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ザルツェンを飛び出した俺は、追手が来てない事を確認してからカルラを召喚して空の旅に出ていた。
カルラの背中に地図を広げ、飛ばされない様に抑えながら次の目的地を探す。
ここから先は、未開拓なのだろうか?
地図を見ると、地図の半分くらいが森の緑に覆われている。
ここがエルフの森なのだろうか?
俺は色々な疑問を頭に抱えながらも、
「カルラ、とりあえず向こうへ頼む」
カルラに指示を出す。
とりあえず、先に進んでみないと分からない。
俺からの指示を聞いたカルラは、鳴き声を出して俺の指した方向に進路を変えてくれた。
それにしても、この地図にも帝都が書かれているな。
何だろう、帝都を書かなければいけない事情でもあるのだろうか?
帝都を無理矢理書いてある所為で、距離感が分からなくなってしまっている。
帝都と最初に行った国が隣と言っても良い程近いのが、すでにおかしい。
それにしても、ザルツェンは面白い国だったな。
ドワーフは、あそこまで頑丈な人達なんだな…。
いや、ゲルテンホさんが異常に頑丈なだけか?
俺はゲルテンホさんがハンマーでタコ殴りされている光景を思い出し、その後普通に動いていた事を思い出し苦笑しつつ、
「カルラ、最近塔の様子はどうだ?」
俺は空を優雅に飛んでいるカルラにそう質問をする。
最近忙しくて、塔の皆とも会話をしていなかった。
…主として、彼らとの会話を疎かにする事は最悪の事だ。
今日の進み具合によっては少し塔の皆との時間に時間を費やすか。
俺がそう思っていると、
「ピャァ~」
カルラが声を出す。
視線を上げて前の方向を見ると、広大な森が視界を埋め尽くしている。
あまりの広さに、俺はこれが全てエルフの森だったらと考えると愕然としてしまう。
その瞬間、森から矢が飛んでくる!
「カルラッ!」
俺が声を出すと、カルラは一気に翼を動かし加速し、飛んでくる矢を回避する。
エルフかどうかは分からないが、ある程度の知性がある者がいる事は確かだろう。
それにしても、どれだけ俺を排除したいんだ…。
数は少ないが、絶えず矢を放って来ている…。
一度出直した方が良いか?
俺がそう思っていると、矢が飛んでこなくなる。
それと同時に、僅かな爆発が森で発生する…。
俺とカルラのいる位置まで矢が飛んでくるとは思わなかったな、結構な高さまで飛んでいるっていうのに…。
…それにこれ、俺1人を相手にしてる訳では無いかもしれないな。
一度森の入り口に降ろして貰おう。
俺はそう思うと、
「カルラ、森の入り口で降ろしてくれ」
カルラにそう指示を出し、カルラは俺の指示に従って降下してくれる。
少し凹凸が目立つ野原に降り立つと、違和感を感じる。
しかしそれが何に対してと分からずに少し気にしつつも、俺はとりあえず森の中に入って爆発の影響で出ている煙の方に走り出す。
最近雨でも降ったのか、地面がぬかるんでおり俺以外の足跡が少しあるのが見える。
足元に気を付けながら走っていると、少し遠くから争っている様な声が聞こえてくる。
…気配察知のスキルを使用しておくか。
俺はそう思いスキルを発動しながら、身を潜めながら声がする方向に進んでいくと、何人かの気配がスキルに反応して位置を理解する事が出来た。
木の上に4人と少し薄く感じる何かの気配が3人?、俺の前の方向に6人、互いの位置に倒れている人が数名か。
俺はコソコソと更に近づいて行くと、ある光景が目に入る。
木の上で弓を構えているエルフの女性達と、それに敵対している様に睨みつけている男女の一団。
明らかに状況はエルフの人達を、何かしらの理由で襲っている人達が悪い様に見えるのだが…。
いやしかし、ただこの森を横断したい人達を何かしらの理由でエルフが襲っているのかもしれない。
…しかしここから出て行くと更にややかしい状況になりそうだな。
でもこれ以上放っておくと、エルフの人達が怪我をしてしまう可能性がある。
仕方がない、一気に飛び出して威圧スキルを発狂しない程度に発動させれば大丈夫だろう。
俺が飛び出そうとしたその瞬間、
「…動くな」
「動いたら頭を穿っちゃうぞ~」
背後からいきなり声を掛けられる?!
気配察知スキルに反応は無かった、隠密スキルが高いのか?
俺はそう思いながら、
「…この状況で信じて貰えないかと思いますが、俺はあそこで貴女達エルフと睨み合っている人達とは別なので、出来れば弓を下ろして貰えれば嬉しいんですが…」
背後にいる人達にそう進言するが…。
「…それこそこの状況で、私が弓を下ろせると思っているのか?」
背後にいる人が俺の言葉にそう答える。
ですよね…。
背後の人の言葉に俺自身も頷いてしまう。
疑うなって言う方が無理がある。
それにしても、向こうも膠着状態だな。
エルフの人達は矢の残りが少ないのか、矢筒を気にしている様子が見える。
反対に敵対している人達は遠距離で攻撃する手段が無いのか、構えている剣など以外の装備が無い。
そして俺も動くなと言われてしまった、完全に膠着状態である。
状況が動かない今、俺は何をしたら良いのだろうかと考える。
とりあえず威圧スキルで、エルフ達に敵対している人達を気絶させたら少しは信じてくれるだろうか?
俺はそう思い、
「あの、今あの人達を無力化させる事が出来たら、少しは俺の事信用してもらえますか?」
背後の人に質問をする。
俺が質問をすると、
「一歩も動かないでそれが出来たら、信じてあげても良いよ~!キシシッ」
2人いた背後の人物の、少し明るそうな人物が笑いながらそう言う。
「お、おい!勝手に判断するな」
そしてそのもう1人が、止める様にそう言うのが聞こえる。
動かないであの人達を無力化させる、簡単な事で安心できた。
これで無理難題でも押し付けられたら、どうしようかと思った。
俺は少し安堵しつつ、
「約束ですよ?」
俺に条件を出してくれた背後の人にそう声を掛けると、俺は威圧スキルを発動した。
その瞬間、エルフの人達と敵対していた人達が膝から崩れ落ちて地面に倒れる。
…ぬかるんでいる地面に倒れさせてしまった事に、少し申し訳ない気持ちになってしまった…。
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