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シェーファから離れて料理を注文した俺は、シェーファとセシリアが待っている席まで戻って来ると、
「こちらの席へ」
「どうぞ、ヴァルダ様」
セシリアとシェーファがそう言って、同じ席に手を向けるとそう言ってくる。
俺はそんな2人にお礼を言ってテーブルの上に料理を置くと、俺は先に来て食事をしていた2人の料理が目に入る。
サンドイッチとは言っていたが、大きさはあまり大きいサイズでは無いサンドイッチが置かれている。
俺やエルヴァンなど、男性陣にとっては一口で食べる事が出来そうなサンドイッチを、ゆっくりと食べていたのであろう。
まだ数が残っている。
軽い食事と言っていたし、この後しっかりと食べるであろう。
俺はそう思っていると、
「ヴァルダ様、シュリカの部屋に行っていた様ですが、どの様な事をしていたのですか?」
シェーファがそう聞いてくる。
その言葉と同時に、セシリアが動きを止めて俺に視線を向けてくる。
その視線は、シェーファと同じ様な疑問を俺に聞いてくる様だ。
「メヒテアの目隠しをプレゼントしたいと思ってな。シュリカにお願いをしに行った。俺が出来れば良かったんだが、装飾品などはあまり作る事が出来ないからな。その点シュリカはとても良い物を作る」
俺がシェーファとセシリアにそう説明をすると、2人は納得しつつも不満そうな表情をする。
「それに、もう1つ大切なお願いがあってな。ルミルフルが、戦う意欲を示している。おそらく遠くない内に、レベルの限界に辿り着くだろう。その際に、本契約をしてレベル上限の解放を行おうと俺は考えている」
続けて説明した事に、シェーファとセシリアは驚いた表情をすると、
「話がしっかりと決まり次第、準備に取り掛かります」
「私も、他の皆様に話を通しておきます」
俺にそう言ってくる。
そんな2人にお礼を言うと、俺は料理を口に含んで咀嚼する。
すると、
「しかしヴァルダ様、大丈夫でしょうか?ルミルフルさんは魔王の娘と聞いています。ヴァルダ様の負担も大きいでしょう」
シェーファがそう言ってきて、セシリアがシェーファの言葉に賛同して頷く。
その問いに俺は、
「そうだな。元々の種族としてのステータスが大きい分、負担も大きくはなる。しかしそれを無理矢理乗り越えてでも得たい力があると、俺は確信している」
そう答えると、シェーファは黙ってしまう。
「セシリアには、儀式中の子供達の世話を任せたい」
黙ってしまったシェーファに、俺は意識的に声は掛けずにセシリアにそうお願いをする。
シェーファが何を心配しているのかも理解しているし、彼女自身も通過している事だ。
ルミルフルに対しても、思うところがあるのだろう。
故に俺は、シェーファの葛藤には口を挿まずに見守る事にする。
俺はそう思いつつ、
「もう1つお願いと言うか、心に留めておいて欲しい事がある。おそらくルミルフルの件よりかは早く、塔に迎え入れる人が増えると俺は予測している。まぁ、エルヴァンと俺の動きが失敗してしまったらそんな事は無いが、俺はその件に対しては失敗出来ないと心に決めている。セシリアとシェーファには、これから沢山迷惑を掛けてしまうだろう。予めに謝罪をしておく、すまない」
これからの事について、もう1つの話をしておく。
俺の言葉を聞いた2人は、
「そんな…。ヴァルダ様が謝罪をする事などありません」
「セシリアの言う通りです。ヴァルダ様の御心のままに。私達はヴァルダ様の傍に、寄り添い手助けする事が出来る事が嬉しいのです。謝罪をする必要はありません」
俺にそう言ってくる。
2人に感謝をしつつ俺が料理を食べていると、そろそろ夕食の時間になって来たのか塔に住んでいる者達が食堂に入ってくるのが見える。
皆も突然俺がいたら気が張ってしまうだろうと考え、少し急いで夕食を食べ終えると食器を片して食堂を後にする。
その際にシェーファとセシリアも一緒に出て来たのだが、
「2人はゆっくりとしていなくて大丈夫だったのか?」
そう質問をすると、
「はい。ヴァルダ様こそ、もっとゆっくりと食事をした方が良いと思います。最後の方は最初の時よりも速く、あれでは体に悪いかもしれません」
シェーファがそう言ってくる。
それを聞いた俺は、
「いや、塔の皆…新しく来た住人の中には俺に対してまだ緊張感を持っている者がいる。そんな彼らに、食事中も緊張をさせているのは申し訳無いからな。彼らには、ゆっくりとして貰いたいと思っているし」
シェーファの言葉にそう返すと、シェーファとセシリアが互いに視線を送ると、
「ヴァルダ様のご配慮は嬉しいですが、それでもヴァルダ様にはゆっくりとした食事の時間を取って欲しいです」
「私も、同じ気持ちです」
2人は俺にそう言ってくる。
2人の言葉を聞いた俺は、
「…そうだな。彼らとの交流の事も考えて、これからはもう少し食事などの時間を合わせて話をしてみるのも良いのかもしれないな」
そう考えを改めて、前向きな意見を出してみる。
俺の言葉を聞いたシェーファとセシリアは少し微笑んだ後、
「それは良い事だと思います」
「機会を設けるのであれば、私達から予め話を通しておきますよ」
力を貸してくれる言葉を言ってくれる。
「ありがとう2人共」
2人に感謝を伝えるとシェーファとセシリアは一礼をした後、残っている仕事があるとの事で行ってしまった。
階段を下る2人の背中を少し見送った後、俺は自室へと一度戻りその後風呂に入る。
浴槽に浸かり、硬い石の上や座っていた体の凝りをお湯に溶かす様にゆっくりと風呂を楽しんだ後、俺は風呂を後にして自室へと戻って来てベッドに寝ころぶ。
ふかふかのベッド最高だ…。
そんな感想を抱いてしまう程、睡眠時の寝る場所の硬さに悩んでいた。
異世界で、亜人族差別を覗くとベッドなどの硬さがもしかしたら悩みなのでは…と思わせる程、俺は外の世界での寝る際にベッドに悩まされていた。
「このまま寝てしまうのもアリかもしれないな」
俺がそう呟くと、ふと俺の手に何やらプルプルの感触が触れる。
そちらに視線を向けると、久しぶりに見たスライムのスゥが僅かに震えながら俺の手元に存在していた。
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