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集落の広場の隅でリエスさんを待ってから少しして、ある家からリエスさんが飛び出してきて階段を凄まじい速さで下りてくると、集落を飛び出そうとする。

そんな彼女を見て、もしかして俺を迎えに行くんでは無いかと思い、


「リエスさん!」


急いでいる彼女に聞こえる様に声を出すと、彼女は俺の方へ視線を向けるとまた凄い勢いで俺の元へやって来て、


「…話し合いの場を設けました。こちらへどうぞ」


丁寧な言葉遣いでそう言って、案内を始めようとする。

しかし、今まで普通なのかは分からないが敬語で話されていなかったからか、リエスさんが敬語を使っていると違和感が凄いな。

おそらく、警戒していたから敬語では無く上からというか、圧力がある話し方をしていたと思うが…。

俺はそう思い、


「リエスさん、あまりそう畏まらないで下さい。今まで通りで結構ですから」


リエスさんにそう言うと、リエスさんが少し難しそうな顔をする。

おそらく色々と考えているのだろう。

彼女的には普通に話している方が楽ではあるが、俺の機嫌を損ねない様に気を遣っているのが分かる。


「別に敬語では無いから、これからの話し合いも無碍にしたりしないですよ」


俺がそう言うと、リエスさんは少し間を開けてから、


「分かった。…付いて来い、皆が貴様を待っている」


俺にそう言ってくると、スタスタと歩き始める。

そんな彼女の後ろを付いて行き、俺は先程リエスさんが飛び出してきた家の中へと入る。

室内に入ると木材で出来ている家具が見えて、数人のエルフ達が室内に入って来た俺の事を警戒している様な、疑っている様な視線を向けてくる。


「彼が、私が話した者だ。私もまだあまり話していないが、我々に危害を及ばせる者では無いと判断した」


リエスさんが話を切り出すと、俺の事を見ていたエルフ達がおずおずと頭をゆっくりと下げ、


「こ、今回の件、ありがとう」

「…感謝する」


俺にお礼の言葉を言ってくる。

自分達の存在に誇りに思っているエルフ達が、頭を下げるという行動はとても重要だろう。


「…構いません。すぐに頭を上げて下さい。俺は貴方達に嫌な思いをさせてまで感謝されたくはないです」


俺がそう言うと、部屋にいたエルフの方達が頭を上げる。

しかし…。


「リエスさんも、頭を上げて下さい」


俺から少し離れた所で、リエスさんが未だに頭を下げている。

俺の言葉を聞いても頭を上げる様子は無く、どうしたのだろうかと思っていると、


「これは、集落を救ってもらった感謝の礼ではない。仲間を傷つけた者達に報復をした感謝。傷ついた仲間を助けてくれた感謝。酷い扱いをしたにも拘らず、私達に話をする機会を作ってくれた感謝の礼だ」


リエスさんがそう言ってくる。

律儀な人…エルフだなと思い、


「なら余計、頭を上げて下さい。これから話す事は対等な関係を築くためにも必要な事、感謝している気持ちを持ってくれていれば十分です」


俺はリエスさんにそう伝えると、ようやく彼女は頭を上げてくれた。

リエスさんが頭を上げた事を確認した俺は、彼女から視線を移して周りにいるエルフの方達を見て、


「皆さんも、そのつもりで話し合いましょう。助けた助けられたの関係よりも、俺はもっと丈夫な深いより良い関係を望んでいます」


自分の気持ちを素直に伝えた。

俺の言葉を聞いた聞いたエルフの方達が、少し驚いた表情で顔を見合わせていくと、


「…話し合いを始めましょう」


1人のエルフの男性がそう仕切り始める。

それぞれのエルフの方達が椅子に座り、俺もリエスさんに渡された椅子に座る。

そしてこの室内にいる全ての者が座ったのを確認すると、


「リエスから話を聞いている、貴殿は我らと友好関係を築きたいと。そして、我らは先程の事で森を出る事は得策では無いという事を再確認する事が出来た。この状況で、互いに何を授ければ良いと思う?」


仕切り出した男性がそう話し始め、俺に真剣な表情でそう質問をしてきた。

それを聞いた俺は、


「俺から授けるモノは、この不帰の森の森とエルフの集落の安寧を。貴方達から授けるモノは、森での生活で培ってきた植物の知識などを」


男性の言葉遣いの様に、少し遠回りな言い方をする。

それを聞いたエルフの方達が、少し疑う様子で俺の事を見てくる。

おそらく、簡単に安寧と言ったがどうやってその安寧を授けてくれるのだろうかと、彼らは考えているはずだ。


「…具体的な話をしよう。我らは人族に襲われない程の、絶対的な安寧を求めている。それをどうやって実現すると言うのだ?」


男性が周りの考えを読み取ってなのか、そう質問をしてくる。


「貴殿がここへ残ると言うのなら、すぐに話しは付くのだがな」


俺が質問に答えようとすると、周りにいたエルフの女性がそう言って俺の事を何故か挑発的な視線を送ってくる。

…俺が出来ない事を見越してそう言ってきたのか?

俺は少し考えながらも、


「俺がここへ残る事は出来ません。皆様の様に、人族によって苦しんでいる亜人族を保護、支援しなければいけない方達がまだいるでしょう。…ここに人族が襲ってこない絶対的な安寧を求めているのでしたら、俺が提案出来る方法は2つ。1つは俺の家族を残して護衛をして貰う。しかしこの方法はその者が俺の元を離れる事を了承してくれればの話です。そしてもう1つは、貴方達全員を俺の家族として誰も襲ってこない安寧の地に迎え入れる方法です」


2つの方法を彼らに提示する。

それを聞いた皆は、少し考える様に仕切っていたエルフの男性に視線を移す。

皆の視線を感じた男性が、


「…あまり得策では無いと感じる。最初の方法はまだ信用が出来るが、もう1つの安寧の地の話は嘘だと、我らを騙し捕まえるための罠だと思ってしまう」


俺にそう言ってくる。

その言葉に、周りのエルフ達がうんうんと頷く。

…こればっかりは証明するしかないな。

俺はそう思うと、


「…1つ提案をしてもよろしいですか?」


俺がそう切り出す。

俺の言葉を聞いたエルフの方達は特に文句を言わず、ただ黙って頷くだけ。

彼らが頷くのを見た俺は、


「とりあえず、俺の家族を今ここに召喚します。そして、ここの全員でも良いですし1人でも良いので、俺が話した安寧の地に行ってみませんか?」


そう提案をした。


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