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宿屋の一室に戻って来た俺は、そのまま部屋を出て帝都の街に繰り出す。

装備はエルヴァンと同じではないが、出来る限り似せてはいるし武器は同じ大剣を背負っている。

大丈夫なはずだ。

俺は少し不安に思いながらも歩き続ける。

そうしてエルヴァンとファルシュが泊まった宿屋に辿り着き、宿屋に入ると、


「?あれ?…さっき…」


昨日は見なかった宿屋の店主が、俺の事を見て二階の方に視線を向ける。

俺はエルヴァンの様に少しだけ声を低く、


「どうした店主?何か問題があるか?」


そう聞く。

被っている冑の所為で声がよりエルヴァンの様に聞こえる…と思う。

俺がそう思っていると、


「い、いえ何でもありません」


店主が俺に掌を見せる様に胸の前に手を出すと、首と共に左右に振る。

俺はそんな店主を見た後に、昨夜と同じ様に廊下を進んでいきエルヴァン達がいる部屋まで来るとノックをする。

少しして部屋が僅かに開くと、そこからファルシュが俺の方を覗き込んでくる。

俺の姿、エルヴァンに似せた姿を見たファルシュが部屋の扉を開けてくれると、俺はすぐに部屋の中へと入る。

中には、エルヴァンがベッドに座っている状態で動かなくなっており、ファルシュは部屋に入った俺の事を見て、


「似てるけど、鎧の細かい所が少し違うな」


エルヴァンとの違いを指摘してくる。

まだ一瞬と言っても良い程、時間が経過している訳でも無いのによくエルヴァンとの鎧の違いに気がついたものだ。

俺がファルシュの観察眼に感心していると、


「ヴァルダ様、いつの間に…。申し訳ありません、出迎えも出来ず…」


エルヴァンが遅れて俺に気づくと、気づかなかった事に謝罪をしてくる。


「いや、構わないが。大丈夫か?」


やはり、エルヴァンから好い相手との戦いの機会を奪ってしまったのが良くなかったのだろうと思い、俺は謝罪をすると、


「いえ、ただ今日の鍛練はあまり私個人としては良くは無かったので、改善をする為に考え込んでいただけです」


エルヴァンがそう教えてくれる。

それを聞いたファルシュは、


「たまにあるんだよ。剣の振り方が悪かったとか、想像していた敵の動きに変則性が無かったとか」


エルヴァンの事をジトッとした目で見ながらそう言ってくる。

そこまで考えて鍛練をしているのか。

俺はそう思いながら、


「鍛練にそこまで熱心になる事は凄い事だろうが、ファルシュが可哀想だからあまり長時間は考え込まない方が良いだろうな」


笑ってエルヴァンにそう言う。

そして、


「さて、ではこれからの事を改めて話そう。まずこれから俺はエルヴァンとして城へ行き、レオノーラさんとの戦いに勝った際の条件を伝えに行く。おそらくその条件を許可して良いか、帝都の上層部に伝えに行くだろう。戦いは今日ではないはずだ。話も俺が基本的には一方的に条件を言う程度故に時間は取られない。それまではエルヴァン達はこの部屋で待機。話が終わり俺がここへ戻った後、2人はいつも通りに動いてくれて構わない」


今日の動きを説明する。

それを聞いたエルヴァンは、はいと返事をして、ファルシュはたまにはゆっくりと寝るかと言う。


「暇な時間になってしまうが、申し訳ない」


俺はそう言うと、


「昨日会った者、名前はエメ…リッツだったか?」


エルヴァンに名前の確認をする。

直接会っていない故に、俺はエルヴァンから聞いた情報を頼りに話を合わせなければいけない事もあるだろう。

俺はそう思い、エルヴァンに再確認をする。

そうして時間は過ぎていき、しっかりと外見と名前を覚えた辺りで時間も良い時間となり、今なら城に行っても無礼だと思われないだろうと思い、


「では、行ってくるか」


俺はそう言ってベッドから立ち上がり、座っている時に側に置いておいた冑を被る。


「お気をつけて」

「早くな~」


2人の見送りの言葉を聞いた後、俺は部屋から出て宿屋も出ると城へと向かって歩き出す。

帝都の街を歩いていると、ふと視線を感じる。

そちらに視線を向けると、普通に働いている人達や路地裏からこっそりとこちらを見ている者がいる。

エルヴァンは普段から、第一級冒険者という事でこんなに見られているのかと思っていると、そこにもう1つ、噂の事があるからではないかと考える。

騎士団団長がレオノーラさんでは無くなった時、次に団長になるエルヴァンの事を品定めではないが、どの様な事をするのか注視しているのかもしれない。

俺は様々な視線を受けつつ歩き続け、ようやく城の前まで到達する事が出来た。

城の敷地内に入るためにも門が構えられていて、そこには完全武装した騎士達が数人いる。

しかし、エルヴァンの姿をしている俺の事を見てくると、少し後ずさりをしつつ、


「きょ、今日は何の用ですか第一級冒険者様?」


そう聞いてくる。

怯えられているのか?

俺はそう思いながら、


「昨日話したエメリッツに用がある。会う事が出来るか、確認をして欲しい」


低い声でそう言うと、騎士達の中の1人が城の方へと走って行く。

それと同時に、


「少々お待ちを。確認させて頂きますので」


俺の近くで門の警護をしている騎士がそう言ってくる。

彼の言葉に素直に従い、俺はそのまま城を眺めながら時間を潰す。

そうしていると、城の方からさっき俺の事を伝えに行った人だろうか?

走って来る騎士が見え、門まで戻って来ると他の騎士に耳打ちをし、


「確認が出来ました。お通り下さい」


それを聞いた騎士達が門を開けてくれる。


「感謝する」


俺は騎士達にそうお礼を言うと、門を潜って城の敷地内に入る。

庭園の様な場所が見え、綺麗な花などが咲いているのが見える。

見晴らしを良くするためかあまり高い草花は生えておらず、結構広範囲で城の敷地内が見渡せる。

俺は城の前の庭園を眺めながら歩き、城門に辿り着くと、


「おはようございますエルヴァン殿」


1人の男性が、笑顔で俺の事を出迎えてくれる。

来ている服は貴族の物、腰に下げている剣は装飾が施されて実戦向きでは無い代物。

なるほど、彼が昨日エルヴァンと話したエメリッツという男だな。

俺はそう思いながらこちらに笑顔を向けている男を見て、


「あぁ。昨日の話の事で、条件を言いに来た」


俺はエルヴァンの様に、あまり敬語は使わずに素っ気無い態度で男に挨拶をした。


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