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シェーファとの話も随分と続き、気がつけば結構な時間まで話をしていたのが分かる。

夜も遅くなったという事で、少し名残惜しくは感じるがシェーファとスゥにもう寝る様に伝えると、シェーファとスゥは俺の部屋をすぐに後にした。

その際にシェーファは挨拶をし、スゥはもう一度撫でてくれと体を擦り付けてきた。

スゥの体を撫でながら、シェーファにおやすみと伝え、2人が出て行ってから俺はしっかりとベッドに潜り込む。

これはやばい…。

ベッドの中で考えを纏めるつもりでいたが、そんな事はベッドのふかふかが許してくれなかった。

ベッドに入った瞬間、俺の意識は微睡み…既に考えは…考えすら…許されない。

………寝よう。






翌朝、あまりの快眠に俺は少しだけベッドの上で呆然とする。

快眠過ぎて、寝坊すらしてしまっている。

既に朝日が昇っており、陽は結構な高さまで昇っている状態だと気がつくと、俺は急いで身支度を始める。


「おはようございますヴァルダ様。あまりにも心地良さそうに就寝しておりましたので、起こす事が出来ず…」


すると、突然セシリアが現れてそう説明をしてくる。

俺はセシリアの言葉を聞き、


「いや、セシリアが謝る事では無い!一応時間には余裕がある方ではあるのだが、寝坊をしてしまうとは自分でも思っていなかった。セシリアにはいつも通り塔の事を任せる。後は頼んだ!」


俺は慌てて身支度をして外の世界に行こうとすると、


「ヴァルダ様、これを」


セシリアが俺の元に駆け寄って来て、俺に包みを差し出してくる。


「これは?」


俺が包みを受け取ってそう質問をすると、


「朝食のサンドイッチを包んで貰いました。何も食べていないのはお体に悪いです。…お気をつけて」


セシリアは俺の問いにそう答えて、一歩下がって一礼をする。

俺はそんなセシリアの気遣いに、


「ありがとうセシリア。行ってくる」


そう返し、外の世界へ戻った。

黒い靄を通り抜けるとそこは、俺が一時的に借りている宿屋の部屋。

誰もおらず、何も荷物も置いていない部屋に戻って来ると俺は、


「まずは宿屋の店主に伝言があるか聞いて、無かったらどうするか…。靜佳の欲しがっていた物を探しに市場へ行ってみるか?それと同時に、レオノーラさんに会えたら良いな程度で探してみるか」


そう独り言を呟いてまだ半分寝ぼけている頭の中を整理して、とりあえず先にセシリアのくれた朝食を食べよう包みを開ける。

そうして宿屋で朝食を食べ終えた後、俺は部屋を出て鍵を掛けて宿屋の一階へと降りると、宿屋の店主に俺宛に誰か来たか聞いてみる。

しかし俺に対する来客は無かったらしく、俺は店主にお礼を言ってから宿屋から出て帝都の街を歩き始める。

昼前でもこの賑わい、相変わらずの人の多さ…。

つい最近まで田舎と言っては申し訳ないが、人があまりいない所に遠征していた故に、久々の人の多さに気が滅入ってしまう。

しかしそれでも、メヒテアに目隠しを作ってくれた靜佳にお礼の品を探す為に、俺は市場に向かって歩き続けた。

人通りが激しい大通りから更に奥へ進むと、そこには同じくらいの人が集まっている市場に辿り着く。

大通りと違い、市場の商品を足を止めて眺めている人や店に出入りをする人もいる事で少しだけ歩き易さはあるが、それでも人と人の間をすり抜ける様に歩かなければいけないのが大変ではある。

俺はそう思いつつ、適当に露天商から店の中まで見て回って良い物を探す。

しかしどこへ行っても、靜佳に、シュリカに似合いそうな物が見つからずに俺は悩み始める。

身に着ける装飾品などが良いと思ったが、もう少し視野を広くした方が良いかもしれないな。

俺は考えを改めて、目的の物品の種類を頭の中で増やしていく。

今のところ考えられるのは、装飾品、珍しいアイテムや素材、リアルでも好きだったお茶関係の物。

とりあえず俺はそう考えると、改めて来た道を戻りながら市場を見て回る。

すると、少し良いなと思う物が見つける事が出来る。

1つは、露天商のお爺さんが売っていた素材だ。

「UFO」には無かった素材という事は、おそらくこの世界特有の素材なのだろう。

しかし素材を贈るにしても、ただのモンスターのアイテムでは流石に怒られる事は理解している。

俺が求めているのは、装飾品などに使えそうな綺麗さや可愛らしさがある素材だ。

鉱石とかもアリかもしれないな。

俺はそう思いつつ、もう1つの良いと思った商品が置いてある店の前に行ってみる。

しっかりとした店ではあり、中には貴族が使うのではないかと思わせるティーカップやその他諸々を売っている。

店内に入ると、品数は多くはないがどれも精巧な花の絵が描かれていたり、面白い形をしたティーカップやポットなどが店内の棚に置かれている。


「いらっしゃいませ」


店の奥にはこれまた渋い男性が立っており、その姿は引退をした執事の様にしっかりとした立ち姿をしている。

こういう時は、


「すみません、大切な人への贈り物を探しているのですけど…」


俺が男性にそう声を掛けると、男性は微笑む様に俺に笑顔を向けてくると、


「それは大切な女性ですか?それとも仲間や、親友などの男性ですか?」


そう聞いてくる。

俺は男性の言葉を聞き、


「女性ですね。お茶を飲む事が好きで、外から見た時に良い物が揃っていそうだったので入ったんですけど」


そう答えると、男性はふむと俺の言葉に頷いてから、棚に並べられている商品に視線を移す。

俺も男性に任せるだけでは無く、俺が良いと思った物を選びたいと思い棚に並んでいるカップなどを見ていく。

すると、あるティーカップとティーポットが目に入る。

ティーカップは透明のガラスで作られており一見普通に見えるのだが、カップの中に花が描かれている。

持つ部分は花の茎をイメージしてある様な、緑色のガラスが互いに絡み合っている様になっている。

ティーポットも同じ様に透明のガラスなのだが、外側に精巧に作られた水色とピンクの花のガラス細工がくっついており、可愛らしい作りをしている。


「これ、良いですね」


俺が目の前にあるティーセットを指差すと、


「では、そちらにいたしますか?私はこちらも良い物かと思ったのですが」


男性が俺に手に持っているティーカップを見せてくる。

陶器の様な白いティーカップとティーポットに、真っ赤な色と金色の塗料か何かを塗った物を見せてくる男性。

…悪いとはいかないが、靜佳の趣味では無いと思い、


「そうですね。でも、贈り物なら自分で選んだ物にします。わざわざすみません」


俺は男性に謝罪をしつつ、棚に置いてあるティーセットを手に取った。


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