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普段俺が見ている木より遥かに太く大きい木に、窓がはめ込まれている光景は凄いとしか感想が出ない。

ジャブジャブさんの様な家の造りではあるが、エルフの人達の家はしっかりと家として機能しているのだろう。

太い幹に木の杭みたいな物が刺さっており、そこから枝へ、そして杭へと自然の枝を織り交ぜた階段が出来ている。

階段の頂上には、玄関と思われる扉がある。

俺がそんな光景を見ていると、集落のエルフの人達が俺達に一斉に視線を送ってくる。

数は多くは無いが、一斉に視線を上から向けられるのはホラーみたいだな、と冷静にそんな事を考えてしまった。

俺がそんな事を思っていると、


「人族かッ?!何で連れて来たッ!」


上の方から怒気を孕んだ言葉が飛んできた。

その声と共に、子供は家の中へと入って行き男女が弓や剣などを構える。


「この者は抵抗の意思が無く、攻めて来た人族を無力化する事に協力してくれた可能性がある!」


俺の前に立っているエルフの1人が、俺の事をそう報告する。

しかしその言葉は信じて貰えない様で、状況はさらに悪化し弓には矢が準備されてしまっているし、剣は抜かれている…。

…今俺が声を出したら、状況は更に悪化しそうだな…。

出来れば無害なイメージで通したいのだが…。

俺がそう思っていると、


「その者と襲撃者達が内通している可能性は無いのかッ?!腕利きのその男だけを仲間では無い様に見せかけて、ここまで案内させてから私達の目を掻い潜って逃げ出し、襲撃者達に場所を教えるの可能性は無いのかッ!?」


そんな質問をされる。

それに対して、


「そ、それは…」


なるほど、確かにその方法は考えられる。

的確な指摘をされてしまったエルフの女性が、口を噤んで俺の事を見てくる。

一応首は振っておくが、あまり信じてはもらえないだろう。

俺がそう思っていると、更に様々な可能性が出てきて更に俺の状況は悪くなっていく。

どうしたものかと思っていると、


「これは…どういう状況だ?」


俺の後ろからそんな声がしてきて、俺は後ろを向く。

そこには俺達と別れ、襲撃者達をどこかへ連れて行った人達が集落の様子を見て驚いていた。

それもそうだろう、気絶した襲撃者達をどこかは知らないが捕縛し置いて帰ってきたら、今度は集落の者達が武装し何やら言い合っているのだから…。

何だろう、申し訳無さを感じてきた。

いっそ帰ってしまいたくなってくる。

俺がそんな事を思っていると、


「皆落ち着けッ!…ひとまずこの男は集落に害を及ぼす。少し離れた場所に軟禁するのが得策だと進言する!」


後ろにいた人が、木の上で俺の事を敵視してくる人達に演説をする様に1人1人に確認する動きをする。

え、軟禁されるの俺?

俺がそう思っていると、それでも駄目だと言って今すぐに殺してしまおうと言う人が多い。

…もう、襲撃者達を殺してきて仲間じゃない事を伝えた方が早いのではないか?

そう考えていると、流石に多数から殺すか襲撃者達と同じ所へ移動させるかという選択肢が出てきて、俺の事を僅かだが庇ってくれていたエルフの人達も、


「分かった。皆の言う通り、襲撃者達と同じ場所へ連れて行く」


根負けして、俺に振り返る様に言ってくる。

俺は女性の言葉に従って後ろに振り返り、歩き出すように言われて来た道を戻り始める。

…あの襲撃者達と同じ場所に行くのか、ある程度予想はしているが、何でここにいるのか聞くのもアリだな。

俺がそう思っていると、


「こっちだ」


今さっき俺の後ろを歩いていたエルフの女性が、少し早歩きで俺の横を通り過ぎると来た道から別の道へと案内をしてくれる。

しかし、今までは獣道っぽかったが道があったのだが、今から進もうとしている方向には植物がうっそうと茂っていて、歩くのも大変そうだと感じる。

俺がそんな事を思っている内に女性は先へと進んでいき、俺も少し遅れて後を追いかける。

そうして道なき道を歩き続けて少しすると、


「くそッ!何でこんな事になってんだ!」

「あのまま行けば3人は連れて帰れたのに、まさか俺達が捕まるなんてな…」

「冷静にそんな事言ってないで、どうにかしてここから出る方法を考えなさいよ!」

「静かにしろッ!」


何やら喚き声と、それを叱咤する声が聞こえてくる。

そして喚き声がする方へと歩みを進めると、


「…これは…」


少しだけ拓けた場所に辿り着き、喚き声の発生源である襲撃者達が縛られていた。

先程の声は武装をしていた人達だが、今もなお気絶から目覚めていない人達も結構いるな。

俺がそう思っていると、


「悪いが、縛らせてもらう」


俺の先を歩いていたエルフの人が、おそらく見張りの人から木の蔓を渡してもらい俺にそう言ってくる…。

いや、木の蔓って…。

俺が彼女が握っている縄と呼んでも良いのか疑わしい木の蔓を見ていると、


「…この者達よりかは逃げ出す恐れが無い故に、蔓にしておく」


エルフの女性がそう言って手を出せと言ってくる。

なるほど、確かに彼らと俺とでは色々と違う様だ。

手首には木材で作った様な手錠が嵌められており、足首にも同様な足枷で身動きが取れない様になっている襲撃者達一行を見ながらそう思う。

手錠や足枷だけではなく、俺が縛られている蔓で胴体をグルグル巻きにされており、そこから更に木の檻みたいな所に押し込められている。

あれに比べれば、俺の手を縛られている状態に文句など言えない。

俺がそう思っていると、


「…何見てんだお前ッ!?」

「1人でエルフ狩りなんて、いくら何でも無謀すぎでしょ~」


先程から威嚇をしている様に大声で怒っている男と、仲間であろう女性が俺に声を掛けてきた。

それにしても、女性から聞き捨てならない言葉が聞こえた。

エルフ狩り、おそらく意味など聞かなくても言葉だけで分かるな。


「貴様達と一緒にするな。むしろ貴様達の所為で俺までこの様な目に合っているんだ。どう責任を取ってくれるつもりだ?」


俺が低い声で淡々とそう言うと、俺の言葉を聞いた人達が何かを言おうと口を開けたが…。


「静かにしろ!静かにしなければ、少し痛い目を見る事になるぞ」


見張りのエルフの女性が、何やら棘の付いた棒を握っている姿を見て、彼らを苦虫を噛み潰したような苦々しい顔で黙った。


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