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俺は、ついカッとなって威圧スキルを発動させてしまった事を後悔しながら建物の裏に隠れる。

下手に騒いでしまったから、これから面倒だな。

俺がそう思いながら、汚い裏路地を歩く。

…どうするか、このままここにいても目立つだけだし、お金稼ぎをしたくても毎回人に絡まれそうで憂鬱な気分だ。

それにしても、まさかここまで亜人達の身分制度が徹底されているとは思わなかった。

俺が先程の奴隷達の扱われようを思い出しながらそう考えていると、


「どうもどうも、少しよろしいでしょうか?」


後ろから声を掛けられる。

人の気配は感じていたが、まさか俺に用があるのか?

俺はそう思いながら少し警戒しつつ振り返ると、建物の左角から恰幅のよい男性が笑顔で姿を現した。


「…何の用ですか?」


俺が男性にそう聞くと、


「先程の騒ぎを見ていたのですが、とても強いようですな」


男性がそう言ってくる。

…何が目的だ?

俺がそう思っていると、


「あぁ、警戒などしないで頂きたい。私は戦う力など持っていませんので」


男性がニコニコ笑って俺にそう言う。

戦う力が無い人が、あの場にいた街のほぼ全員が倒れた威圧スキルを耐える事は出来ないだろう。

俺がそう思って警戒していると、男性は俺の様子を見てハッとしてから、


「威圧スキルの事でしたら、ある程度耐性的なモノがあるのですよ」


そう言って更に、


「私は奴隷を売買している奴隷商人なんですよ。昔は無茶をして殺されそうになった所為で、死の恐怖を感じなくなってしまったのです」


思い出したくないであろう過去を笑顔で話す。

…「UFO」ではそんな事は無かったが、そういう抜け道があるのか。

俺がそう思っていると、


「貴方様の死の香りは面白かった!今まで10回以上の死の具現化を見てきましたが、貴方様の力は段違い!」


男性は何故か興奮しながら大きな声でそう言ってくる…。


「あ、あぁ。それで、俺にわざわざ何の用ですか?」


俺が男性の興奮気味の態度に引いていると、男性は失礼と言って落ち着いてから、


「奴隷はいりませんか?」


そんな事を言ってきた。

まさかの客引きだった。


「貴方様は亜人達に対してお優しい。それは威圧スキルを発動した時に近くの男の子の亜人に声を掛けていたから分かります。その男の子にも何て言われたか聞きましたからね」


男性がそう言って、服の中に手を入れる。

すると、服の中から何やら名刺程の大きさの紙を出して俺に差し出してきた。


「私はそこそこ大きな奴隷商売の拠点があります。その他にもここの様な少し栄えている街ならあります。まぁまだ交渉が難航していたり、他の商売敵と話し合いをしているんですがね。貴方様は私にとって良い顧客になって下さると思うんですよ。これは私のサインが入った紙です。これがあれば、私が経営をしている奴隷館で奴隷を買う事が出来ますし、その傘下に入っている店でも奴隷を買う事が出来るでしょう」


紙を差し出しながらそう言ってくる男性に、俺は考える。

確かに、俺は奴隷を保護すると決めた。

今すぐにでもそうしたい気持ちはある。

だが、無差別に人を殺して、その人達から奴隷を取るつもりは無い。

…この人は俺の事を随分と評価している様だが、俺はまだこの男性の事を何も知らない。


「…この紙を受け取る前に、貴方が言っていたこの街にある奴隷館に案内して下さい。そこで貴方の事を信用しましょう」


俺がそう言うと、男性はまさか俺にそう言われるとは思っていなかった様な呆けた表情をした後、


「では、案内しましょう。付いて来てください」


そう言って歩き出した。

俺が男性の後ろを付いて歩いていると、裏路地から大通りに出てきてしまう。

先程の争いの現場から少し離れている所に出てきた俺は、争いの現場の方に目を向けると、


「おい!大丈夫か!」

「大丈夫だ!誰もお前を殺そうなんて言ってない!」

「来るなぁァァァッ!!」


何やら阿鼻叫喚な状況になっている。

起こされたであろう人達は頭を振り回したり、近づいてきた人達から逃げようと攻撃的になっていたりしている。


「死の恐怖の所為で、気が狂ってしまったんですね。…ああいうのは家族などに不要と思われて奴隷として売られます。男は肉体労働で使えますし、専門の知識があればそれを活用できますよ。女も同じですな」


俺がそんな光景を見ていると、男がそう言ってくる。


「どんな人が奴隷になるんですか?税が払えない人とかは知っていますが…」


俺がそう聞くと、


「人の奴隷は何かしらの状況で税を払えなかった者の他に、犯罪を犯して捕まった者、口減らしで家族に売られた者など、本当に様々な理由で売られに来ます。まさに者の数だけ売られる理由があると言っても過言では無いです」


男はブラム村の村長が教えてくれた情報と同じ事を教えてくれる。

男はそう言うと、歩みを再開する。

俺もその後ろを歩いていると、少し大きな建物が見えてきた。

男はその建物の前で止まると、


「ようこそ、楽園へ」


そう言ってきた。

すると、男は建物の扉を開けて俺を迎える。

…もし罠でも、パッシブスキルの毒耐性、麻痺耐性があるから大丈夫だろう。

俺はそう思い、建物の中に入る。

中に入ると、そこには首に枷が着けられた人がお辞儀をしているのが見える。

見た所、結構普通だ。

奴隷が売られている所だから、少し衛生面とか悪いと思っていたのだが…。

俺がそう思っていると、


「おかえりさないませ、旦那様」


お辞儀をしていた女性が彼女に近づいた男にそう言う。


「この人は貴方の奴隷なんですか?」


俺がゆっくりと歩いてそう聞くと、


「いえ、彼女はこの奴隷館で働いてくれる者ですよ。奴隷なのは間違いないですがね」


男性がそう言って女性の隣に立つと、


「改めて、私はブルクハルトと申します。この奴隷館及び、その他様々な奴隷を売っている店を管理している支配人でございます」


男は笑顔でそう言ってきた。

思わぬ所で、結構な大物に会ってしまった様だ。

奴隷を売っている店の支配人。

最悪、彼に嫌な客だと思われたら奴隷達を保護するのが叶わなくなる。

…慎重にならないとな。

俺は目の前でニコニコ笑っている男性を見て、今までとは違った緊張をする。


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― 新着の感想 ―
[一言] 奴隷を買うとかありえないでしょ?奴隷商人とつるむとか奴隷制度を何とも思ってない証拠じゃん。奴隷を保護する?(笑)保護する前に奴隷制度や差別を無くす努力をしたら?
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