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靜佳が家具の後ろに隠れた後、俺は一度クラスチェンジを行って魔法使いに変更すると、メヒテアのスキルを防ぐ様に準備をする。
その間に、
「ヴァルダ様にその様な事をして頂く訳には!自分で!自分で着けられますから!」
メヒテアは恥ずかしがってそう言ってくるのだが…。
「ヴァルダ大丈夫!メヒテアさんは嫌がってないから!」
家具の裏にいる靜佳が、そう言ってくる。
まぁ、俺もメヒテアにこれを着けてあげたい気持ちの方が大きいので、今回は靜佳の言葉に乗っかろう。
俺はそう思いつつ、
「大丈夫だメヒテア。俺が着けてあげたいんだ」
狼狽えているメヒテアにそう言うと、先程まで僅かに開いていた唇が今度は何かの言葉を紡ごうとしつつも何も発する事が出来ていない。
俺はそれを拒絶では無いと勝手に思い込むと、彼女の耳の横の方に手を伸ばして後ろ髪まで手を伸ばすと、髪の毛に隠れているメヒテアの目隠しの留め具を外す。
その瞬間の訪れる体の違和感を感じさせない様に、俺は新しい目隠しをメヒテアに着けてあげる。
そうして新しい目隠しを着けたメヒテアから少し離れて、彼女の全体を見ると、
「靜佳、もう出てきて大丈夫だぞ」
俺は家具の後ろに隠れていた靜佳に声を掛けると、俺の言葉が言い終わるよりも早く家具の後ろから飛び出してきて、メヒテアから少しだけ離れた俺の隣に立つと、
「どうよヴァルダ?」
自信が溢れている声でそう聞いてくる。
その言葉に俺は、
「大変素晴らしい。とても良い仕事をしたな靜佳」
純粋に思っている事を伝える。
恥ずかしそうに体の前で手をモジモジとさせているメヒテアに、
「とても似合っているぞメヒテア。前着けていたのも良かったが、俺個人としては今着けている物の方が、よりメヒテアの綺麗さを際立たせていると思う」
俺がそう感想を伝えると、
「あ、ありがとうございますヴァルダ様」
メヒテアは俺にそう言い、靜佳の事を見ると、
「ありがとうございますシュリカさん。こんなに良い物を作って下さって」
そう感謝の言葉を伝える。
メヒテアの感謝の言葉を聞いた靜佳は少し照れながらも、
「いえいえ、気に入って貰えて良かったです」
そう言うと、照れながら笑っている表情のまま俺の事を見てきて、
「それでヴァルダ、さっき言ってた頼みたい事って何?」
そう聞いてくる。
俺は靜佳の言葉を聞いて、
「そうだった。今度ルミルフルの剣を作ってあげて欲しいんだ。元々は俺が作る予定だったが、靜佳にも一振り作って貰いたい」
先程頼みたかった事を伝えると、靜佳は俺の頼み事を聞いて、
「それは構わないけど、見返りは?」
先程までの照れていた笑顔から、何かを俺から引き出そうとしている様な挑発的な笑みを向けてくる。
俺は靜佳の言葉を聞き、
「み、見返りか…。何か欲しい物とかあるのか?」
そう質問をしてみる。
すると、靜佳は少し考える様な素振りと表情をした後に、少し離れた所にいたメヒテアに視線を向けた。
それに続いて俺も靜佳の視線の後を追う様にメヒテアに視線を送ると、
「ど、どうかしましたか?」
俺と靜佳に視線を向けられたメヒテアが困惑した様子でそう聞いてくる。
そんなメヒテアの言葉に、
「う、ううん!気にしないで!」
「いや、すまないメヒテア」
靜佳と俺がそう返すと、靜佳が俺の方を向いて、
「私も、メヒテアさんみたいにプレゼント欲しいな~。ヴァルダが朝から晩まで考え抜いた物、欲しいなぁぁ~~」
そう言ってきた…。
靜佳の言葉を聞いた俺は、
「分かった。今、エルヴァン達の連絡を帝都で待機している状態だ。時間があった時に、市場を見て回ってくる」
靜佳にそう返すと、靜佳は満足そうな表情をして、
「よろしくねヴァルダ。ちゃんと身に着けられる物が良いな」
念を押してそう言ってくる。
靜佳の言葉に俺が数回頷くと、
「ルミルフルさんには、私から話は聞いておくよ。剣の大きさとかは、直接聞いたり触って貰ったりした方が良いからね」
靜佳はそう言って、
「お茶にしよっか。今準備するから、座ってて」
そう言い始めて、「UFO」時代から愛用していたコップなど、お茶を飲むのに必要なアイテムを準備し始める。
そうして靜佳の部屋で夕食前のお茶を飲んだ後、俺とメヒテアは靜佳の部屋の前で別れた。
その際に、
「ヴァルダ様、ありがとうございます。この目隠しも、先程まで身に着けていたのもとても大切に使わせて頂きます」
メヒテアは俺にそう感謝の言葉を伝えて、微笑みながら階段を下りて行った。
そんなメヒテアの様子に満足しつつ、俺は少し早いが夕食にしようとして食堂へと足を運ぶ。
食堂に入るとまだ夕食にしては早い方な故に人がほとんどいない。
いるとするなら、塔の管理で忙しく今は休憩をしているであろうセシリアとシェーファがいる。
すると、食堂に入って来た俺に気がついたのか2人は手に持っていたカップをテーブルの受け皿の上に静かに置くと、椅子から立ち上がって俺に一礼をしてくる。
俺はそんな2人に片手を僅かに挙げて、そこまで畏まらなくても大丈夫な事を伝えると2人はもう一度、今度は浅く俺に頭を下げてくる。
そして、シェーファが優雅に俺の方へと歩いて来ると、
「ヴァルダ様、よろしければご一緒しませんか?」
そう聞いてきた。
俺はシェーファの言葉に、
「嬉しいが、お茶はもうシュリカの部屋で飲んできてな。少し早いが、夕食にしようと思っていたんだ」
そう正直に答えるとシェーファの表情が一瞬、シュリカの名前を出した瞬間だけ瞳に力が籠ったが、そんな様子は幻なのではないかと思わせる穏やかな様子で、
「では、ご一緒させてください。私達は束の間の休憩に、軽い食事をしていたところです」
そう言ってくる。
俺はシェーファの言葉を聞き、
「それなら、一緒に食べようか。2人は何を食べているんだ?」
俺がそう質問をすると、シェーファはセシリアが立っている方に視線を向けると、
「2人共サンドイッチを頂いていました。中の具が違いますけど」
そう答えてくれる。
それだけで足りるのだろうか?
俺はそう思いつつ、軽い食事と言っていたしこの後にしっかりと食べるのだろうと考え、
「俺はもう少ししっかりと食べるか。食事を運ぶから、少し待っていてくれ」
そう言って踵を返そうとすると、
「お待ち下さいヴァルダ様。それくらいの事でしたら、私が行って参ります」
シェーファが俺にそう言ってくる。
彼女の言葉を聞いた俺は、
「その気持ちは嬉しいが、そこまでして貰うのは気が引ける。気軽に待っていてくれ」
そう短く言い、シェーファに背中を向けて夕食の注文をしに向かった。
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