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冒険者ギルドを出た後、俺は街の外で薬草の採取に来ていた。

薬草はハートの形をした分かりやすい葉をしているので、わざわざ錬金術師アルケミストにならなくても大丈夫だ。

俺は薬草を取りながら、今後の事を考える。

とりあえず、お金をある程度稼がなければどうする事も出来ない。

本の中の世界(ワールドブック)の中でなら生活は出来るが、倉庫に入っている食料も無限では無い。

必ず無くなってしまう。

今やらなければいけない事はお金を稼ぐ事。

それと他のプレイヤーがこちらの世界に来ているのか情報を集める事だ。

そしてこれからやるべき事は、出来る限り理不尽な理由で奴隷にされた亜人の保護だな。

…そう言えばシュリエルは、種族が亜人種だった気がする…。

もし、シュリエルがこちらの世界に来ているのなら、助けないといけない可能性がある。

あいつは錬金術師アルケミストしかレベルを上げていない。

対抗する手段が無いという事は、捕まってしまう可能性が十分にある。

いや、シュリエルがログアウトしたのは俺も確認した。

あいつがこっちの世界に来ている可能性はない…と思う。

……こういう時は最悪の可能性を考えて行動した方が良いな。

もしシュリエルが来ていないのなら、それでよかったで済む。

捕まってしまっていても、対策を講じていたら何とかなるはずだ。

だが、どうすれば良い?


「う~ん…」


俺は唸る様な声を出しながら考える。

勿論、薬草を見つけたら摘む作業もしっかりとしている。

奴隷商人になってしまうか?

いや俺に商人は出来ないな、そっちの知識なんて無いし。

奴隷を手に入れるのは国の決まり事、つまりそれは違法では無い。

だが、貴族だけが入れる闇オークションが存在する。

闇オークションの存在する理由はなんだ?

ただの亜人ではないという事か?

シェーファの様なエルフの上位種で、亜人の中では希少種の様な亜人が対象なのか?

わ、分からない事だらけだ…。

……ブルクハルトさんでも手を出しにくい程高額の奴隷か、見てみたいし出来る事なら本の中の世界(ワールドブック)にお迎えしたいな。

…貴族になる方法とかないのか?

俺がそう思うと同時に、依頼された数の薬草が揃う。


「さて、次は木材か。…本の中の世界(ワールドブック)にも必要だから、多めに取るかな」


俺はそう呟き、少し距離がある森へと移動を開始する。

その後、俺は森の木を程よく回収した後街へ帰ってきた。

街に着いた時にはすでに暗くなっており、今街は昼間の仕事が終わった人達が店でご飯を食べている。

街の道に明かりは少なく、俺の外見も今はそこまで目立っていないのが救いだ。

また難癖を付けられて騒動になるのは、とても面倒くさい。

そう思っている内に冒険者ギルドに着き、中に入ると昼間いたリタと名乗っていた女性を探すが、見当たらない。

昼と夜では働いている人が違うという事か。

俺はそう思い、眠そうに欠伸をしている受付をしている男性に声を掛けて依頼の報酬を手にした。

合計で30銀貨だったが、これっていくらなん?

何円とかの通貨に慣れてる所為で、どれだけ稼げたのか分からないな…。

俺がそう思いながら、今日は色々と疲れたからふかふかのベッドで眠りたいと思い、本の中の世界(ワールドブック)へと帰還する。

塔の自室に帰還をすると、装備を脱いでラフな格好をする。

はぁ~、装備着けてるのも意外に疲れるな。

俺がそう思いながら椅子に座ると、


「おかえりさないませ、ヴァルダ様」


相変わらず音も無く現れるセシリア。

白を基調としたゴスロリ服を着ているが、動きにくかったりするのかな?


「あぁ。ただいまセシリア」


俺がそう言うと、セシリアが近づいて来て、


「お疲れですか?」


そう聞いてくる。


「あぁ、肉体的な疲れは言う程ではないが、初めての事が多くて頭がパンクしてしまいそうだ」


俺がセシリアの言葉にそう返すと、セシリアは床に女の子座りの様に座って俺の足元に移動してくる…。

どうやって動いたの?

俺が今見たありえない移動の仕方にそう思っていると、


「ヴァルダ様は頭を撫でる事が好きでしたよね?」


足元から少しずれて横に移動してきたセシリアが、そう言って頭を俺に差し出してくる。

…。


「…良いのか?」


俺がそう問うと、


「はい」


セシリアがコクンと頷いて返事をする。

俺はセシリアの返事を聞いて、ゆっくりと彼女の頭に手を乗せて撫でる。

あぁ~、サラサラの髪が気持ち良い~。

癒されるわ~。

俺は緩みそうになる顔をギリギリの所で耐えながら、セシリアの髪の感触を楽しむ。

それから少しセシリアの頭を撫でていると、


コンコン


自室の扉がノックされる。

…正直、セシリアの髪を楽しんでいたいがそういう訳にもいかないだろう。


「入れ」


俺がそう出来る限り真面目な声でそう言うと、


「失礼しますヴァルダ様、帰って来られたのを確認しましたので、お出迎えに…な゛ぁッッ!!」


シェーファが扉を開けて頭を下げつつそう挨拶をしてくるのだが、頭を上げて俺とセシリアを見た瞬間驚愕の表情で変な声を出した。


「…セシリア?いつからヴァルダ様の部屋に?」


シェーファが変なオーラを出しながらセシリアに質問をすると、


「つい先ほどから、ヴァルダ様に頭を撫でてもらっていた」


セシリアがシェーファのオーラなんか気にしていない様子でそう言う。

ちなみに今俺の手はセシリアの頭の上に手を乗せた状態で止まっている。

すると、シェーファがセシリアとは反対の方にやって来ると、セシリアと同じように頭を差し出してくる。


「良いのか?」


エルフ族は同族以外に触られるのを嫌がる。

俺が心配をしていると、


「お願いします」


凄く真剣な声が帰ってきた。

お許しが出たので、俺はシェーファの頭を撫でる。

両手にサラサラな美しい髪。

ここが楽園か!

俺がそんな事を思っていると、


「ヴァルダ様、エリーゼが変な事をおっしゃっていました」


シェーファが俺にそう言ってくるのだが…。


「…エリーゼって誰だ?」


俺はエリーゼと名付けた亜人やモンスターはいない。

見た事がある気がするのだが…。

そう思っていると、


「バルドゥが連れて来た金髪の女です」


シェーファがそう教えてくれる。

あぁ、あの人か。

俺がそう思いながら、


「変な事とは?」


シェーファに聞き返すと、


「黒い女性が、とても安心する声で話しかけてくれたと。…塔の住人にそんな者はいないのに、です」


シェーファが俺にそう言ってきた。


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