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俺の質問に驚いた様子で答えた男性の言葉を聞き、俺はアウレオンさんやリエスさんと別れた革新派の人達な事を理解して、
「アウレオンさんやリエスさん、不帰の森に住んでいたエルフの皆様でしたら、この間保護しましたよ。今は安全に暮らしています」
目の前で驚いているエルフの人達にそう言うと、彼らの緊張や恐怖の感情が和らいだのが分かった。
すると、
「ど、どういう事ですかビステル様?」
今度はブルクハルトさんが困惑した様子で俺にそう質問をしてくる。
彼の質問を聞いた俺は、この間俺が不帰の森に行った事を説明し、何が起きていたのかやそれからのエルフの人達の事について説明した。
ブルクハルトさんが言った言葉に聞いた事も無かった竜車という単語が出てきて、もしかして言葉通りドラゴンが牽く馬車の事かと聞くと、正確にはワイバーンなど空を飛べるモンスターが牽く馬車を竜車だと説明して貰い、俺が不帰の森から帰る時に見たワイバーンらしき影は、ブルクハルトさんだったと判明した。
俺は更に、エルフの人達に信じて貰える様にと一旦席を外すと、誰も見ていない事を確認してクラスチェンジを発動して召喚士になると、アウレオンさんとリエスさんを召喚する。
「お、お呼びになる時はこうなるんですね…。ビックリしました…」
「ここは?」
アウレオンさんは突然の呼び出しに驚いた様子でそう言い、リエスさんは自分がどこにいるのかを質問してくる。
俺はそんな彼らに、合わせたい人達がいるとだけ伝えると部屋へと戻る。
俺が部屋に入り、アウレオンさんとリエスさんが後から入室すると、
「ア、アウレオン!リエス!」
「ウルリ?…ウルリなのか!」
「それに皆も…」
部屋にいたエルフの皆が、驚いて互いの名前を呼んで確認をした後に再会出来た事を喜んで抱き付き始める。
やはり、彼らは革新派の人達だったんだな。
俺がそう思っていると、
「まさか、ビステル様が先にエルフの皆様を保護していたなんて…」
ブルクハルトさんが感動した様な表情で俺の事を見てくる…。
「たまたまだったんですけどね。本当に偶然立ち寄った場所が、不帰の森だったんですよ」
俺がそう説明したにも関わらず、何故か手を若干開いてじりじりと俺に近づいてくるブルクハルトさん。
これ以上は、近づけてはいけないと本能が危険だと判断し、俺は何度も言い訳みたいに説明を口にしながら後退するが、それでもブルクハルトさんは俺に近づいてくると、
「やはり私の目に狂いは無かった~!」
ブルクハルトさんが抱き付く様に俺に飛びかかって来る!?
それを俺は商館の床が壊れない程度の力で床を蹴ると、ブルクハルトさんの抱擁を躱す。
エルフの皆が感動の再会をしている部屋の隅で、男が男に抱き付かれそうになっているというシュールな光景。
しかしそんな奇抜な光景にツッコミを入れる人はおらず、そのまま俺はエルフの皆が落ち着くまで、そしてブルクハルトさんが落ち着くまで部屋を高速で移動し続けた。
そうして少しして部屋にいる皆が落ち着き、改めて俺とアウレオンさんとリエスさんがソファに座り、対面にエルフの人達が座る。
そして彼ら側にブルクハルトさんが椅子を少しだけ移動させて俺の方を向くと、
「ビステル様、今回のエルフの方達のお話は特に料金などは必要ありません。彼らは正式に奴隷にされた訳でも無く、自分達の力で私の元まで来たのです。どうか、彼らを受け入れてはくれないでしょうか?」
そう聞いてくる。
その言葉に俺は、
「料金については、しっかりと払わせてもらいます。確かに俺はあまり裕福とは言えませんが、今は第二級冒険者で報酬金が上がりました。もしエルフの皆様の料金として受け取れないのであれば、俺が貴方の商館に預け、始末してもらった奴らのお礼とその者達の手続きに掛かった手間賃だと思って下さい」
そう言い返すと、ブルクハルトさんは少し黙って考えた後、
「分かりました。では後程、しっかりと精算します」
了承してくれ、ブルクハルトさんは数は少ないけれど荷物があり、それを持ってくると言って部屋を出て行った。
おそらく、その間に俺の方で色々と準備を整えて欲しいと席を外してくれたのだろう。
俺はそう思うと、
「改めて、俺はヴァルダ・ビステルと言います。これからの貴方達の安全は俺が保証しますが、その際に召喚士である俺と契約して貰わなければいけません。それでも構いませんか?」
対面に座っているエルフの人達に視線を合わせる様に首を動かして彼らに視線を送る。
すると、
「とても落ち着く場所だ。少し怖い事もあるが、基本的には安全な場所だ」
アウレオンさんがそう説明をしてくれる。
怖い事って、もしかして島から落ちそうにでもなったのだろうか?
俺がそう思っていると、
「今まで自分達と襲ってくる人族しか知らなかった私達には、とても面白い場所だ」
リエスさんがそう言う。
リエスさんは結構他の人達とも交流しているのだろうか?
俺がそう思っていると、
「構いません。仲間が穏やかな表情でここまで言っている。俺達は道を間違えたが、アウレオンやリエスの言葉は信じる事が出来る。契約をしてください。私は、ウルリと言います」
対面に座っていたエルフの男性が名前を告げ、俺に頭を下げてくる。
それと同時に、対面に座っていた人達も俺に頭を下げてくる光景を見て、
「よろしくお願いします。では早速、契約をしてしまいましょう。時間はあまり掛からないので、すぐに終わりますよ」
俺はそう言うと、本の中の世界を大きくしてページの端を破ると、ウルリさんから仮契約を行い始める。
そうして5人の契約が済んだ俺は、
「これで契約は終わりになります。最後にブルクハルトさんに挨拶をし終えたら、アウレオンさんとリエスさん、セシリアと一緒に塔の紹介をして貰っても良いですか?」
アウレオンさんとリエスさんにそうお願いをすると、2人は反論する事も無く頷いてくれる。
後はブルクハルトさん待ちだな、俺はそう思いながらブルクハルトさんを待ち、少ししてから本当に少しの荷物を持ってブルクハルトさんは部屋へと戻って来た。
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