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そうして話はトントン拍子で進んでいき、明日の昼に竜人族の人達と俺とエルヴァンが戦う事になった。

一応客人として遺跡に入れて貰える事になり、俺達は1人の竜人の男性に案内してもらって遺跡の奥へと進んでいく。

遺跡の中は面白く、山に建てられただけあって階段が多く、階段の交差点みたいな場所すらある状態だ。

長く大きい階段には、横に扉がありそこに入って行く竜人達もいて、おそらく大きなスペースがあるのだろう。

俺がそう思っていると、


「申し訳ありませんヴァルダ様。結局、私は何も出来ずにヴァルダ様に任せてしまいました」


後ろからエルヴァンが反省の言葉を言ってくる。

俺は反省にしているエルヴァンに、


「今回は仕方がないと思う。竜人族の長、ハイシェーラさんは心を読み取ったと言っていた。ならば、エルヴァンが俺の配下の者である事は見透かされていただろう。それを理解してくれた故か、明日の戦いにエルヴァンも参加する事が許可されたんだからな」


俺は今回の話し合いに関して、隠し事などは一切通用しない相手だった事を認めて相手が悪かったと伝える。

それを聞いたエルヴァンは、


「剣は大切に扱っているでしょうか?」


明日の戦いまで没収されてしまったエルヴァンの大剣の事を心配している。

それにエルヴァンは自分の力や戦いの技術を高める為に素振りや、仮想の敵と戦う訓練をしている。

それが出来なくなるのが心配なんだろう。

幸いに、俺の装備は大して問題視されなかった故に没収されなかった。

今は案内をしてくれる前の竜人族に聞かれる訳にもいかないので黙っておくが、必要になったら仮の武器くらいは出してあげようと思う。

俺はそう考えながら、


「彼らの武器はしっかりと手入れをされている。それに複数人で運ばないといけない大剣だ、そう変に扱ったりしないだろう」


エルヴァンが少しでも安心できる様に声を掛ける。

ファルシュも遺跡に入ってから、体調が安定したのか普通に歩いている。

そうして遺跡の奥までやって来ると、


「ここだ、入れ」


案内をしてくれた竜人がそう言って扉を開ける。

部屋の中は結構掃除されており、必要最低限の家具も置いてある。

石を加工したであろうテーブルと椅子、長方形に整えられている石のベッド、窓は無いが壁に手の平サイズの穴が何個も空いており、外の様子が確認できる。


「明日の昼前にはここにいる様に。それを守れるなら、後は仲間達に迷惑を掛けなければ自由にして良いと御婆様が言っていた」

「そうなんですか、分かりました。案内、ありがとうございます」


部屋に案内にしてくれた竜人の男性の言葉を聞き、俺は感謝の言葉を伝えると男性は軽く頭を下げた後行ってしまった。

すると、


「ファルシュ、楽になったからと言って動き回るのは良くない。もう少し安静にしていろ」


エルヴァンが部屋の内装が気になって動き回っているファルシュにそう言う。

それを聞いたファルシュは、エルヴァンのそんな言葉に嫌だと言って長方形の石の上に上る。

ファルシュのそんな様子に、エルヴァンは元気が無い時よりかは良いだろうと判断したのか、ファルシュが危ない事をしない様に見張っている。

俺はそんな2人の様子を見て安心して、


「少し周りを見てくる。大丈夫か?」


エルヴァンにそう聞くと、


「はい。ファルシュは私が見張っておきますのでご安心ください」


エルヴァンがそう言ってくれる。

その言葉を聞いたファルシュがエルヴァンに少し文句を言っていたが、俺はそんな2人の邪魔をしない様にそそくさと部屋を出た。

部屋を出ると、俺は来た道を戻る。

遺跡の中は普通の遺跡にしか見えないが、やはり俺が今まで見てきた物とは全然違う事だけは分かる。

ここが元々どういった遺跡なのかは分からないが、おそらくただの古い住居って訳では無いだろう。

遺跡の壁には精巧な細工が浮き彫りにされており、ここには神聖な何かを奉っていた様に感じさせる。

風化の所為で所々色が剥げているが絵も描かれていた様で、微かにだが人が座り込み崇めている様な絵があるし、それの続きもあったのだろう。

今は、何も見えないが…。

俺がそう思っていると、軽い衝撃音が隣で聞こえる。

慌ててそちらに視線を送ると、


「ハイシェーラ…さん?」


先程話をしたハイシェーラさんが、俺が今見ていた壁に視線を送る。

視線と言っても、瞳は閉じたままだが…。


「驚かせた様ですまない。…ここは私達竜人族が住む前は、神を奉り、そして封じていた場所なのだ」


俺がそう思っていると、ハイシェーラさんがそんな事を言ってくる。

奉り、封じていた場所?

俺がハイシェーラさんの言葉に疑問を感じていると、


「…神は意外に俗物だ。自分の気に入ったモノを優遇し、自分で創り上げたモノを駒として、道具として弄ぶ」


ハイシェーラさんがそう言う。

そんな彼女の事を改めてよく見る。

他の竜人族の人達はハイシェーラさんの事を御婆様と呼んでいたが、間近で見ても御婆様と呼ばれる様な姿はしていない。

見た目は人でいう30代くらいだろうし、瞳を閉じていつつも向けてくる表情には視線を感じさせる、神秘的な女性だ。

しかしこの距離で見れば分かる、彼女の翼が傷だらけである事を。

折り畳まれている故に詳細は分からないが、飛膜が見える部分はボロボロとも言っていい程損傷している。

これでは、飛ぶ事は…。

俺がそう思っていると、


「………不思議な男だ。理解し難いモノに魅入られているにも関わらず、中身は意外にも素直。…いや、信頼しようとしている故の素直さか…」


ハイシェーラさんが、おそらく俺の心配を読み取ってそう言ってくる。

俺はそんな彼女に、


「…この遺跡の事を知りたい、ここに住んでいる竜人族の事も、貴女の事も知りたい。教えて貰えませんか?」


俺はそうお願いをする。

それを聞いたハイシェーラさんは、


「…面白い者だ。良いだろう、族長自ら案内してやろう」


微かに笑ってそう言うと彼女は歩き出し、俺は彼女の後を追いかけた。


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