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俺の質問を聞いたユルゲンさんは、


「エルフも少数人数で集落を形成していますから、同じエルフの森と言っても複数あると思っていた方が良いですよ」


俺の質問にそう答えてくれる。

つまり、他にもエルフの集落があるのだろう。

俺がそう思っていると、


「ただ我らの森に来た者達の様に、今は奴隷商人にエルフを売りに来る者が多く、どの集落も破滅していると聞いた事はある」


男性がユルゲンさんの言葉に付け足してくる。

なるほど、これは急がないといけないかもしれないな。

俺がそう思っていると、


「そちらはどちらの森からいらっしゃったんですか?」

「あ、あぁ。我らは不帰の森だ」

「私達の森からは随分遠くですね。私達はもっと西の方で暮らしていたのですよ」


ユルゲンさんと男性が世間話をし始めてしまう。

良いのだろうか?

いやでも、彼の言葉を聞いて塔の生活が良いモノだと説明してくれれば嬉しい。

ここを創り上げた俺の言葉よりも、実際に生活している者の話の方が参考になるだろう。

俺はそう考え、彼らの話の邪魔はしない様にしてセシリアを呼ぶ。


「どうしましたかヴァルダ様?」


俺が手でセシリアを近くに招くと、セシリアがくっ付くくらい近くまで来る。


「すまないが、もし彼らがこちらで住んでくれるという事になったら、セシリアに手伝って貰いたい事がある。良いだろうか?」


俺がそう聞くと、


「お任せください。出来る事全てをヴァルダ様の為に使います」


セシリアがそう答えてくれた。


「ありがとうセシリア」


俺が感謝の言葉を伝えると、セシリアは一礼してから俺から離れてサール達の元に行く。

サール達もセシリアが来てくれた事に喜び、何か嬉しそうに話している。

俺がそれを見ていると、


「久しぶり。…外はどうなの?」


ルミルフルが農具を肩に担いで俺の近くに来ると、俺にそう聞いてくる。


「最近は忙しくてな、中々塔の皆との交流が出来なくて申し訳ないと思っている。…実は外の状況についてはルミルフルにも話をしておきたくてな。今少し時間が空いているし、軽く状況説明をしておこう」

「…そんなに大変な状況になってるの?」


俺がそう言い出すと、ルミルフルは真剣な表情でそう聞いてくる。

俺はそんな彼女と少し歩き、集まっている皆と距離を取ると、


「ジーグという国は知っているか?」


ルミルフルにそう聞く。

それを聞いた彼女は、


「話には聞いた事があるわ。一応これでも軽く旅をして生きてきたから。亜人族だけしかいない国だって聞いたけど?」


思い出す様に視線を少し俺からずらしてそう答える。


「俺は少し前に、アンリにジーグに来て欲しいと頼まれて行ってきた。そこで、ジーグにいる亜人族達が帝都の亜人族差別を止める様にと、反乱をする事になった話を聞いた。人族の完全な抹殺では無く、亜人族にも戦う力があり、意思があり違法に奴隷にしたリ、物の様に扱うなと抗議する戦争が起きる。俺はそれに賛成し、彼らに力を貸す事にした。しかしこれはあくまで彼らの戦いだと思っている。俺も俺で戦うべき相手がいるのだが、その者を前線に誘き出すのには戦争に参加しつつ奴が出てくるのを待つのが一番だと思っている。…ルミルフル、君がオークションに出された経緯は、自分の家族や仲間を殺した帝都に復讐しようとして捕まったからだ。もし君がまだその意思があるのなら、俺は君を解放して戦争に参加させようと思っている。………ルミルフルの意思が聞きたい」


軽い状況説明と同時に、彼女の意思や考えを聞こうとする。

俺の言葉を聞いたルミルフルは、瞳を閉じて少し俯き考えている様だ。

色々と考えているのか、農具を握っている手が動いて指で農具の柄を何度も軽く押している。

そして彼女は僅かに下げていた頭を上げて瞳を開き、俺をしっかりと見てから視線をセシリアと話しているサール達の方に向けると、


「貴方は戦争の場にいるんでしょう?なら私は、その時に呼び出してくれるだけで良い。ここでジーグに置いて行かれても生きていく事は十分に出来る。けど、それは私だけだったらって話。今の私は自分だけじゃないから、私以上にあの子達が楽しく幸せに過ごしていける事を考えたら、私は自由になんてなるつもりは無い。今でさえ、結構自由な暮らししているし、むしろ今のこの暮らしを捨てるのも愚かな選択になる。…戦争には参加する、それは私が成し遂げたい事でもあるから。でも貴方との契約は切らない」


彼女はそう言って頷くと、


「ヴァルダ・ビステル。今度時間を作って欲しい。契約の事について、話したい事がある」


サール達から視線を外して俺に視線を向けてくると、彼女は真剣な表情でそう言ってきた。

その言葉に、


「分かりました」


俺はそう返す。

そうすると、


「ヴァルダ様、彼女をどうにかして頂けないでしょうか?」


シェーファが少し困った様子で俺の元にやって来る。


「どうしたんだシェーファ?」


俺がそう聞くと、


「あの人が凄く質問をしてきて、少し困ってしまいまして…」


シェーファが少し遠くのリエスさんに視線を少しだけ向けてそう言ってきた。

…リエスさんはシェーファに結構夢中だったし、彼女的には塔の世界よりもシェーファの方が気になるんだろうな。

俺がそう思っていると、俺とシェーファの元にリエスさんがやって来る。

シェーファはリエスさんを警戒してか俺の斜め後ろに移動し、リエスさんが俺の対面までやって来ると、


「私は決めた、私は貴様の配下に加わっても良い」


そう言ってきた。

何が理由かは分からないが、彼女が前向きに考えてくれたのは良い事だと思い、


「それなら良かった。ちなみに、何故決断したんですか?」


そう質問をしてみると、リエスさんは俺の後ろに控えていたシェーファをチラッと見た後、


「人族も亜人族も、皆が笑い合って過ごしている。昔見た集落の光景と同じに感じた。おそらく、だからだろう」


そう言ってくる。

彼女の言葉に俺は彼女の言葉が本心であると感じつつも、おそらくは一番の決め手になったのはシェーファなのではないかと考えつつ、


「皆が笑い合う世界を、作ってみせますよ」


彼女の言葉に、俺はそう返した。


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