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ハイシェーラさんの後ろを歩いていると、俺は彼女の背中が気になってしまう。

飛膜が損傷している翼が生えている背中にも傷があり、鱗が僅かに剥がれてしまっている部分がある。

あれでは寝る時に引っかかって痛いのではないだろうか?

俺がそう思っていると、


「見えているモノが、必ずしも真実ではない」


ハイシェーラさんが、前を向いたままそう言ってきた。

その言葉に、俺はどういう意味で今の発言をしたのだろうかと考える。

そう思いつつも前を歩いているハイシェーラさんの後を付いて行くと、まず案内してもらったのはこじんまりとした一室であった。

何やら台座の様な物が置かれており、そこにはすでに枯れ果てて一部が塵になっている植物が置かれている。


「ここは?」


俺が隣にいるハイシェーラさんにそう聞くと、


「先程の話の続きだ。ここに神は座っていた…らしい」


ハイシェーラさんがそう言ってくる。

それを聞いた俺は、こんな狭い場所に神がいたのかと、少し神に対する疑問が浮かんでくる。


「私も実際に見た訳では無い。故に確証は持てないが、壁に書いてある絵が彫られた模様から読み解いたに過ぎない」


俺の心を読み取ったのであろうハイシェーラさんが、俺の思っている疑問にそう言ってくる。

しかしそれでも、俺はまだ疑問に思っている事がある。


「神は何故、この世界に肉体を持っているんですか?普通の神であるなら、体は存在せずに言うなれば空よりも遥か高みで俺達を見下ろしているはずでは?」


俺がそう聞くと、


「…神は遊んでいるのであろうな。この世界に自分を誕生させ、自分を取り合う人々を見ていたかったんだろう」


ハイシェーラさんがそう言って、小部屋の壁の隅を指差す。

小暗い部屋の為見辛く、俺は顔を近づけてよく見てみると、


「…人々が争っている絵。この背中に輪みたいなモノを背負っているのが、もしかして…」


棒状の物を握って、左右から中央に向けて進んでいこうとしている人達の絵が彫られていた。

そしてその中央の少し上部分に、人型でありながら背中に大きめの輪が彫られている人がいる。


「それが、おそらくこの遺跡を創った者達から見た神なんだろうな」


俺の言葉に、ハイシェーラさんが続きを言う。


「面白いだろう。この石に刻まれている絵は、部屋の至る所に描かれている。途中からは、人型に多少の変化が出始める。おそらくお前の好んでいる、私達亜人族だろう」


ハイシェーラさんはそう言って、部屋を一周見回すと、


「ここから読み取れるのは、神が世界に降り立ったのは遥か昔の事。それからは神に好かれようと多くの命が失われていき、神はそれが楽しく面白い祭りの様なモノだと思っている。お前が今まで見てきた亜人族差別も、それの延長でしかないのだろう」


ハイシェーラさんはそう言う。

その言葉に俺は、またもや疑問に感じた。

ジーグの洞窟で出会ったフランメさんは、ハイシェーラさんとは少し違う事を言っていた気がする。

俺は感じた疑問に意識を向けようとして、


「興味深い話ではあります…。しかし、俺のやる事は決まっています。これ以上そんなくだらない神の話なんて聞いても時間の無駄です。俺は貴女を、そして貴方達竜人族の事の方がもっと詳しく知りたいです」


この世界の神が行った行為に時間を割くのは時間の無駄だと思い、ハイシェーラさんにそう言う。

それを聞いたハイシェーラさんは、呆けた様な表情で口を僅かに開けている。

すると、


「では、この遺跡の事と同時に私達がここへ移り住んだ事を説明するとしようか」


ハイシェーラさんは小部屋の出入り口に行くと、俺にそう言って部屋に出るぞと案内をしてくる。

俺はそんな彼女に従って小部屋を出ると、遺跡の中を歩き進める。

そこで俺は今までハイシェーラさんの背中などに気になっていて見えていなかったが、彼女の歩いている姿に違和感を感じた。

歩いている様子ではあるのだが、あまりにも歩き姿がブレていない。

まるで、空中に浮いていて脚を歩いている様に動かしているだけなのではないかと思わせる程、彼女の体は左右などに僅かなズレなども感じさせずに淡々と前に突き進む。

俺がそう思っていると、小部屋から少し離れた位置で僅かな賑わっている声が聞こえてくる。

それと同時に何やら肉の様なモノを焼いている、少し焦げた様な匂いがしてくる。

通路を抜けるとそこには、様々な通路から集まる事が出来る様な構造の部屋へと来た。

結構な人数がいられるであろう広い空間、そこから移動しやすい様に階段がありその先には通路がある。

面白い造りではあるが、これ案内の人がいないと迷ってしまうんじゃないか?

俺がそう思っていると、広場と言っても良い程広い空間の真ん中で何かのモンスターを、竜人族の男性2人が口から火を出して燃やしている。

これが、焦げている様な匂いの原因か。

少し遠目でハッキリとは見えないが、結構な勢いで燃やし続けられているモンスターの様なモノは、赤々とした炎の中で真っ黒になっている。


「ここではモンスターどころか、生物が私達以外には存在しない。それ故、毎日決まった人達がここから離れた場所まで飛んで狩りに行っているのだ」


俺が下の調理?風景を眺めていると、ハイシェーラさんがそう教えてくれる。

彼女の言葉に、俺が先程言った竜人族の事が知りたいという要望に答えようとしてくれているのを感じ、


「結構大変なんじゃ?俺もこの山の麓の村までゆっくりと来ましたが、あまり大きなモンスターはいなかったですよ」


彼女の言葉に食いついてそう言う。

俺の言葉を聞いたハイシェーラさんは、まるで何かを懐かしむ様な声色で、


「それは、私達が狩り過ぎた所為でモンスター達が近寄らなくなったのだ」


そんな事を言ってきた…。

彼女のその言葉に、俺は納得してしまう。

相手が竜人族であるなら、並大抵のモンスターでは歯が立たない。

流石のモンスター達も本能でそれを感じ取ったのであろう。

俺がそう思っている内に、竜人族達は調理が終わったのであろう焼いていたモンスターの肉を乱雑に切り分け、皆でそれを食べ始めた。


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