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蔓で手首を縛られた後、俺は檻には入れられず椅子に座ってただひたすら時が経つのを待っていた。

まぁこんな連中と同じタイミングでここへ来た不幸を呪うしかないんだろうな、俺はそう思いながら隣の檻の中の人達を見る。


「…ご…ごの゛野郎…」

「う、動けな…」


俺を連れて来てくれた人が見張りの人に何かを伝えた後おそらく集落に戻って行き、置いて行かれた俺は素直に適当な場所に座り黙っていた。

変に話し掛けると、見張りの人が棒を持って近づいて来る故に相当警戒されていると思い、無駄口を挿まない様にしている。

しかし隣の檻の中の人達はエルフに対して暴言を吐き、その結果棘が付いている棒で殴られて今動けない状態になっている。

おそらく、おそらく痺れ薬系を塗ってあるのだろう。

どんなに暴れようとしていても、動かす事が出来ずに声も思うように体を動かせないストレスと無駄に力を入れている所為で変な声になっている。

俺は冷静に隣の人達の様子を観察しつつ、どうすればエルフの人達に集落にいても安全だと思って貰えるだろうかと考える。

この人達を追い出す為に何かをしたとしても、おそらく仲間を逃がした的な扱いになるだろうし、殺しても意味が無い様な気がする。

どうしたものか…。

そんな事を考えていると、


「ん…何だここは?」

「おい、何だこれは?」


どうやら気絶していた人達が目覚めた様で、次々と困惑な声が聞こえてくる。


「お前等、エルフ狩りなんて少し大変だが良い金になるって話じゃなかったのかよ!」

「これも大変の内に入ってるのッ?!」


そんな目覚めたばかりの人達に、喚き声を出していた男女が声を荒げる。

痺れ薬は効いているだろうに、声を荒げる事に関しては止める事は出来なさそうだな。

手足は未だに小刻みに震えているが…。

男女の言葉を聞いた目覚めてすぐの人達は、困惑した様に自分達の事を縛っている蔓や手足の枷、自分達を閉じ込めている檻を見て、


「…畜生風情が…」


自分達の状況を理解していないのか、恨めしそうに見張りをしているエルフを睨みつけながらそう呟いた。

それを聞いたエルフの女性は、握っていた棒を檻の中に突っ込むと、棘が刺さる様に軽く振り下ろす。


「ぐッ!」

「いてぇッ!」


次々と棘に刺されて体の自由を奪われていく人達を見て、


「黙らせたいなら、猿轡とか噛ませた方が良いんじゃないですか?」


つい、そんな指摘をしてしまった。

すると、僅かに血が付いている棒を俺の目の前に向けると、


「無駄口を叩くな」


そんな注意をされてしまう。

今のは、口を出すなと言う意味か?

それとも声を出すなと言う意味なのか、少し考えてしまう。

もしも前者であれば、有用な意見などを言えば話す事も許してくれるかもしれない。

しかし後者であった場合、最悪気分を悪くさせて俺の立場がもっと悪くなるかもしれない。

どうするかな~。

俺はそう思いながら、ふと空を見上げる。

そう言えば、エルフの集落は女性が圧倒的に多かったな。

子供は男の子も女の子もいたけど、大人で男性はあまり多くない様に見えた。

森の見張りとかで、あそこにいなかっただけなのだろうか?

それとも、何か別の理由があるのかもしれないな。

でもそれを聞くのは、情報を盗もうとしていると判断されないだろうか?

だがここで何もしないで時間を無駄にする訳にもいかず、


「エルフの集落に行ったんですけど、男性が少なかった様に見えたんですが…。何かあったんですか?」


意を決してそう質問をする。

すると、


「…貴様等には関係ない事だ」


見張りの人がそう言って顔を背ける。

それを聞いて、ある程度なら話しかけても大丈夫だと考え、


「一応信じて貰えないかもですけど、この人達と俺は無関係なんですよ。だから、同列に扱わないで貰いたいんですが…」


俺がそう言うと、見張りの女性が疑わしい視線を送ってくる。

そして俺の言葉に、先程は自分達の仲間の人達を罵声していた男女が、


「ふざけんな!お前も俺達と同じ、エルフを人族の模造品とか思ってるんだろォ?!」

「こんな奴ら、家畜が大好きな変態の貴族達に売り渡した方がお互いに幸せになれるし!」


俺にそう言ってくる。

…そこにエルフの幸せは無い。

俺は男女の言葉に刺激され、つい腕に力を込めてしまう。

それと同時に、見張りであるエルフの女性が男女の言葉を聞いた所為で表情が一気に険しくなり、棒を握っていた手が小刻みに震える程力が入っているのが分かる。

しかし、こんな者達に近寄らせる事を考えただけで彼女を含めエルフに申し訳ないと思い、


「黙れ」


そう呟いて、威圧スキルを最大レベルで発動させる!

瞬間、奇声を発して痺れ薬で体の自由が封じられているにも関わらず、のたうち回る様に体を無理矢理動かして木で出来た檻を破壊するのではないかと思わせるぐらい、捕まっていた人達が一斉に発狂した。

その状況に、威圧スキルの影響を受けていない見張りの女性が、


「な、何だッ?!何を騒いでいるッ?!」


突然騒ぎ出した者達の様子に驚きつつ、棒を剣を構える様にして恐る恐る発狂している者達に近づいて行く。

これ以上は彼女に申し訳ないか。

俺はそう思い、威圧スキルを止める。

それと同時に、奇声を発して暴れていた人達が静かになる。

それに安心したのか、見張りの女性が構えていた棒を片手で持ち直し、


「何をしているッ?!……………??」


発狂をしていた人達に声を荒げるが、彼らが何も反応しないのに疑問を感じて首を傾げている。


「おい!」


そして、もう一度声を掛けても反応が無かった為、檻のすぐ横まで移動して項垂れている1人に近づいた瞬間、


「ひっ…!」


見張りの女性が短い悲鳴を出して後ずさる。

見ると、先程まで俺や見張りの彼女、仲間である者達に文句や暴言を吐いていた男が虚ろな視線を左右に揺らしながら何かを小声で呟いている。

息継ぎをしているのかと思うくらい、ただひたすら延々と何かを呟いている。

おそらくそんな状態になった者を初めて見たのであろうエルフの女性は、少し動揺しつつどうすれば良いのかと考えている様に前後左右に落ち着き無く歩いている。

俺はその様子に、


「とりあえず、仲間を呼んできた方が良いんじゃないですか?」


そう進言をしてみると、彼女はそうだなと何の疑いもせずに走って行ってしまった…。

相当気が動転していたんだろうな。

俺はそう思いながら、彼女が他の人達を連れて来るまで周りの景色を見ていた。


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