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翌朝、そろそろ塔のベッドが恋しく感じつつ目を覚ますと、俺は体の痛みを解しつつ起き上がる。


「おはようございます、ヴァルダ様」


エルヴァンは先に起きていたらしく、寝ているファルシュの様子を見ている。

少ししてファルシュが眠たそうに目を覚ますと、俺とエルヴァンは今日にでも村に戻るつもりで身支度を整える。

その間にファルシュは寝ぼけている状態から脱し、装備を着始める。

後は迎えの人が来るだろうと思い、扉がノックされるのを待つ。

それから少しして扉がノックされると、


「おはようございます。起きていますか?」


扉の向こうから女性の声が聞こえてくる。

俺は扉を開けて外にいる女性に、


「起きてますよ。ハイシェーラさんが呼んでいますか?」


そう聞くと、


「はい、食事もその時に一緒にと言っていました」


女性はそう教えてくれる。


「分かりました。エルヴァン、ファルシュ、行こう」


俺が部屋の中で準備を終えた2人に声を掛けると、


「はい」

「飯!」


エルヴァンは返事をし、ファルシュは朝食に心躍らせて返事をしてきた。

そうして女性に案内されてきた場所は、ハイシェーラさんと共に来た竜人族の皆がモンスターの肉を食べていた広場だった。

広場に来ると見える光景は、広場の中央にどこからか持ってきたであろう石で作られた少し長い長方形のテーブルと椅子が置かれており、ハイシェーラさんは先に席に座っている。

そしてハイシェーラさんの背後の出入り口、俺達とは真反対の方向に竜人族の皆が立っている。

全員がキッチリと並んでおり、統率力の高さが見える。

武器を身に着けているが、殺気立っている訳ではないし飾りや形式としてだろう。

俺はそう思いながら、


「おはようございますハイシェーラ様。座ってもよろしいですか?」


俺は広場の出入り口で挨拶をしつつ質問をすると、


「そんなに畏まる事は無い、昨日の様に普通にして良い」


手で向かいの席に座れと案内をしつつ、彼女はそう言ってくれる。

俺はハイシェーラさんと向かい合う様に置かれている席に座ると、エルヴァンが俺の背後に立つ様に止まり、俺の近くの席に座ろうとしているファルシュを止める。

それを見たハイシェーラさんが、


「後ろの2人も、席に座ってくれ。お前達は客人なのだ」


そう言うと、俺は後ろにいるエルヴァンに、


「ハイシェーラさんがそう言ってくれている。座ってくれ」


そうお願いをすると、エルヴァンはファルシュに席に座って大人しくしている様にと注意をしてから離すと、椅子に座る。

ファルシュも椅子に座ると、


「朝食を摂りつつ、話し合いをしよう。準備を」


ハイシェーラさんがそう言うと、別の出入り口から肉の塊が運ばれて来た…。

これはまた、凄いな…。

俺はそう思いつつ、朝食である肉の塊に視線を送る。

激しく肉が焼けるジュウジュウとした音と、焦げと油の匂いがしてくる…。

お、重い様な気がするんだが…。

俺がそう思っていると、それが近くに置かれて切り分けられ、俺、ハイシェーラさん、エルヴァン、ファルシュの順番で目の前に切り分けられた肉が石の皿の上に乗って置かれる。


「いただこうか」


ハイシェーラさんはそう言うと、口を大きく開いて切り分けられた大きな一枚の肉を一口で食べる…。

怪我がやっと治った人が、食べて良いモノでは無い気がするのだが…。

俺がそう思って心配していると、


「うめぇ~~ッ!!」


ファルシュが喜びの雄叫びを上げる…。


「静かに。これから大事な話をするんだ」


感嘆の声を上げているファルシュにエルヴァンがそう注意をすると、


「そうだな。早く大事な話をして、無邪気に食べている子供の様子を見ながらの食事も悪くない」


ハイシェーラさんはそう言い、


「戦いに勝った君達が、先に自分達の考えなどを言う権利がある」


俺の事を見ながらそう言ってくる。

彼女の言葉に従い、


「分かりました。では俺達がお願いしたい事をお伝えします。それを聞いた上で、ハイシェーラさん達は意見や聞きたい事などを言ってください」


俺は予めそう伝えてから、


「今回の件、俺達は帝都の依頼で貴女達竜人族を兵力として話し合いをして来いと言われましたが、俺はただの駒として扱っている帝都の考えに反感を抱いています。話し合いが決裂した場合は皆殺しなど、俺からすればありえません。故に俺達は、この後帝都に戻った際に依頼の報告には貴女達竜人族は皆殺しにしたと報告するつもりです。今は帝都も状況が錯綜しており、確認の為の騎士達を帝都から離す事が出来ないと思います。もし調査に来る人達がいても、おそらく人数は少数だろうと考えられます。どの程度の実力者が来るかは分かりませんが、霊峰を調査するにも時間が掛かるでしょう。遺跡に辿り着けるかも分からないです。もし遺跡に侵入されたとしても、この遺跡は入り組んでいて簡単に自分達の場所を把握するのは無理でしょうし、皆さんには隠れて貰いたいと思ってはいます」


俺は昨日エルヴァンに話をしてあった事を、ハイシェーラさんと後ろの人達にも聞こえる様に少し大きな声でそう言う。

すると、


「帝都に対しての報告に問題は無い。好きに報告してくれても構わない。しかし後半の話は、受け入れるには難しい事がある。第一に勝手に私達の家に入り込んだ者を撃退する事もなく、ただ姿を現さない様に隠れなければいけないのは無理な事だ。私達は臆病者になった覚えはない」


ハイシェーラさんが俺にそう言い、彼女の後ろにいた竜人族も彼女の言葉に賛同する様に頷いているのが見える。

…そうだな、確かに勝手に家に入り込んできた者を排除する事も無くただ隠れていろなんて、そんな事は言われたくないだろう。

俺は自分の考えを反省し、


「申し訳ありません。先程の話は無かった事にして下さい。その件については、ハイシェーラさん達竜人族の皆様から提案などありますか?正直俺達も嘘がすぐにバレてしまうのは不味い状態なので、皆さんが帝都の者に見つからなければ良いのですが、…」


自分の先程の無礼を詫び、彼女達に何か良い策は無いかと質問する。

その問いにハイシェーラさんは、


「1つ問おう。ヴァルダよ、貴様は私達が欲しいと思っているのに何故それを口にしないのだ?」


そんな事を聞いてきた…。


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