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恰幅の良い男性が勢いよく、それこそ恋人に駆け寄って抱き付くくらいの勢いで来られるのは予想していなかった。

俺は冷静にそう思いつつ、本能的に反射神経でブルクハルトさんのタックルを華麗に避ける。

その結果、


「うおっとと!ぐへっ!」


ブルクハルトさんは足が追い付かなかったのか、よろけて転んでしまった。

俺はそんな彼の様子に、


「すみませんブルクハルトさん。あまりにも勢いが良くて、つい避けてしまいました」


そう謝罪をしながら彼の元に行くと、


「い、いえいえビステル様。こちらこそ申し訳ありません」


ブルクハルトさんはそう言いながら空笑いをして、女性の手を借りて立ち上がる。

俺はブルクハルトさんがしっかりと立ち上がる姿を確認すると、


「すみませんブルクハルトさん。勝手に色々と押し付けてしまって。こちらに連れて来た人達、どうなりましたか?」


俺はまずここに置いてきた人達の事を質問する。

それを聞いたブルクハルトさんは空笑いをしていた表情を一瞬で真面目な、仕事の表情に切り替えると、


「奴隷商人の伝手で聞きました所、相当厄介な者達だった様で…。すでに彼らは別の場所に移送しています。彼らは今まで虐げていた奴隷よりも酷い、ただの駒として働かされる場所へと送りました。あまり使いたくは無かったですが、あれくらいした者達を落とす為には汚い手を使うしかありませんでした」


そう報告してくれる。

それにしても、あんな状態の彼らが働く事は出来るのだろうか?

俺がそう思っていると、


「ビステル様の心配は分かりますよ。しかし安心してください。動かなくなった者を使う方法も、ありますから」


ブルクハルトさんのその言葉と表情に、相当な残酷な所業が行われるのだろうと思いつつ、


「分かりました。それで、ブルクハルトさんはどうしたんですか、あんなに慌てた様子でしたが」


俺がそう聞く。

俺の言葉を聞いたブルクハルトさんは、


「…ここでは少し話す事が出来ないお話なので、どうぞこちらへ」


こそっと俺にそう言ってくると、商館の奥へと案内してくる。

俺はその言葉に従ってブルクハルトさんの後を追いかけると、いつもの部屋へと案内してくれる。

部屋に入ると、


「少しお待ちください」


ブルクハルトさんがそう言って部屋から出て行ってしまう。

相変わらず忙しそうではあるな。

ブルクハルトさんの様子を思い出しながらそう思いつつ、俺はブルクハルトさんの周りでは何が起きているのか気にしていると、


「お待たせしました。…さ、どうぞ」


ブルクハルトさんが戻って来て部屋の扉を開けたのだが、部屋の外にいるであろう誰かに声を掛ける。

ブルクハルトさんの言葉におそるおそる部屋に入ってきたのは、前にここ、ブルクハルトさんの商館の前にいたフードを深く被っていた人達だ。

衣服は綺麗になっているが、格好自体は変化がなく見てすぐに分かった。

俺がそう思っていると、俺の座っている対面にその人達が座る。

部屋の隅に置いてあった椅子をブルクハルトさんが持ってきて、テーブルの近くに老いてそこに座ると、


「ビステル様、こちらの方達は…」

「お待ちください。私の方から挨拶を」


フードを被った人、声からして男性がブルクハルトさんの言葉を遮ってそう言い、深々と被ったフードをゆっくりと外す。

男性の行動に倣い、他の人達もフードを外していく。

全ての人がフードを外し、俺の目の前にいたのは、


「エルフ…ですか」


金髪や金髪と緑色が混ざった髪、黄緑色をした髪をした男女が座っていた。

しかし見ると、俺に話しかけてきた男性も含めて、少しだけ俺に恐怖している様子が窺える。

彼らと会ってまだ数分程度であるが、彼らに恐れられるような事はしていないはずだ…。

俺がそう思っていると、


「はい、そうです。私を含め、全員がエルフです。…初めまして、私達を助けて貰えないでしょうか?」


男性がそう言って、頭を下げてくる…。

そんな様子と言葉に俺は何がどうなっているのかと理解出来ずに困惑していると、


「私から説明させていただきます。こちらの方達はここ帝都から遠くにあるエルフの森で過ごしていたのですが、森に違法に奴隷商人に売り渡そうとする者達が襲来してきて酷かった様です。エルフの皆様も反撃をしていたらしいのですが、どんどん向こうもエルフの皆様の捕縛に熱が入った様子で、エルフの皆様はどんどん籠城戦になっていたそうです。その時に、彼らは仲間の方達と話し合いをしていたらしいのですが、話し合いは決裂して森に残る方達と森を出る方達で別れ、彼らはエルフの森を出たのですが………。ビステル様も知っての通り、亜人族が人族に虐げられている事をあまり理解していなかったらしく、そのままの格好で街へ行く毎に酷い目にあった様です。本当はもっと多くのエルフの仲間と共にいたらしいのですが、今は皆どうなっているのか…。そんな時に、私の知り合いの奴隷商人の方が彼らを助け、格好をエルフと分からない様にし、私の元に来るように彼らに伝えたのです。彼らが私の元に来た時には、ビステル様も少しですがいらっしゃったので分かりますでしょうけど、その後は彼らに頼まれて特急の竜車に乗って彼らの森に向かいました。しかしそこには誰もおらず、戦いの跡が残っているだけでした。…本当でしたら、私がエルフの皆様を保護し、信用できる人達に託そうと思っていたのですが、残ったのは彼らだけ…。出来れば皆が一緒に過ごせる方が良いだろうと思い、そうなると候補が限られてきまして………。一番私が信頼し、亜人族の事を想い考えてくれるビステル様にお話をしたのです。…ビステル様、彼らの保護をお願い出来ませんでしょうか?」


ブルクハルトさんが彼らの事を詳しく説明してくれたのだが、どこかで聞いた話と同じでまさかなと思ってしまう。

俺はブルクハルトさんの言葉を聞いた後、エルフの人達の事を見ると、


「もしかして、不帰の森に住んでいました?」


そう質問をしてみる。

俺の質問を聞いたエルフの男性が少し驚いた様子で、


「は、はい!知っているのですか?」


そう答えた。


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