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俺とお爺さんお婆さんが全ての掃除を終えると、お爺さん達は頑張って下さいと言って拠点を後にした。
俺はお爺さん達を見送り、ある程度距離が離れると拠点に入り、
「とりあえず、最低限の荷物は出しておくか」
俺はそう言って、装備などや食料をアイテム袋から取り出していく。
そうして空き家を拠点として使える様に準備している内に夕方になり、
「ただいま帰りました」
エルヴァンとファルシュが帰って来た。
「おかえり。食事をしつつ、エルヴァン達の得た情報を教えて、明日からの準備に備えよう」
「はい」
「飯だ飯だ!」
俺がそう言うと、エルヴァンは背負っていた大剣を壁に立て掛け、ファルシュは羽織っていたモンスターの毛皮を脱ぎ捨てる。
俺はそんな2人が落ち着くと、
「今回は塔の食事にしよう。流石に何日も干し肉や簡素なスープでは力が出ない」
俺はそう言って、アイテム袋から塔の食事を数種類出す。
それを見たエルヴァンは、
「…久しぶりです」
感慨深そうにそう言う。
それとは反対に、
「何だこれッ!?美味そうだけど怖え!」
ファルシュは嬉しそうな声を出しつつ、塔の食事に少し顔を近づけて匂いを嗅ぎまじまじと見ている。
それからファルシュとエルヴァンに食事を選ばせて、最後に俺が残った食事を食べ始める。
エルヴァンは俺に先に選んで欲しそうではあったが、俺は塔の食事は普段から食べていると説得して先に選んでもらった。
エルヴァンは少しゆっくりと食べており、ファルシュは最初の一口は少し怯えながら食べたのだが、それからは喉に詰まらせてしまうのではないかと心配してしまう程勢いよく食べていた。
そうして食事は済ませた後俺とエルヴァンは、
「道は特に無く、霊峰まではそのまま歩いて行けば良いかと。霊峰も植物などは生えておらず、モンスターなどの生物も気配を感じなかったです。岩山で、剥き出しの大地が複雑に盛り上がっている様に見えました」
「なるほど。………最初は空から行こうと思っていたが、それでは竜人達に失礼だと思ってな、足を使って山を進み、彼らに気づいて貰おうと今は思っている」
明日の作戦を練っていた。
エルヴァンが見た情報を聞き、俺はとりあえずひたすら向こうが気づくまで歩き続ける案を提案する。
それを聞いたエルヴァンが特に反対意見を出さずにいると、
「それじゃあいつになるか分からねえよ!もっとさっさとやった方が良いだろ?」
ファルシュが拠点の床をゴロゴロしながらそう言ってくる。
そんなファルシュの意見に、
「あまり急ぎ過ぎて、彼らに悪い印象を持たせたくない。大事な事には時間を掛けるのも必要だ」
俺がそう言うと、
「よく分かんない!」
ファルシュはそう言って怒った様子でゴロゴロを再開する。
俺はそんな様子を見ながら、
「とりあえず霊峰で数日泊まる事を考えて、荷物は準備した方が良いだろう」
エルヴァンにそう言い、俺の言葉に対して同意をしてくれる。
そうして必要な物は俺がアイテム袋に収納してしまうと言い、必要な物を袋へと仕舞っていく。
エルヴァンはゴロゴロしているファルシュの元へ行くと、落ち着いて寝る様に言い聞かせながら布を掛けようとしている。
ファルシュも最初はまだ寝ないし、それくらい自分で出来ると言っていたのだが、エルヴァンの圧に負けて素直に大人しく布を掛けて貰い、少しして穏やかな寝息を立てていた。
そんな様子を見た俺とエルヴァンも明日の為に早めに寝ようと言い、エルヴァンは壁に背を預けて眠る姿勢になり、俺もファルシュと同じ様に床に敷いた布の上に横になった。
エルヴァンの寝ている姿は、それでちゃんと寝れているのかと心配してしまうが、それを言って彼の眠りを妨げるのは駄目だと思い何も言わずに寝始める。
翌朝早朝、俺は目を覚ますとクッション性が無い床で寝た事を後悔した。
体が凝り、色々と痛みすら感じる。
そんな俺とは反対に、同じ条件で寝ていたファルシュは大した様子を見せずに体を伸ばしたりしている。
俺はそんなファルシュに対して、
「体は痛くないのか?俺は慣れていない所為で動くのも辛い」
そう言って、肩を回す為に腕を動かす。
俺の言葉を聞いたファルシュはそんな俺を笑い、
「オレはもっと硬い場所で寝てたからな!石の床で寝てた事もある!」
相変わらず闇深い過去をさらりと言ってくる。
…この子にはマジで、どこに住んでいたのかとか聞かないといけない事があるな。
俺はそう思いつつ体を動かし、体の凝りを解してから動き始める。
朝は保存食などを食べながら霊峰へと向かい、あまり時間は掛からずに霊峰まで到着する事が出来た。
霊峰に辿り着くとその壮大な、威厳を感じさせる岩山の様子に俺は凄いとしか感じる事が出来ない。
沢山の言葉の感想は無粋だと思わせる霊峰の姿に、
「…ここに住んでいる竜人達も、おそらく威厳がある人達なんだろうな」
そう漏らす。
そうして俺達は霊峰の地肌が緩やかな場所から登り始めた。
霊峰を登り始めると、それと同時に谷の様に深い亀裂がある事が分かる。
よく崩れないな。
俺はそう思いながら歩き続けるが、人の気配は全くしない。
俺の気配察知のスキルも有効範囲があるが、その中に入らないという事は山頂に近い場所に住んでいるのだろうか?
俺がそう思っていると、
「ファルシュ、辛くなったら言うのだぞ」
「歩き辛いからな、素直に言う」
エルヴァンがファルシュを気遣ってそう言い、ファルシュも素直に返事をする。
俺はそんな2人を見て、
「もっと上に近い場所まで行かないといけないかもしれない。ファルシュもそうだが、エルヴァンも何か異変を感じたら言うんだぞ」
俺がそう言うと、エルヴァンは正直に分かりましたと返事をした。
それからは黙々と霊峰の岩肌を歩き続け、ファルシュの様子が辛そうになり始めて一回休憩する事にした。
丁度良さそうな岩に座らせて、俺はアイテム袋から水を取り出す。
俺から水を受け取ったファルシュは、少し恥ずかしそうに礼を言ってから水を飲み始める。
そんなファルシュを見ながら、
「目印などが無いから、せめて降らない様にしないとな」
「はい、もしくは自分達で目印を作るしかありませんね」
俺とエルヴァンはそう相談し合う。
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