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俺が部屋の向こうの主に声を掛けると、


「失礼しますヴァルダ様」


扉が開くと同時に、エルヴァンが小さな声でそう言ってくる。

すると、エルヴァンの体の向こう側にいる者がどこかへ行こうとする様に見え、


「エルヴァン、その連れている者も一緒に入れ」


そう言うと、エルヴァンは少し黙ってから、


「ファルシュ、ヴァルダ様がお呼びだ」


部屋の外にいる者に声を掛けると、


「…フンッ!」


エルヴァンに顔を背ける様に中に入って来る者。

背は普通、服は動物の毛皮を羽織っており普通の服を着ているのだが、身体的な特徴が一点だけ目立つ。


「ヴァルダ様、こちらはファルシュ。ある依頼で保護をした者です」


日常生活にも支障が出そうな鋭く長い爪が目に映る。


「…詳しく話を聞こうか。それと何故彼女と一緒に行動しているのか」


俺がエルヴァンに視線を向けてそう言うと、エルヴァンは頭を体から離して脇に抱えると、部屋の床に片膝を付けて頭を垂れる様に座る。

それを見ていたファルシュという女性は、頭を離したエルヴァンを見ても驚かない様子に、エルヴァンがデュラハンだという事はもう知っているのだろうと思い、


「楽にしてくれエルヴァン。その様な態勢では話し辛いだろう。椅子なら用意してある」


俺はそう言って先に用意しておいた2つの椅子に視線を移すと、


「…ありがとうございます」


エルヴァンはお礼の言葉を言って立ち上がると、俺が視線を移した椅子を2つ持って俺の対面において座る。

エルヴァンが座ったのを確認して、ファルシュと呼ばれている人も乱雑に椅子に座る。

その様子にエルヴァンがファルシュに一言注意すると、ファルシュは面倒そうな表情をして気が抜けた返事を返す。

…意外に世話を焼いたりするんだな、エルヴァン。

俺はエルヴァンの知らない一面が見えた事に驚きつつも、嬉しくも感じながら、


「ではファルシュについて、詳しく話を聞かせてくれ」


エルヴァンとファルシュにそう言うと、エルヴァンが説明を始めてくれた。

少し遠くの森に突然現れた暴れるモンスターを討伐する依頼でその場に行き、依頼の討伐対象がファルシュだった事。

ファルシュ自身目の前のモノを破壊する事しか考える事が出来ず、エルヴァンと戦い一度冷静に戻した後に依頼場所での暴れる行為をしなければ見逃すという状態になったのだが、結果今は付いて来られているという状況らしい。

それを聞いた俺は、今度はファルシュに対して軽く質問をするのだが…。


「お前には関係ないッ」

「何でそんな事言わないといけないんだッ」


と、俺の質問に答えてくれそうには無いのだが…。

それをエルヴァンが同じ様な質問をすると、面倒そうな表情をしつつも普通に答えていた。

言い方は悪いが、ファルシュはエルヴァンに懐いているというか、心をある程度開いている様に見える。

俺はそんなエルヴァンとファルシュの様子を見て少し笑うと、


「…俺は嬉しいぞエルヴァン。お前が剣術以外にもやる事が出来て。ファルシュ自身も特に悪意があってエルヴァンに近づいた訳では無いようだし、俺はこれ以上口を挟むつもりは無い。好きに動いてくれ、お前の目指す強さを求めてな」


そう言う。

それを聞いたエルヴァンは椅子から立ち上がると、入って来た時と同じ様に片膝を床に付けて頭を垂れると、


「ありがとうございますヴァルダ様」


お礼の言葉を言ってくる。

すると、


「それと1つ、報告する事があります」


エルヴァンが真剣な声でそう言ってくる。

その言葉を聞き、俺は少し気持ちを引き締めてから、


「何だ?」


エルヴァンに報告を促す。


「次の依頼が、帝都の上層部から直接指示が来た依頼です。それを達成する事が出来たら、おそらく…騎士団長の交代をさせる死闘が行われると、私は思っています。先程ギルドマスター直々に話をしてきました。表情を窺うと、気持ちが悪い笑みを浮かべていました」


エルヴァンがそう報告をしてくる。

前にアンリが盗み聞きをした、エルヴァンが騎士団団長になった際に報奨金が出るという話か。

レオノーラさんとエルヴァンによる死闘の結果で、騎士団団長がそのままか変更される…。


「エルヴァン、次の依頼というのは何だ?」


俺が思考しながらもそう問うと、


「東の霊峰なる山に住んでいる、竜人達を帝都の兵力として話をして来いという依頼です。その際、話し合いが決裂した場合は、全員の皆殺しが条件の様です」


エルヴァンが依頼内容を教えてくれる。

…なるほど、龍人となるとレオノーラさんの様に身体能力などが他の亜人族とは違い皆が強いだろうし、そんな彼らを戦力として自由に使える様にしたいんだろう。

おそらく王族か上層部かは知らないが、龍人であるレオノーラさんに頼んだとしても自由にただの捨て駒としては使える事も出来ないだろうし、皆殺しなんていうのも同族の彼女には不可能。

彼女が見逃す事が目に見えている。

それなら、腕が立つ冒険者を送り込んだ方が良いという事か。

もしかしたら、話し合いをする事が出来る話術というか、そういうモノも調べているのかもしれないな。

それに話し合いが決裂したとして、全員を皆殺しにする事で敵対する者達を排除する事も出来るし、それ程の腕がある者ならレオノーラさんを倒せて、帝都の亜人族をどうにか出来るかもしれないと考えていそうだ。

帝都にとっては、良い事尽くしの状況と話である。

竜人達を生かすも殺すも帝都にとって利益があり、それに対する被害は帝都には無い。

レオノーラさんを倒れれば、帝都のスラムで密かに暮らしている亜人族を排除する事も可能になり、更にレオノーラさんよりも強い戦力が自分達の味方になるのだ。

例えレオノーラさんが負けなかったとしても、今の現状が保たれるだけであり帝都には全然被害はない。

()()()()()()()()()()、普通に話を進めたくなるよな。


「なるほど、状況は理解した。その事ならエルヴァンに………」

「ヴァルダ様のお力を貸して頂きたく思います」


俺がそう思ってエルヴァンに任せると言おうとした瞬間、エルヴァンが俺の言葉を遮ってそう言ってきた。


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