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竜人族に案内された広場には、既に自分達の力に自信がありそうな竜人族が闘志を漲らせて立っている姿が見える。

こんな場所もあったんだな。

俺は広場の壁を見ると、そこには遺跡では普通にあった彫られた模様などは無く、粗く削られた壁が見える。

どうやらこの空間は遺跡とは別の、おそらく竜人族達が創り上げた場所なんだろう。

俺がそう思っていると、エルヴァンの大剣を運んでくる人達が俺達の元にやって来る。


「預かっていた剣だ。返そう」


1人の竜人がそう言うと、エルヴァンはそれを片手で持ち上げる。

その様子を見ていた竜人族達が、驚いた様子でエルヴァンの事を見る。

広場に集まっていた実力者達も、流石に仲間達が複数人で持っていた物を片手で持ち上げたエルヴァンの様子に、少し緊張や警戒心が強くなった様に見える。


「傷などは大丈夫そうだ。しっかりと預かっていてくれたのだろう、問題は無い」


俺は、大剣が大丈夫だろうかと心配していたエルヴァンにそう言うと、


「良かったです」


エルヴァンは安心した声を出す。

すると、少し離れた所から軽い衝撃音が聞こえる。

どうやら、ハイシェーラさんがやって来た様だ。

俺がそう思ってそちらに視線を向けた時、俺はある事に気がついた。

ハイシェーラさんの体にあった傷痕などが、綺麗になっている事に。

まだ少し残っているが、それでも初めて彼女の姿を間近で見た時よりも傷ついていた肌が元通りになっている。

翼もまだ傷ついているが、おそらく時間を掛ければ治るだろう。

それだけ、彼女が受けたダメージがデカかったのだ。

俺がそう思っていると、


「これより、我ら竜人族に伝わる儀式を始める。…今回は竜人族では無い者もいるが、それに異議がある者はいるか?」


ハイシェーラさんが、凛ッとした声でそう言葉を発する。

特別、大きい声を出している訳では無い。

しかしその耳にスッと入ってくる様な声に、少し騒がしかった広場の者達も静かになって彼女の言葉に耳を傾ける。

彼女の言葉に声を出す者はおらず、ハイシェーラさんは広場にいる仲間の顔を1人1人見ていくと、


「では始めるとするか。客人も、広場の方へ」


ハイシェーラさんが俺とエルヴァンにそう言ってくる。

一緒に来ていたファルシュは、


「ズルいけど、オレもここじゃ足手まといだ。大人しくしてる」


俺とエルヴァンの事を掌で軽くぽんっと叩くと、広場から離れた壁際に移動する。

それを見た俺とエルヴァンは、


「エルヴァン、行くぞ」

「はい、ヴァルダ様」


互いにそう声を掛け合うと、竜人族の中に入り込む。

俺とエルヴァンが近くに来た事により、周りの竜人族が武器の柄に手を伸ばすのが見える。

少しして、


「では、始めッ!」


ハイシェーラさんの言葉と同時に、周りの竜人族が一斉に武器を抜き放って俺とエルヴァンに襲いかかる!


「エルヴァン、殺さない程度に、しかし俺達の力を示す様に戦うぞ!」


俺は腰に下げていた剣の柄を抜くと、エルヴァンにそう指示を出す。

俺の指示を聞いたエルヴァンは、


「分かりました、ヴァルダ様」


そう返事をして片手で握っていた大剣を一度大きく振るうと、突風が発生して俺達に向かってきた竜人族の人達の足が止まる。

その瞬間、エルヴァンは一気に踏み込むと身近にいた1人の竜人族に大剣を振り下ろす!

俺はエルヴァンより少し遅れて身近にいた竜人族に、剣を軽く振り下ろす。

エルヴァンの時は竜人族が持っていた剣を両手で押さえる様にエルヴァンの大剣の振り下ろしを受け止め、俺の目の前の竜人族は俺の振り下ろしを受け流そうと剣を構えて俺の剣を一瞬受け止めようとするが、竜人族は俺の力を見誤ってしまっている所為で、剣同士が衝突した瞬間甲高い音と同時に竜人の男性が握っていた剣が折れてしまった。

折れてしまった剣を、竜人の男性は少し呆気にとられた様子で見た後に今は戦闘中だという事を思い出したのか、今度は自身の腕を前に出して爪を鋭くさせる。

…まるで、ファルシュの爪みたいだな。

俺はそう思いながら、相手が剣を握っていないのに斬りかかるのは相手を傷つけてしまうと考え、腰に下げていた剣の鞘を構える。


「ガァッッ!!」


俺が剣の鞘を構えたと同時に、鋭く尖った爪で刺突してこようとする竜人の男性。

しかし、


「すみません!」


俺はそんな男性の突き出した爪による刺突を躱すと、男性の腕を鞘で殴る!

硬いモノに当たる感覚に続いて、微かな肉質の柔軟さが鞘を通して手に伝わって来る。

しかしここで手を止める訳にもいかず、俺は痛みで身を引こうとした男性を逃すまいと踏み出し、痛みで手を庇う仕草をする竜人の男性の腹部に鞘を突き出して攻撃し、苦悶の表情で男性が地に伏せる。

…エルヴァンみたいに、豪快な戦い方は俺には出来ないな…。

俺はそう思いながら、未だに感覚を開けてやって来る風と衝撃のする方に目を向ける。

俺が視線を向けると、3人の竜人の男性達がエルヴァンに斬りかかるが、


「フンッ!」


エルヴァンはそれを大剣の横薙ぎで発生させる衝撃波で吹き飛ばす。

それに続いて他の竜人が攻撃を仕掛けるが、エルヴァンはそれを剣で受け止めると大剣を振るって竜人の男性の体ごと仲間達の元へ吹き飛ばしていく。

仲間が勢いよく自分達の元に吹き飛ばされ、それを支えようとしてかそれとお痛みや起き上がる前でなのか分からないが竜人族達は衝突し、悲鳴が上がっている。

………だ、大丈夫だろうか?

さっき戦った感じ、他の人に比べれば竜人族の人達は硬いから多少なら大丈夫だとは思っているが、あれは流石に大怪我をしてしまうのではないか?

俺はそう思いつつ、


「ハァッ!」


まだ若い竜人族の青年が斬りかかってくるのを受け止めると、つばぜり合いになる。

しかし武器の鋭さと頑丈さに差がある所為で青年の剣にヒビが入ると、青年は慌てた様子でつばぜり合いを止めて俺から距離を取る。

俺はそんな青年を見ながら、戦いながらも武器の様子を見て周りに視線を送って状況を観察している。

冷静な戦い方だ。

青年が冷静に戦う姿に、俺は武器を握る手に力を込めた。


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