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翌朝俺は早朝に起きると、身支度を始めてすぐに塔から外の世界へと出発をした。
外の世界の不帰の森へと戻って来た俺は、そこで自分の失敗に気がつく。
俺1人では、この不帰の森で目的地まで行ける気がしない。
外に出るのも、もしかしたらマズいかもしれないな…。
俺はそう思い、アウレオンさんかリエスさんを呼び出そうとしたが、昨日の彼らの賑やかな声を聞いていた事を思い出し、もしかしたら寝たばっかりかもしれないと思い、俺はそれなら申し訳ないと思いどうしようかと考える。
そして思い付いたのは、取りあえず歩き続けて放置した者達を見つけたら、そこからカルラに頼んで空へ飛び立ってしまおうと思い、取りあえず俺は今は誰もいない集落を後にして放置した人達の捜索を開始した。
……………。
歩く事もう数時間、朝早くに来たのにもう日が真上に近い状態にまで昇って来ている…。
やばい、これ以上時間が掛かる様だったらもうアウレオンさんかリエスさんに協力して貰おう…。
俺は甘く見ていた不帰の森の恐ろしさを再確認し、もう数十分だけ頑張ったら諦めようと思いながら歩き続ける。
すると、ふと変な音が聞こえてくる。
低い声の様な音がすると思い、それが人の声だと理解すると俺は声がする方向に向かって歩みを進める。
少し歩き進めると、そこには木製の檻が見えてくる!
良かった、本意ではないが彼らに感謝しなければいけないな。
俺はそう思って檻の元へ行くと、
「何だこれ?」
目の前に映る光景に、疑問の声を出してしまう。
檻の周りに沢山の草花が集まっており、彼らはそれに対してかうめき声を出している。
気になり近くまで見に行くと、
「…どういう状態なんだこれは?」
草花から伸びている根が、檻の中へと続いており捕まえた者達の足に絡みついている。
とりあえず、こいつらはブルクハルトさんに頼んで処分してもらえれば良いから、雑に扱っても良いだろう。
俺はそう思うと、本の中の世界を開いてカルラを召喚すると、
「カルラ、この檻を森の外まで運んでくれ。目印に俺がいるから、悪いが往復してくれ」
カルラにそう指示を出す。
俺の指示を聞いたカルラは、
「ピャ~ッ!」
鳴き声を上げると、1つ目の檻を乱雑に足で掴むと空中へと飛び立つカルラ。
それと同時に、檻の中の者達の足へと絡まっていた草花が吊るされる様に持ち上げられると、
「…あぁ、なるほど」
そこから見えた光景に納得してしまった。
どうやら草花はより良い栄養を求めて檻の中の者達に根を突き刺して、栄養を奪っていた様だ。
そりゃ、抵抗もしなければ草花も大丈夫だと判断したんだろう。
俺がそう思っていると、草花の根が檻の方と地面の方で分かれる様に生やしている状態になってしまい、ブチブチと根が切れる音をさせながら無残に地面に落ちてくる。
カルラが持ち上げた檻を見ると、そこにも草花が付いて行っており、あのままではブルクハルトさんに受け渡す前に死ぬかもしれないなと思いながら、俺はカルラが俺を見失わない様に立ち続ける。
無理矢理栄養を吸い取っていた場所から引き剥がされた草花を見ていると、切れた根から赤い液体が漏れている事に気づいて、彼らの血なんだろうと察する。
そんな事を思いながら待っていると、カルラが戻って来る。
今度は俺もカルラの背中に乗って、もう1つの檻をカルラに持ち上げて貰い空へ飛び立つと、先程と同じ様に草花の根が引き千切れる音をさせながら上昇し、カルラは翼を力強く羽ばたかせて空を飛ぶ。
そうして最初に持って行った檻の元に降り立つと、
「ありがとうカルラ。少し空を飛んでくるか?」
俺はカルラにお礼を言い、たまには塔の空だけでは飽きてしまうだろうと思いそう聞いてみる。
すると、カルラは嬉しそうな声を上げて前足で地面を何度も踏んでいる。
今にも駆け出しそうなカルラを見て、
「この者達を運ぶ手段を考えているから、その間なら良いぞ。ただし、あまり遠くには行かない事、これは約束だ」
そう言うと、カルラは鳴き声で返事をすると翼を広げて空へと飛んで行った。
さて、こいつらをここまで運んできたのは良いがここから先はどうしようか?
カルラに任せるのは少し大変だし、出来れば重量があっても問題無く引っ張っていける者…。
もう俺で良いんじゃないか?
縄で檻同士を繋げて、俺が引っ張る…。
悪くは無い案ではあるが、それでは帝都までに相当な時間が掛かる。
出来る限り速く向かいたいのだが…。
俺はそう考え、良い方法を思い付く。
とりあえず話を聞いてみるとするか。
俺はそう思うと、
「召喚、アレクシア、シル」
2人を呼び出す。
「どうしたの~?」
「ご用件は何ですかヴァルダ様?殲滅でしょうか?」
シルはマイペースに欠伸をしながらそう質問をして、アレクシアは相変わらず物騒な事を前提に聞いてくる。
「いやそういう訳では無いよアレクシア。実は2人にお願いしたい事があってな。この2つの檻を遠方まで運ばないといけないのだが、少しどうしようかと考えていてな。シルの風とカルラとアレクシアの脚で運べないかと思ってな」
俺が説明をすると、
「え~、もっと適任がいるよ~」
シルがそう言ってくる。
確かに彼女が言いたい事も分かるのだが…。
「シルが頭に思い浮かんでいる者達は、俺も一度考えたさ。だが、彼らを召喚するのは少し問題があると思ってな。どの者も多少見られただけで討伐依頼が出されてしまうだろう。それは流石に避けたいのだ」
俺がそう言うと、シルも理解してなのか。
「まぁ~、確かにそれはそうだよね~…。デカいし!」
シルがそう言う。
それを聞いていたアレクシアが、
「…シル、ヴァルダ様の命令に逆らうつもりか?」
アレクシアが鋭い視線をシルに向ける。
すると、
「ピィァァ~~ッッ!!」
上空を飛んでいたカルラが大きな鳴き声を上げて俺達の元へと突っ込んで来た!
「カ、カルラ!?危ないではないか!」
「けほ…。砂が~」
「ど、どうしたカルラ?何かあったのか?」
アレクシアは突然自分達の元に来たカルラに注意をし、シルは舞い上がった土煙に咳き込み、俺はカルラが何か異常を察知したのかと思ってそう声を出すと、
「ピィィッ!!」
カルラはアレクシアとシルに対して怒っている様な声を出す。
それを聞いたアレクシアとシルは、
「そうだな。私達は協力する為に呼び出されたのだな」
「カルラは皆が仲良くしないと嫌なんだね~。分かった分かった~」
苦笑しながら、カルラを見ながらそう言った。
どうやら、カルラが2人に対して注意か何かをしたのだろう。
そうしてカルラの説得?のお陰か、アレクシアとシルは何をするのか聞いてきた。
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