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289頁

冒険者ギルドを出発したエルヴァンは、前方を先に歩く騎士の2人から少しだけ距離を開けて歩いていると、まるで自分が何か悪い事をして連行されているのではないかと考えつつ、先程の騎士の言葉を思い出して、エルヴァンは思考する。

しかし霊峰にいる時からヴァルダとの話し合いをしているエルヴァンは、ヴァルダに言われた事をしっかりと守り状況を進める事を優先する事しか考えるつもりは無い。

全ては、ヴァルダ様の御心のままに…。

エルヴァンがしっかりとヴァルダに頼まれた事を思い出していると、


「お前、あの子供は何だ?」


前を歩いていた騎士の1人がそう聞いてくる。

それを聞いたエルヴァンは、


「前に依頼先で保護をした子だ。少し乱暴な言葉遣いをするが、悪い者では無い」


騎士の問いにそう答えると、


「ありゃ人と獣のハーフだろ?よく側に置いてるな」


騎士にとっては何気ない一言、特に気にした様子は無く素直に感心した様な声でそう言う。

それを聞いたエルヴァンは、


「…亜人族は嫌いなのか?」


前の騎士にそう聞くと、


「あぁ?そんなの当たり前じゃねえか。あんな殺す事ぐらいしか価値がねぇ奴らを好きになるなんて、ありえねえだろ」


正直にそう答える。

それを聞いたエルヴァンは、


「しかし貴様達騎士団の団長は、亜人族だ。彼女の指示には従うのだろう?」


そう質問をする。

エルヴァンの問いを聞いた騎士は、手を耳の横まで上げると、


「従わねえよ。あんな街の警護程度しかしないゴミ共と一緒にするな。俺達はあの薄汚い女とは別の騎士なんだよ。階級ってモンが違うんだ」


左右に振りながらエルヴァンの問いに答える。

エルヴァンは騎士の言葉を聞いて、ならば剣聖側の騎士なのだろうかと考える。

剣聖は精鋭を率いてジーグに潜入しているが、彼らはその組織には入れなかった者達なのだろうか。

エルヴァンはそう考え、


「つまり、貴様達は剣聖の配下という事か?」


質問を続ける。

エルヴァンの質問を聞いた騎士は、


「それも違う。剣聖様は騎士団に所属している扱いにはなっているが、あの人は基本的に独断で動く。あの方は人だろうが亜人だろうが、ただ斬る事を楽しむ事しか考えていない様な人だ」


そう答えると、


「質問は終わりだ」


騎士がそう言って歩みを止める。

その前には、帝都の中央にそびえる城の敷地に入るための検問所があり、門が存在している。

エルヴァンの前にいる2人が検問所の騎士と話をすると、検問所の門が僅かにだが開きそこから騎士達が白の敷地に入る。

エルヴァンも彼らに続いて城に入ると、綺麗に整えられている草花が視界に入り、そこに装備を着けている騎士達が見える。

流石に城の警護をしている騎士達、しっかりと装備を着込んでいる。


「ここからは、普通なら平民の貴公が入れる場所ではない。礼節を弁えてもらおう」


エルヴァンが騎士達を見ていると、先導している騎士がエルヴァンにそう言ってくる。

騎士の言葉にエルヴァンはあぁと短く返事をすると、どんどん城に向かって歩き続ける。

そうして城の前までやって来ると、その城の壁に施されている装飾にエルヴァンは冑の下の目を細める。

城への入り口が開かれると、先導している騎士達が中へと入り、


「入って来い」


エルヴァンにそう声を掛ける。

騎士の指示に従って城の中に入ると、豪華絢爛を表した様な内装にエルヴァンは僅かに息を吐く。

キラキラを光る壁に照明、更に床に敷かれた赤い絨毯がその明るさを強調している様に感じさせ、何なのだここはとエルヴァンは感想を抱く。

エルヴァンが立ち止まってそう思っている間にも、前を歩いていた騎士達は普通に城の奥へと進んでいき、


「どうした?早くしてくれ」


エルヴァンにそう言ってくる。

そんな様子にエルヴァンはため息を吐きつつ彼らの後を追いかけると、城の奥にはメイド服を着た侍女が何人も働いており、執事服を着た人達もいる。

そんな人達が、来客であるエルヴァンの事をジッと見ている光景に、エルヴァンは堅苦しさに似ている雰囲気に早く帰って剣を振るいたいと考える。

そうして城の奥にある部屋に通されたエルヴァンは、部屋に置かれている派手な色合いをしているソファに腰を降ろすと、


「俺はエメリッツ様を呼んでくる。ここは任せた」

「了解」


騎士達がそう話をして、1人は部屋から出ていき、もう1人は部屋の扉の前に立った状態で留まった。

騎士の1人が部屋から出て少しして、エルヴァンがいる部屋の扉がゆっくりと開くと、扉の前に立っていた騎士が開いている扉の邪魔をしない様にすぐに移動すると、


「貴公が第一級冒険者、エルヴァン殿か?」


部屋に入ってきた男が、開口一番にそう質問をする。

男の質問を聞いたエルヴァンは、


「その通りだ」


短くそう答える。

鍛えている体では無く、ヒョロッとした体に装飾が施された服。

手には指輪が何個も身に着けられ、腰に下げている剣も戦う事よりも儀式や飾り用の宝石や金が施されている。

エルヴァンの言葉を聞いた男はズカズカとエルヴァンの前のソファに行って勢いよく座ると、


「今回の依頼、無事に達成したと聞いたが詳細の説明を頼む。それを聞かなければ、こちらの報酬を払う訳にも、これから貴公に話す事も出来んからな」


エルヴァンにそう言ってくる。

それを聞いたエルヴァンは、上半身を傾けて頷く仕草をすると、


「依頼内容は、霊峰に住む竜人族を兵力として招集させる事が出来るか、もし出来なかった場合は、全滅させるという内容。実際に霊峰へ行き、竜人族の集落に行って彼らの長と話し合いをした結果、話し合いは決裂し戦いに発展した。その結果で私が帰って来ている事、全てを語らなくても十分だろう」


そう淡々と、嘘の言葉を発する。

それを聞いていた騎士達は互いの事を見る様に少しだけ動き、エルヴァンの目の前にいる男はエルヴァンを見ながら、


「皆殺しにしたんだろうな?一匹も残してはいないか?」


そう聞いてくる。

男の質問にエルヴァンがあぁと返事をすると、


「………まぁ良い、調査依頼を別の冒険者に依頼はする。しかし数は少ないが一匹でも十分な強さがある竜人を全滅させる事が出来るとは、中々腕が良い様だな」


男がそう言い、ニヤニヤとエルヴァンを見た後、


「お前ら、確か前に我流で師範もいない平民の強さなど、大した事は無いと言っていただろう?」


扉の前に立っている騎士達にそう言う。

男の言葉を聞いた騎士達は、自分達が話していた事を聞かれていた事に困惑しつつもはいと返事をすると、


「見せて貰おうか。平民の最強の実力をな」


男はそう言って笑った。


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