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結局あの後ゲルテンホさんの家に泊まる事になった俺は、ゲルテンホさんのいびきに苛まれてあまり眠る事が出来なかった…。


「グオォ~が甘いくらい凄かった…。あんなのドラゴンの咆哮並みだ…」


俺はそう呟きながら、ザルツェンの街を歩く。

寝不足のまま朝になって起こされてしまった俺は、当分仕事には行かないと言ったギルベルタさんにお店の位置を聞いたのだが、道案内までしてくれるとは思わなかった。


「あ、あはは…アレの所為で元々は皆で同じ部屋で寝てたんですけど、私と母は別の部屋に移したんです」


俺の呟きに、申し訳無さそうにそんな事を教えてくれるギルベルタさん。

そうしてギルベルタさんの案内のお陰で無事に地図が買えた俺は、道具屋の前で解散しようと思っていたのだが…。


「門までお見送りさせてください」


とギルベルタさんに言われてしまい、それくらいなら良いだろうと思い再度彼女と2人で歩く。

それにしても、ここにはドワーフと人族しかいないのかな?

俺は街を見ながらそう思い、


「そう言えばギルベルタさん、どうして帝都に行きたいと思っていたんですか?」


検問所までの道の合間、少し気になっていた事を質問する。

すると、俺の質問を聞いたギルベルタさんは少し残念そうな表情で、


「私、こんなでもドワーフなんで…。鉱石を集めて、それを加工して自分自身のモノを創りたいんです。けど、私はまだ半人前で…。父みたいに1人で全ての作業が出来ないですから、採掘の為に鉱山に入るのも2人からなんです。その時に、ビステルさんみたいに帝都から来た人の話を聞いたんです。帝都には全ての物が揃っているから、帝都にいる人達は剣を打つにも鋼を買いにお店に行くらしいです。そこでなら、私は鍛冶師としての夢が叶うんじゃないかって思って、それを父に言いました。その結果が、父との喧嘩の原因で…」


なるほど、ドワーフとしての夢の為に帝都に行きたかったのか。

ギルベルタさんの言葉を聞いた俺は、


「…ゲルテンホさんが止めたかった理由は、多分帝都の怖さを知っているのとはもう一つ別の理由がありそうですね」


そう言う。

それを聞いたギルベルタさんは少し慌てた様子で、


「そ、それは何でですか?」


俺にそう聞いてくる。

ギルベルタさんの問いに答えようとすると、


「見つけたぞドワーフッ!?」


怒号が聞こえてくる。

声が聞こえる方に視線を移すと、何やら包帯を巻かれた男が俺達の方に大股で向かってくる。

顔に巻かれている包帯で分からなかったが、近くに来た相手の顔を見て、


「あぁ、ギルベルタさんと一緒にいた人か」


俺は確認の為にギルベルタさんに声を掛けると、彼女は頷く。

見ると、別に怯えている様子は無い。

俺がギルベルタさんの様子を見ていると、怒っている人が俺とギルベルタさんの元に来て、


「このドワーフがッ!てめぇの所為で俺はこれからどうやって生きていけば良いんだ!この怪我だぞ?!完治にどれくらい掛かると思ってるんだッ!」


そんな事を一気に怒鳴りつけてくる。

…おそらくこの人の怪我は、デマリーザさんの手によってやられたんだろう。

というか、この人の怪我はギルベルタさんの所為では無いだろう。

仕事のパートナーとして、仕事のミスを注意するのは悪い事だとは思わない。

だが、手を出すのは明らかにやり過ぎだ。

俺はそう思っていると、


「こ、鉱山の採掘でミスをしたのは謝罪します。すみませんでした」


ギルベルタさんが頭を下げる。

すると、


「この怪我はお前と同じドワーフのババァから受けたんだッ!それも含めて謝りやがれッ!」


男性がそんな事を言ってくる。

口を挟んでも良いか?

俺はそう思いつつ、問題になってもこの後すぐにこの国を出るつもりだし良いだろうと考えて、


「むしろその程度の怪我で済んで良かったと思いますけど?」


そう男に反論する。

あんた、ゲルテンホさんみたいに殴られたいのか?

今の状態がボロボロなら、ゲルテンホさんと同じお仕置きをされたらズタボロだぞ?

歩けるだけマシだ。

俺がそう思っていると、


「…何だてめぇ?部外者は口出すんじゃねぇよッ!」


男性が俺に怒鳴ってくる…。

あまり大きな声を出すと傷に響くだろうに…。

俺はそう思い、


「彼女はちゃんと仕事のミスに関して謝罪をしています。その後の事は彼女には関係ない事です。それに対しての謝罪は、彼女がする必要な無いと思いますが?」


男性にそうしっかりと嘘を言う。

完全に彼女が関係して怪我はしているが、その事に対してはこの人に債がある。

ギルベルタさんが謝罪する必要は無い。

俺がそう思っていると、


「関係無い奴が横から口出しするんじゃねぇって言ってんだろォがッ!」


挑発する気はなかったが、俺の指摘に苛立った男性が俺に向かって拳を突き出してくる。

流石鉱山で仕事するだけあって、攻撃力がある拳を出してくる。

この勢いで、片手で持てるハンマーで殴られたら痛いだろう。


「…亜人族を傷つけるな」


俺はそう呟くと、迫ってくる拳を避けてそのまま突き出された腕を掴み、男性の勢いにプラスして体ごと投げ飛ばす。

体重を乗せた勢いに俺の力を足した結果、結構痛そうな音を出しながら建物の壁に激突する男性。

痛みで声が出せないのか、息が詰まった様な短い声だけが聞こえてくる。


「行きましょうギルベルタさん」

「は、はい!」


俺が声を掛けると、ギルベルタさんは地面を転がる様に倒れている様子を見ていたギルベルタさんは驚いて俺の後を追いかける。

男性の声が大きかった所為で注目を集めてしまっていたが、俺とギルベルタさんが人垣に近づくと急いで避けてくれて助かった。

すると、騒ぎを聞きつけてやって来た騎士達が騒動鎮圧の為に騒ぎの中心にいた俺達に声を掛けようとしてくる。

ここまで来て時間を無駄に使いたくない俺は、ギルベルタさんの手を握って走り出し、入って来たザルツェンの検問所の門に向かいつつ、


「ゲルテンホさんが、ギルベルタさんを帝都に行かせたくなかった理由言ってませんでしたね。推測ですが、ギルベルタさんにドワーフとしての信念みたいな、志を教えたかったんじゃないですか?帝都で簡単に手に入る金属を使ってモノを創るより、自分で採掘しその鉱石や金属で自身の作品を創る事が、ドワーフとしての誇りがあるんじゃないでしょうか!」


俺に引っ張られて慌てているギルベルタさんにそう伝える。

後ろから待て~っや、止まれという騎士達の声を聞いていると、


「…ドワーフの誇り」


ギルベルタさんが少しハッとした様子でそう呟く。


「こんな形でお別れなのは申し訳無いですが、検問所もこの道の先にあるのは見えているので大丈夫ですので、ギルベルタさんは頑張ってあの人達に事情を教えてあげてください!では、また会える日を楽しみにしています!」

「えぇッ?!?」


俺が別れの挨拶をすると、ギルベルタさんは驚いた声を出して反応する。

その瞬間、俺は彼女の手を離して足に力を入れて一気に加速をし、止まる様に要求していた検問所にいた騎士達の間をすり抜けてザルツェンを後にした。


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