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竜人達の言い合いを、気まずい思いで聞き口を挿まない様にしていた俺達は、やがて地面に座って彼らがどうするのか行く末を待つ事にした。
エルヴァンはまだ少し辛そうなファルシュを気遣っており、俺は言い合いをしている竜人達の様子などを観察する。
…レオノーラさんと違って、気品とかは特別感じたりしないな。
失礼な事を思ってしまうが、普通な感じの人達だ。
俺はそう思いながら、彼らの様子を更に見る。
レオノーラさんと違って、服装が民族衣装の様に少し衣装の露出が激しい。
人と同じ形体ではあるが肌などは完全に人とはかけ離れており、鱗が目立っている。
鱗の色合いもそれぞれが違い、赤色の人が2人とやや青色の目立つ人。
互いを尊重している訳でも無さそうで、自分自身が3人の中では上の立場であると意見を譲る事をしていないし、3人共喧嘩腰だ。
…レオノーラさんが女性だから気品も、心遣いも出来ていたのだろうか?
彼女は戦う時以外は人と同じ様な姿になるが、彼らは翼は普通に出しているし尻尾もある。
互いの主張に怒っているのかイライラしているのか、太く逞しい尻尾が地面を何度も叩いている。
結構、色々な人がいるんだな…。
俺はそう思いながら、未だに言い合いをしている竜人達の様子を眺めていた。
それから少ししてようやく話が終わった竜人達は、増援を呼んでくるという事になり2人が俺達を見張り続け、1人が遺跡の方へと飛んで行った。
少しして遺跡の方から複数の人が飛んでくるのが見えると、
「これを頼む!人数がいないとおそらく持ち上げられない」
竜人達を呼びに行った人が、飛びながらエルヴァンの大剣を指差してそう言う。
それを聞いた増援の竜人達は、俺達に一度視線を向けてくるが何かを言う訳でも無く他の竜人達と協力して大剣を持ち上げる事に成功すると、飛び立ち始める。
それを見ていると、
「お前らも行くぞ」
俺達の見張っていた男性がそう言い、俺とエルヴァンは彼らに付いて行く、
遺跡までは少し遠く、先頭を歩いているのは6人でエルヴァンの大剣を持ち上げている人達だ。
彼らは足場が悪い場所でもバランスを崩す事無く歩き、エルヴァンの大剣をしっかりと運んでくれている。
そんな彼らの後ろに、俺達が歩いているのだが見張りが3人、俺の前を1人が歩いており、エルヴァンの斜め後ろに2人がいる。
3人共俺とエルヴァンの事を注視しており、武器に手を添えている状態で歩いている。
結構な人数になったなと、俺は歩きながらそう思う。
そう思って歩いている内に竜人達の住んでいるであろう遺跡までやって来ると、
「御婆様、連れて参りました」
エルヴァンの大剣を持っていた人達が脇に逸れ、先頭を歩いていた人がそう言って頭を垂れる。
見ると、遺跡の上部に立っている女性が見える。
瞳を閉じて、翼を広げている女性。
呼ばれた御婆様と言われるには、まだ年齢がそこまで上では無いだろうと思ってしまうのだが…。
俺がそう思っていると、
「………悪き者達とは言い切れない…が、良き者達とも言い難い」
女性はそう言う。
その言葉と同時に、俺達と一緒に来た竜人達がどよめく。
この場合、勝手に挨拶しても良いのだろうか?
俺がそう思っていると、
「挨拶など不要。私が貴様達に話しかけているのは、私の話を素直に受け取らないだろうと理解しての配慮。それ以外の言葉などいらん」
女性が瞳を閉じてはいるが、顔はしっかりと俺の事を捉えてそう言ってくる。
俺の考えを読み取ったという事か?
「如何にも。私はここの族長を務めるハイシェーラ」
竜人達を治める女性、ハイシェーラさんが自己紹介をしてくる。
俺はそんな彼女に、
「初めましてハイシェーラ様。私は人族の都、帝都からの要望をお伝えに来た彼、エルヴァンの補佐で来たヴァルダ・ビステルと申します。そしてエルヴァンの肩に乗っているのはファルシュと言います。この慣れない場所で体調を崩してしまい、この様な挨拶となって申し訳ないです」
必要がないにしても、これが礼儀だと思いしっかりと自己紹介をしつつ挨拶をする。
俺の言葉を聞いた竜人達はまたどよめき、
「嘘は言わない…か。それにしても帝都とは、またふざけた所から来たものよ」
ハイシェーラさんは、少し怒りを感じさせる声でそう言った。
遠く離れたここでも、流石に帝都の悪評は伝わっているのだろう。
それ程までに、嫌な場所だからな。
俺がそう思っていると、
「………話は聞かなくても、心を読み取り理解した。私達の答えは、帝都には従うつもりは無い」
ハイシェーラさんがそう言ってくる。
帝都の申し出は断られた、帝都からの断られた際の手は…。
「私達を皆殺しにせよと言われているのだろう」
俺が思い出す前に、ハイシェーラさんが真実を述べる。
彼女の言葉に、周りにいた竜人達が一気に武器を抜き俺達に向けてくる。
すると、
「止めておけ。お前達は気づかなかっただろうが、そこの鎧の纏っている者よりも危険なのは今話をしている銀髪の男の方だ。…理解し難い…いや、本能で理解してはいけないモノに魅入られている」
ハイシェーラさんがそう言ってくる。
………。
「帝都からの指示は確かにそうです。が、私も含めてエルヴァンも貴方達とは敵対したいとは思っていません。話し合いでは、竜人の皆さんとは友好的な関係を築けないでしょうか?」
俺がそう聞くと、
「族長としての意見では、私はヴァルダと言ったか?貴様の要求に答える自体は悪い事では無いと思っている」
ハイシェーラさんはそう答えてくれる。
竜人達の長であるからもっと頑固と言うか、協力するくらいなら力で示せとか言って来そうなイメージだったが、どうやら俺の思い過ごしの様だ。
俺がそう思っていると、
「しかしそれでは、私は良くても貴様達の実力が分からない者達は不満に思うだろう。どうだろうか、ここは一回私達竜人族を従えるつもりで戦ってみるのは?」
ハイシェーラさんがそんな事を言ってくる…。
その言葉と同時に、周りにいた竜人達が剣を高く突き上げて雄叫びを発する。
…結局、俺が考えていた竜人達のイメージのままだった様だ…。
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