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エルヴァンと寝ずに夜通し見張りをし翌朝、馬車から起きてきたお爺さんに挨拶をして先に朝食を食べてもらった後、未だに寝ているファルシュを馬車に乗せて焚き火を消してすぐに出発した。

朝に森を出発し、昼前には抜け出す事が出来た。

草原に出ると、今度は少し荒れている様子が見える。

しかし人為的と言うよりも、自然に荒れたような感じがする。

地殻変動とまではいかないが、長い年月を経てこうなったのだろうなと思う。

草原ではありつつも地面が隆起し、尖っている様な崖みたいな場所も見える。

俺はそんな外の様子を見つつ、


「すまないが、少し寝る。何か問題が起きた時は起こしてくれ。俺が仮眠を終えたら、エルヴァンも休んでくれ」

「はい」


エルヴァンに軽く寝ることを伝えて、座った状態のまま目を閉じる。

少し揺れはするが、それでも寝るのには問題は無い。

俺はそう思いつつ睡魔に任せて意識を手放した。






ヴァルダが仮眠の為に意識を手放した後少しして、


「…この男、何なんだ?」


ヴァルダを警戒して不機嫌そうにしていたファルシュが、ヴァルダの事を見ながら隣に座っているエルヴァンにそう質問をする。

それを聞いたエルヴァンは、


「この方は、私の主だ。私が住んでいる場所の主、ヴァルダ・ビステル様だ」


ヴァルダの事をファルシュに質問をする。

しかし自身の問いに対してエルヴァンが答えた言葉を聞いたファルシュは、寝ているヴァルダの事を見ながら、


「…この男、父上に似てる」


そう呟く。

馬車の揺れで軋んでいる音が聞こえる中で、ファルシュの呟きを聞き逃さなかったエルヴァンは、


「どういう事だ?」


普段の声よりも少し強めの声で、ファルシュに質問をする。

エルヴァンに質問されたファルシュは寝ているヴァルダを見て、


「姿形は全然違うんだけど、何だろう?纏っている空気みたいな、目には見えない何かが凄く似てる」


そう言うと、エルヴァンはそれ以上は追求せずにファルシュの言葉がどういう意味かを考える。

少しの間馬車内が静まり返るが、


「…でも父上とは違って変な感じが無い」


ファルシュが更に話しをする。


「ヴァルダ様は偉大な御方だ。ファルシュの父がどのような者かは知らないが、それでもハッキリと言える。そんな者よりヴァルダ様の方が素晴らしい御方だという事を」


エルヴァンが自信満々にそう言うと、ファルシュは少し拗ねた表情で、


「そんなにこの男が好きなのか?」


そう言うと、エルヴァンは間髪入れずに、


「敬愛している」


答える。

それに続けて、


「私は仲間である、ファルシュにもヴァルダ様の良い所を知って貰いたいと思っている。ヴァルダ様はおそらくファルシュの事が気になっておられる様だが、ファルシュの様子を見て一歩引いて下さっている。…ヴァルダ様はファルシュに酷い事はしない、信用して欲しい」


エルヴァンがファルシュにそう言うと、ファルシュは先程とは違う真剣な表情でヴァルダの事を見ると、


「…少しだけ、話をしてみる」


少し緊張している様子でそう言った。






…首が痛い。

俺は意識を取り戻して最初に思った事は、首の痛みに対する文句だった。

と言っても、寝方が悪い自業自得故に言葉にはしないが…。

俺はそんな事を思いながら、首を少し左右に傾けて凝りを解していく。

そうしながら、


「おはよう。次はエルヴァンが寝てくれ」


俺は目の前に座っているエルヴァンにそう言うと、


「おはようございます。ありがとうございます、では少しだけ仮眠を」


エルヴァンが今度は少し仮眠をすると言って固まる…。

…座って寝ていると、本当に寝ているのか分からないな…。

俺はそう思いつつ、視線を少し逸らしてファルシュの事を見てみる。

エルヴァンが仮眠を取る故に少し不安なのか、寝始めたエルヴァンの事を見ている。

…この状況で俺が話しかけたら、警戒してしまう可能性があるな。

俺はそう思い、ファルシュには声を掛けずに馬車の外の光景を見る為に小窓を覗き始める。

地形が荒れている草原は意外にも広く、エルヴァンが仮眠をし始めてから時間が経っていても通り切る事は無く、俺は変化はありつつも見慣れた様な似た光景を見続けている。

すると、


「…なぁ」


突然馬車内に声が聞こえ、俺は驚いて声がした方を向く。

そこには、顔はそっぽを向いているのだが視線を俺に向けているファルシュ。

彼女が、俺に声を掛けたのだろうか?

俺がそう思っていると、


「聞こえてるんなら、返事ぐらいしろよ」


困惑して黙っていた俺に、更にそう言ってくるファルシュ。

俺はそんな彼女に、


「あ、あぁ。すまない。どうした?」


謝罪をしてそう聞くと、ファルシュは顔を俺の方に少しだけ向けてくると、


「………何か聞きたい事はあるか?」


ファルシュがそう聞いてきた。

多少、俺に慣れてきたのだろうか?

俺はそんな事を思いながら、


「そうだな。エルヴァンと一緒にいてどうだ?」


そう聞いてみる。

それを聞いたファルシュは仮眠をしているエルヴァンの事をチラッと見ると、


「良い奴だ。ご飯は食わせてくれるし、無理矢理戦わせられる事も無い。オレが自由に何をしても基本的には怒らない。たまに騒ぎ過ぎって注意されるが…」


俺の質問にファルシュは返してくれる。

その答えを聞いて、俺はファルシュがエルヴァンと出会う前はもしかしたら酷い環境で生活していたのではないかと思ってしまうが、出会ったばかりの俺が聞くのは駄目だろうと考えて何も聞かず、


「エルヴァンとは普段どんな話をしているんだ?」


世間話程度の話題を振っていく。

他にも、食べる事が好きなのかやエルヴァンと一緒にモンスターと戦っているのかなどを聞き、少しずつ彼女が俺に対して警戒心を解いてくれたら良いなと思いながら話し続ける。

そうして地形が荒れた草原を抜けると同時にエルヴァンが仮眠から目を覚まし、


「寝ました。ありがとうございます」


俺にお礼を言ってくる。

そんなエルヴァンに俺は、


「構わない、少しだがファルシュと話が出来て有意義な時間だったぞ」


そう答えると、ファルシュは俺から興味を無くしたのかエルヴァンに話しかける。

やはり、少しでも長い間一緒にいた者には勝てないな。

少し寂しい気持ちになりながら、今度の新しい景色を見るために小窓の向こうに視線を向けた。


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