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ブルクハルトさんが部屋に戻って来た後、ウルリさんを含めアウレオンさんとリエスさんも彼にエルフの保護に協力してくれた事を感謝し、ブルクハルトさんは彼らに、


「短い間に、一生分の苦しみを味わった事でしょう。ビステル様の元で、幸せになってください」


穏やかな声でそう言い、俺はエルフの皆を塔に迎え入れた。

帰還をする際に、やはり黒い靄に怖がっていたが何とか皆が塔に行ってくれ、俺は改めて、


「ブルクハルトさん、今回はありがとうございました。いくら払えば良いですか?」


彼にお礼を言った後、先程の話を精算について話し出す。

俺の言葉を聞いたブルクハルトさんは、


「では、銀貨10枚で。本当でしたら5枚程度の事務作業でしたが、残り5枚は私の代わりに彼らの世話をしてくれた者達に与えたいと思いますので」


俺にそう言ってくる。

その言葉に、


「では、20枚お渡しします。ブルクハルトさんの感謝と、俺からの感謝という事で」


俺がそう言って金銭が入っている袋を取り中身を出していると、


「それでは、私の気持ちが少ない様に聞こえますが…。止めて下さいね、私の大事な商館の従業員であり、家族と言っても良い者達なのですから。私よりも好感を持たれてしまったら…」


ブルクハルトさんが苦笑しながらそう言ってくる。


「皆もブルクハルトさんの事を大事に思っていますよ。多少お小遣いを上げても、それは覆りませんって」


俺は彼の言葉にそう返して銀貨20枚を手渡しをすると、ブルクハルトさんは失礼しますと一言言ってからしっかりと枚数を数える。

そして、


「お預かりします」


ブルクハルトさんはそう言って、懐に銀貨を入れる。

それを確認してから、


「ブルクハルトさん、もう一方の件はどこまで進んでいますか?」


俺は彼にもう一つ大事な話を切り出す。

そんな俺の言葉を聞いたブルクハルトさんは、


「順調ではありますが何分秘密裏に動かなければいけない故、とても良いペーストは言い難いのが本音です」


真剣な表情で、小さく声を出して質問に答えてくれる。

俺はその言葉を聞き、


「そうですよね、ですが問題無く動けているだけで上々な気がします。おそらく帝都の状況も変わるだろうし、これからもっと忙しくなります。…ブルクハルトさん、1つお願いしたい事があります」


俺が改めてそう話をすると、


「何でしょうかビステル様?」


ブルクハルトさんが真剣な表情のまま、俺に次の言葉を促してくる。

俺はブルクハルトさんに、


「男性、出来れば第一級冒険者並みの強さを持っている奴隷を調達して欲しいのですが、可能ですか?」


そう質問をする。

俺の言葉を聞いたブルクハルトさんは難しい表情をして、


「第一級冒険者並みの強さ、中々ビステル様のお眼鏡に叶う者はいないと思います…。実力面もそうですが、それ程の実力がありつつ私達の様な者はあまりいないかと…」


そう教えてくる。

私達の様な…つまり、亜人族の事を大事に思っている事か?

俺はブルクハルトさんの言葉を聞き、


「男性で、実力があるだけで十分です。性格などは、二の次で構いません。絶対に、男性で実力者であれば、犯罪を犯した奴隷でも良いと思っています」


しっかりと要望を伝えると、


「…ビステル様がそこまで言うのでしたら、性別と実力だけを吟味します」


俺にそう答えてくれる。

ブルクハルトさんの言葉に、


「ありがとうございます。おそらく当分の間は帝都を出る事は無いので、調達出来次第宿に連絡を入れて頂けると幸いです。よろしくお願いします」


そう答える。

そうして話し合いは終わり、俺はブルクハルトさんの商館を後にして宿屋に部屋を取ると、今度はレオノーラさんと会う為に帝都の街を歩き始める。

騒がしい喧騒の中で、俺はひたすらにレオノーラさんの姿を探しながら歩き続ける。

しかし中々レオノーラさんを見つける事は出来ず、俺は一旦道の端まで移動して立ち止まると、


「…スラム街の方か?」


俺はそう呟いて立ち止まった道の端からすぐ見える裏通りへと続く道に入る。

相変わらず裏通りからは空気がどんよりと淀んでいるな、ゴミも散乱している。

俺は裏通りの道を歩きながらそう思っていると、少しだけ広い場所に出る。

見ると、他の建物よりも少しだけ大きく中からは子供達の声と、騒いでいる子供達を注意する様な声が聞こえてくる。

…孤児院とか、そういう感じだろうか?

スラム街で親がいない子供も多そうだし、孤児がいるのも知っている。

俺がそう思っていると、


「また来るわ。良い子にしてるんだぞお前ら」

「行ってくるねお母さん」


大きな建物の扉が開いて騎士団の装備を着けている男女が2人出てくる。

それに続いて彼らの見送りの為に外に飛び出してくる子供達。

人族や亜人族など関係ない、純粋な子供達が建物から飛び出してくると、俺の事を見て声が徐々に小さくなっていき、立ち尽くしてしまう。

子供達の様子がおかしい事に気がついた男女が振り返って俺の事を見てくると、


「…何の様だ?」

「まさか、人攫い…」


2人の騎士が腰に差している剣の柄に手を添える。

一触即発の空気に、


「…いえ、俺はただ人探しで帝都を練り歩いていただけです」


俺は一応真実を伝える。

しかし俺でも分かる、あまりにも俺自身が不審者だという事に…。

俺、フード被ってるしな…。

俺がそう思っていると、


「…待て、フードを被っている男…。まさかこいつ…」


何やら男性が俺の姿に心当たりがある様な言葉を発する。

しかし俺は男性に心当たりは無い。

すると、


「おい、こいつ団長が言っていた奴じゃないか?」


男性が女性にそう聞いている。

その言葉に、女性は冷静な様子で、


「フードを被ってる人なら、帝都では沢山いるわよ。警戒を怠るんじゃない」


そう男性にお叱りの声を掛けると、


「私達も子供達の前で剣を抜きたくはない。大人しくここから立ち去るのなら、今は見逃してやる」


女性はそう俺に言ってくる。

俺はその言葉を聞き、


「…分かりました。ただ1つ聞きたい事があります。レオノーラさんは今日はどちらにいますか?」


そう質問をすると、男性はほらやっぱりと言いたげに満足気な表情をして女性を見ると、そんな男性の表情を見て女性は機嫌を損ねた様子で、


「騎士団長は、今日は騎士団の本部で執務をしておられる」


そう答えてくれた。

その言葉を聞き、今日は会えないであろうと察し、


「ありがとうございます。すぐに退散させて頂きます」


そう言って踵を返してその場を後にした。


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