応を見るに好みのタイプだった様だ。
そうして少しの間喜んでいた靜佳に何も言わず眺め、彼女が落ち着いて来ると、
「靜佳、少し聞きたい事があるんだ…」
俺はついでに1つ聞いておきたい事を切り出す。
俺の言葉を聞いた靜佳は、俺の少しだけ真面目そうな様子を見てか持っていたティーカップをテーブルに置くと、
「何?」
そう聞いてくる。
靜佳の言葉を聞いた俺は、
「材料の在庫について少し気になってな。いくつか確認しておきたい」
そう切り出して、いくつかの薬草などの材料になるアイテムの名前を口にする。
それを聞いた靜佳は俺の言葉と共にアイテムを、アイテムを作る際の机の上に置いて行く。
俺は塔にあるアイテムと靜佳が持っているアイテムの数を確認した後、
「ありがとう。必要分はあるし、あまり問題はないだろう」
俺は絶対に必要な分の素材、材料の確保は出来ていると分かり、
「今度、そのティーセットでお茶を飲ませてくれ」
テーブルの上に置いてあるティーセットを指差してそう言うと、俺は靜佳の部屋を後にした。
ヴァルダが部屋を出て行った後、靜佳はヴァルダから贈られたティーセットを眺める為にテーブルの傍に椅子を置くとそこに座り、色々な角度からティーセットを眺める。
そうしてティーセットを眺めていた靜佳だったが、ふと先程のヴァルダの聞かれた素材の事を思い出し、それが1つのアイテムを作る事が出来る物達だった事に気がつき、
「…あれって、蘇生薬の素材だよね?」
そう呟いてから、ヴァルダが何をするつもりなのだろうかと考え、
「セシリアさん、いますか?」
部屋の中でそう声を出すと、
「どうしましたか?」
靜佳の部屋にセシリアが現れる。
突然現れるセシリアにようやく慣れてきた靜佳は、
「お…ヴァルダ様が私に蘇生薬の素材があるか聞いてきたの。もしかしたら危ない事をするかもしれないから、注意しておいた方が良いかも」
セシリアに情報を共有する。
靜佳の言葉を聞いたセシリアは表情を変えはしていないが、少しだけ驚いた様子で目が僅かに開いた。
そして、
「…分かりました。ありがとうございます」
セシリアは靜佳の言葉にお礼を言うと消えてしまう。
その際にセシリアが見せた微かな表情の変化を見た靜佳は、
「…何か知ってるのかな?」
セシリアが何かを隠しているのかと考えつつ、ヴァルダが考えている事を自分が知らないで、セシリアが知っている事に少しヤキモチを抱きつつテーブルに置かれているティーセットを眺め続ける。
さて、靜佳に渡したい物は渡せたし、聞きたい事も聞けた。
後はスゥに当日にお願いをする為に、会わないといけないのだが、シェーファにお願いしたから部屋に居てくれているとありがたいな。
スゥは意外にどこにでも行くから、遠くに行っていたら迎えに行くかね…。
俺はそう思いつつ、一度自室に戻る。
部屋の扉を開けた瞬間、一瞬で視界が水色になった。
それと同時に顔面に感じるプルプルモチモチ触感。
少し水気を帯びているソレを俺は両手で掴むと、
「待っていてくれたのか、スゥ?」
俺は顔面に飛び込んで来たスゥを顔から引き剥がしてそう質問をする。
俺の質問を聞いたスゥは、
「~♪」
まるで嬉しがっている様に、体を小刻みに震えさせながら体をうにょうにょと変化させていく。
そんなスゥを抱きながら自室へと入ると、一度スゥをベッドの上に置いてから俺は装備を脱いで軽装になる。
そして軽装になってからベッドへと戻ると、
「スゥ、シェーファに俺が呼んでいると言われたから俺の部屋に来ていたのだろう。わざわざ待っていてくれてありがとうな」
スゥにお礼を言う。
それを聞いたスゥはベッドに座っている俺の手にスリスリと体を擦り付けてくる。
そんなスゥに俺は、
「スゥ、頼みたい事があるんだ」
そう話しを切り出した。
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