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俺の質問を聞いた鎖を持った男は、笑っていた表情から馬鹿にした様な顔を向けてくると、


召喚士(サモナー)ぁ?そんな動物と対等な契約なんかする馬鹿がどこにいるんだ?」


俺にそう言って、鎖をまるで俺に見せつける様に突き出すと、


調教師(テイマー)が、絶対的な上位者として動物達を上手く使える様にする事が出来るクラスだ!動物にはなぁ!痛みによる恐怖で飼い慣らしてくれる主が必要なんだよォッ!」


自信満々と言って良い程、自分の立場が圧倒的に上だと態度で示してくる。

その言葉に少し離れた所に立ち、いつでも俺の方に突撃出来る様に体の姿勢を低くしているミノタウロスを見ると、かつて男に付けられてであろう傷痕が少しだけだが見える。

あの男による調教の結果、ミノタウロスはここまで獰猛になっているのか…。

そう思うと、俺は目の前にいるミノタウロスが可哀想に見えてくる。


「そんな調教師(テイマー)が、エルフの人達を捕まえに来た理由は…まぁ聞かなくてもだいたい察するか…」


俺はそう独り言を呟くと、首から下げている本の中の世界(ワールドブック)を取り出す。


「大人しくエルフの方達を解放すれば、多少の痛い目で済ませてあげますけど」


一応そう聞いてみる。

と言っても、確実に精神を破壊はさせるつもりではいるが。

俺の言葉を聞いた男は、


「家畜に懐柔させられたクソ野郎と話し合う権利なんかねえんだよ!お前達がッ!俺の言葉に従い、服従しろって言ってるんだッ!喜んで媚びを売れッ!」


楽しそうに高笑いをしてそう返答をしてきた。

それを聞いた俺は、


召喚(サモン)、シェーファ」


普段なら召喚するつもりは無かったシェーファを呼び出す。


「お呼びでしょうかヴァルダ様」


召喚された瞬間、俺に膝を付いて頭を垂れるシェーファに、


「いや、そこまで畏まらなくて良いぞ。それよりシェーファ、エルフはエルフという自分達の種族を誇りに思っている。あの行いを許せるか?」


俺はそう伝えると、シェーファは立ち上がりミノタウロス達の方を見ると、


「蛆虫が…」


静かな怒りの言葉を吐く。


「シェーファ、もし彼らを塔に連れて行くなら色々とサポートしてあげて欲しい」


俺がそう言うと、シェーファはハッキリと、


「私の方からお願いします。彼らの事を、私にお任せ下さい」


そう言ってくる。

すると、


「エルフッ?!しかも極上の女じゃねえか!あいつは散々嬲ってから売ってやる!」


男が興奮した様子でシェーファの事を見ながらそう言うと、


「牛ッ!殺さない程度にあの女を壊せッ!」


ミノタウロスに指示を出した。

男からの指示を聞いたミノタウロスが、腹の底から出したであろう雄叫びを上げると俺とシェーファに突っ込んでくる。


「シェーファ、好きにしろ。お前の判断に任せる」


ミノタウロスが迫っている間にシェーファにそう言うと、


「ありがとうございます、ヴァルダ様」


シェーファは俺に微笑みながらそう言うと、両手を前に出すと、


「サイズ・ブレイド・テンペスト」


静かに魔法を発動する!

その瞬間、こちらに迫ってきていたミノタウロスが霧散するように全身を切り刻まれ、肉体はギリギリ目に見える程細かく刻まれて、血の霧が発生する。

そしてその魔法は、ミノタウロスの後ろにいた者達にも届いていき、悲鳴も出す暇もなく一瞬の間にそこには誰も立ってはいなかった。

あるのは、やや積もった人であったひき肉と濃い血の霧。

そんな霧の中で、何が起きてたのか理解出来ずに血の霧の所為で赤く染まったエルフ達。

そして後を追って来るように血生臭さが風に流されて漂い、シェーファは優雅に振り返ると、


「ヴァルダ様、こちらをお使いください」


俺にそう言って白いハンカチを渡してくる。


「ありがとう。相変わらず、シェーファの魔法は凄いな」


シェーファから渡されたハンカチを受け取り、鼻と口に少し押し付けてそう言うと、


「これも、ヴァルダ様が私をそう育ててくれたお陰です」


シェーファも俺と同じ様に、鼻と口周りをハンカチを押し当てながら謙遜する。

後は少しまだ燃えている不帰の森の出火を消すだけだな。

俺はそう思い、今度は俺が水魔法で燃えている炎を消していく。

その間にリエスさん達が捕まっていたエルフの人達の所へ行き、ひき肉から距離を取ろうとしっかりと動けないエルフの人達を運んでいる。


「あぁ、魔法を使っているヴァルダ様…。素敵です」


俺が消火を行っていると、シェーファがそう言いながら俺の事を見つめてくる。

なんだろう、改めてこう褒められていると落ち着かない…。

一度シェーファを塔に戻しておこうかと考えていると、


「申し訳ないが、少しお聞きしても良いだろうか?」


リエスさんが俺とシェーファの元まで来てそう聞いてくる。

リエスさんの背後の奥の方を見ると、とりあえず1人ずつ集落に運ばれているのだろう。

地面に横たわっている人と、仲間に肩を貸してもらってなんとか歩いている人が見える。

俺がそんな様子を見ていると、


「…控えなさい、ヴァルダ様に直接話しかけるのは許しません」


シェーファが高圧的にリエスさんにそう言う…。


「待てシェーファ。俺は彼女達と友好的な関係を築きたいんだ。あまりそう高圧的に話してはいけない。それに、俺は優しく話すシェーファの方が好ましい」

「ヴァルダ様ぁ…」


俺がやんわりと注意をすると、シェーファが嬉しそうな声を出して、


「…ヴァルダ様に話す事を許可しましょう」


リエスさんにそう言う。

するとシェーファの言葉を聞いたリエスさんが、


「いや、私は貴女と話したいと思っている」


シェーファにそう言った…。

何だろう、凄く恥ずかしい。

勝手に誤解しちゃったしな…。

俺はもう魔法を使う必要は無いが、恥ずかしさを紛らわせる為に水やりの様に水魔法を使い続ける。


「私に…ですか?」


シェーファも少し驚いているが、そんなシェーファにリエスさんが、


「もしかしてと思うのですが、ハイエルフでしょうか?」


そう質問をする。

彼女の問いを聞いたシェーファは、


「はい。そうですが…」


少し疑問に思っていそうな声でそう答えると、


「どうか我らを、導いて下さいッ!」


リエスさんが忠誠を誓うかの様な、祈っている様に両手を合わせてシェーファにそう言った。


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