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250頁

クラスを戻して塔の不帰の森の浮島から直接集落に戻ってくると、アウレオンさんも荷造りが終わったようで集まっているエルフの人達と会話をしている。

すると帰って来た俺に気づいて、仲間との会話から抜けて俺の元までやって来ると、


「お待たせしました。少し運ぶ荷物が多くて…」


謝罪をしてくる。


「いえ、問題はありません。リエスさんに少しここをお願いしただけですので、彼女にお礼を言ってください」


俺はそう返して、本の中の世界(ワールドブック)を開くと、


「これから皆さんを連れて行きますけど、良いでしょうか?」


アウレオンさんにそう聞く。

それを聞いたアウレオンさんは少し落ち着かないエルフの人達に、


「皆静かにしなさい!」


声を少し大きく出して意識を自分に集中させると、


「お願いします」


アウレオンさんがそう言ってくる。

その言葉を聞いた俺は頷き、


「帰還」


塔に行く為の黒い靄を出現させると、


「アウレオンさん、指示をお願いします。俺がするより、貴方が指示した方が皆も良いでしょう」


アウレオンさんにそう言う。

俺の言葉を聞いたアウレオンさんは少し皆の事を見た後、


「リエスを先頭に、皆落ち着いてこの中に入るんだ。最初は怖いかもしれないが、特に痛いと感じる事も無い、気にせずに前の人の後を付いて行きなさい」


そう指示を出すと、リエスさんの事を見て頷く。

アウレオンさんの頷きを見たリエスさんは、彼の頷きに返事をする様に頷くと、


「付いて来て」


そう言ってゆっくりと黒い靄に近づいて行き、中に入って行った。

リエスさんの様子を見て少し安心したのか、躊躇いつつも足を動かしてリエスさんの後ろのエルフの方が靄の中に入って行く。

すると、どんどん後続の人達もゆっくりと靄に入って行き、


「私で最後ですね」


アウレオンさんがそう言って集落の見回すと、


「…長年暮らしていた場所を離れるのは、やはり寂しいものですね。しかし、ここを離れなければ皆が苦しい思いをする。…ビステルさん、改めてこれからよろしくお願いします」


そう言って俺の方に顔を向けると、頭を下げてそう言ってくる。

俺は彼の言葉に、


「皆さんが今まで通りの暮らしが出来る様に、そしてもっとより良い生活が出来る様に協力します。こちらこそ、これからよろしくお願いします」


そう返すと、アウレオンさんは黒い靄の中へ入って行く。

黒い靄に入って行ったアウレオンさんの後ろ姿を見て、彼らがどれだけ苦渋の決断をしたのか理解出来る。

そんな彼らにがっかりされない様な、昔の暮らしも良かったが今の暮らしも良いモノだと言われる様に努力しなければなと考え、アウレオンさんの後に続いて黒い靄を潜る。

不帰の森の浮島に戻ると、


「ビ、ビステルさん?これは一体?」


アウレオンさんが愕然といった様子で、不帰の森を再現した森を見回しながらそう聞いてくる。

その問いに、


「セシリアと共に作りました。外側は同じ様になっていますが、建物の中にあった荷物などは無理でしたので、それはこれからご要望があれば俺が取りに行きます。それと不帰の森という言葉の意味でもあった動く樹木や草花なども移動は出来なかったです。森の規模も小さくなってしまいました。申し訳ありません」


俺は状況の説明をする。

それを聞いたアウレオンさんは、


「そんな!謝る必要などありません!私達はこれからも、この森で穏やかに暮らしていけるという事でしょう!こんなに素晴らしい事は無いですよ!」


興奮した様子でそう言ってくる。

俺はそんなアウレオンさんに驚きつつも、


「そ、それなら良かった」


そう答えるしかなかった。

その後、希望するエルフの人達の許可を取り、俺は本物のエルフの集落と塔の集落を往復して荷物を運び出し、全ての引っ越しが完了した。

そこからは、人数の多さから俺とセシリア、シェーファにユルゲンさんにも手伝って貰い塔の案内と注意事項を説明した。

そしてエルフの人達は食堂に感動し、他種族に少し緊張した様子を見せながらも新たな環境に慣れようとしている姿を見て、彼らなら大丈夫だろうと思った。

塔や様々な事を教えて周り、気がつけば辺りは暗くなり始めている。

草原島の様にあまり木が生えていない場所なら、夜でも普通に見えるくらいだが…。

不帰の森を再現しただけあって、夜になると結構暗く見えにくいな。

エルフの皆を案内から終えて不帰の森へと戻りつつそう思っていると、エルフの人達はむしろ暗い事を喜んでいる様子だった。

夜はエルフの皆は本当の不帰の森の家から持って来た食料や、塔の食料を使って夕食を作り皆で食べていた。

アウレオンさんから、最近は油断する事が出来ずにお酒を皆で酌み交わす事も無かったと聞き、今日は存分に皆で食べて飲んで下さいと言ってから、塔の自室へと戻って来た。

1人になると、ようやく不帰の森のエルフの人達の保護は完了したと安心し、次はどこへ行こうかと考えながらも一度ゆっくりとする為にソファに座る。

ソファに座って少しゆっくりとしてから、俺はアイテム袋から地図を取り出して見比べる。

…さて、エルフの不帰の森がここだったから…。

俺はそう思いながら地図を見ていると、不帰の森から先の光景が曖昧と言うか、不帰の森の大きさがおかしい事に気がつく。

ここまで小さく無いはずだ。

…不帰の森周辺は、適当に描かれているという事か?

俺はそう思いながら地図を見続けて、今持っている地図では駄目だと判断し、明日本物の不帰の森に放置しておいた者達をブルクハルトさんの元に連れて行った時に、お願いをしてみせて貰おう。

俺はそう考えて、アイテム袋に地図を仕舞って風呂に行き、ゆっくりと疲れを癒す様に湯船に浸かってから風呂場を後にして自室へと戻り、就寝する事にした。

ベッドに入り部屋の照明を暗くすると、少しワイワイとした楽しそうな声が聞こえてくる。

どうやら、エルフの皆は寝ずに宴をするんだろう。

…このまま、彼らがここを楽しい場所だと認識してくれる様に努力しようと思い、俺は目を閉じた。


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