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「お邪魔します」

「狭いが、入ってくれ」


リエスさんの部屋に入ると、物が置かれているのと部屋自体が狭いのか、かなり狭く感じる。

物は散らかっている訳ではないが、結構な量の物が置かれている…。

床には細く加工された木の束が置かれており、更に乾燥させた薬草が何種類かに分かれて置いてある。

エルフの人達なら分かるんだろうが、スキルで乾燥とかそういう工程を全て省いている俺には何が何か分からない。

鑑定スキルを使用すれば違うのだが、わざわざする必要もないだろう。

俺がそう思っていると、


「座ってくれ」


リエスさんがそう言って、椅子の上に置いてある物を退かしてそう言ってくる。

机の上には乳鉢と乳棒が置かれており、木の皿の上にハンカチサイズの布が敷かれてそこに粉末がある。

さっき見た床の乾燥させた薬草の粉末だろうか?

俺はそう思いながらも、テーブルの上に置かれている他の物に視線を移す。

磨かれた石と鉄、服の様な布の集まり。

蔓にまだ乾燥させる前の瑞々しい薬草に花。


「結構生活に必要な物がありますけど、どれも自作なんですか?」


俺がテーブルの上の物を見ながらそう質問をすると、


「あぁ、基本的にはそれぞれ役割があって、私は戦闘に使う物などを製作している。調達する物は調達専門の者に任せて、私はそれを受け取ったら加工するのだ。ルーが手伝ってくれるお陰で、余裕を持って調合する事が出来る」


リエスさんはそう言いながら、何やら香の様な物を焚く。

少しすると、鼻を抜ける様な爽快感のある匂いがしてくる。


「夕食は食べないんですか?」


リエスさんが何やら食器などを弄っている訳では無い様子を見て疑問に思い、俺に背中を向けている彼女にそう聞くと、


「今回の様に集落の大事な話を家族とする場合、我らは食事をせずに話し合う。頭の中をスッキリとさせ、悩みや不安に思う事を全て言える様にこの香を焚くんだ。私達は話し合う必要はないが、食事の匂いをさせて皆の迷惑にならない様にしなければならない」


リエスさんがそんな説明をしてくれる。

…おそらく、この集落だけで考えられる決まり事の様だな。

俺の知っているエルフに、その様な生活模様は無かったはずだ。

俺がそう思っていると、


「今日はゆっくりと寝てくれ。ただし、寝所から一歩でも私に近づいたら風穴が出来ると思え」

「思え~」


リエスさんがそう言い、外から精霊ルーさんの声も聞こえてくる。

途中から姿も見えずに、どこへ行っていたのだろうかと思っていたが外にいたのか…。


「精霊は、部屋に入ってこないんですか?」


俺がそう聞くと、


「精霊達の家は森全体だ。彼らも好きな所で眠るんだ」


リエスさんは俺の質問に答えて、


「ルー、お前もそろそろ戻れ。問題は無い」


外にいる精霊ルーさんに声を掛けると、


「おやすみ~」


精霊ルーさんはそう言って颯爽とどこかへ言ってしまった。

寝るには早いと思うのだが…。

まだ日が沈んだばっかりなのに…。

俺がそう思っていると、


「よし、今日はここで寝てくれ」


リエスさんがそう言ってくる。

彼女の方を見ると、丁寧に様々な物が置かれている場所に空間を作り、そこに細かい葉が敷き詰められている場所が見えた。

最後にリエスさんが人1人分くらいあるのではないかと思う程大きな葉をそこに乗せると、


「簡易的ではあるが、ここで寝てくれ」


リエスさんがそう言って部屋の床に置かれている物を蹴飛ばさない様に歩き、何も置いていない場所に行くと、そこに横たわった…。

エルフの人達は、こういう家具で寝ているのか?

それとも、リエスさんだけなのか?

俺はそんな疑問を感じながらも、すでに寝ようと横になった彼女に声を掛けるのは悪いと判断し、


「おやすみなさい」


軽く挨拶をして、リエスさんが用意してくれた葉のベッドに乗ると、意外に柔らかく寝る事は出来そうだと思う。

あまり眠気はないが、それでも明日は大変だろうと思い瞳を閉じると、呼吸を落ち着かせて寝ようとする。

少しして睡魔がやってくると、俺はそのまま睡魔に任せて夢の世界へと旅立った…。

翌朝リエスさんに声を掛けられて目を覚ました俺は、長い睡眠のお陰で回復した体を伸ばしながらリエスさんに挨拶をすると、前にも渡された葉の包みを渡された。

今度は湿っておらず、葉は新鮮そうではある。


「朝食だ」

「いただきます」


俺はリエスさんにお礼を言って包みを開くと、前に渡された食べ物の乾燥した物が出てくる。


「このまま食べていいんですか?」

「…水は用意しておけ」


俺が質問をすると、リエスさんが部屋に置いてあった大きな壺の蓋を開けると、そこに木製のコップを入れてコップに水を入れると俺に差し出してくる。

俺はそれを受け取ると、先に葉に包まれた食べ物を齧る。

瞬間、口の中の水分が全部齧った食べ物に吸収され、飲み込もうとしていた食べ物が喉に詰まりそうになる!

慌てて水に口をつけて口の中を潤すと、


「す、凄い吸水性…」


俺は荒く息を吐きながらそう呟く。

それを聞いていたリエスさんが、


「この前渡したのは、食べやすく蒸しておいたから。食べなれていないと、大変な事になる」


そう言いながら水を口に含んでから食べる姿を見て、俺も彼女の真似をして何とか朝食を食べ終えると、俺とリエスさんは部屋を出る。

すると、広場に人が集まっており何やら少し緊張している様子だ。

見ると、昨日話し合いの場にいたアウレオンさんを含めた人達が主導で皆を集めたのか、何やら指示を出しているようだ。

俺がそう思っていると、緊張した表情をしているエルフの皆が俺に視線を向けてくると、


「おはようございますビステルさん。それぞれの家族と話し合った結果、皆がビステルさんの元に行く事を了承してくれました。まだあの場所について信じていない者が多く不安にしているのは、許していただきたい」


アウレオンさんが少し声を大きく出して俺にそう言ってくる。

どうやら、俺と話す会話を他の人にも聞かせようとしているのだろう。

アウレオンさんの言葉を聞いた俺は、


「構いません。こればっかりは行ってみないと分からないでしょうし、それもなるべく日が落ちる前に終わらせたいと思っています」


アウレオンさんにそう言い返すと、


「私の名前はヴァルダ・ビステル!これからは俺が貴方達の安全を保障します!」


俺は広場に集まってくれたエルフ皆に聞こえるように自己紹介をした。


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