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223頁

女性が家を出てから数分後、穏やかな顔をして娘さんと一緒に帰って来た。

娘さんは、何やら凄まじい光景を見たのか恐怖に染まった表情をしている…。

そんな2人を見ただけでおそらく何があったのか悟ったらしく、男性はテーブルに視線を落とす。

まるで、次の標的が自分にならない様に影を薄めている様だ…。

しかし、


「あなた~、ギルベルタから話を聞きましたよ~」


僅かな抵抗空しく、女性に目を付けられる男性。

すると、


「あ、あれ?貴方は…」


娘さんが俺に気づいて、驚いた顔をしている。

それはそうだろう、先程自分に声を掛けてきた人が自分の家に帰ってきたら父の対面に座っているなんて、理解できないと思う。

むしろ、やばい奴と思われそうだ。

せめてそう思われない様に、


「えっと、すみません。何故かお父様に連れて来られてしまいまして…」


俺は低姿勢で改めて挨拶をする。

それを聞いた娘さんは、


「す、すみません父が!」


事情を察してくれたのか頭を下げて謝罪をしてくれる。

それは良いのだが…。


「なッ!んッ!でッ!ギッ!ルッ!ベッ!ルッ!タッ!をッ!たッ!すッ!けッ!なッ!かッ!たッ!のッ?!」

「ゴふッ…げふッ…」


部屋の片隅で行われている処刑に、この子は何か思う事は無いのだろうか?

振り下ろされるハンマーが空を切る音が、どんどん鋭くなっていくのだが…。

それに、あの振り下ろしを食らってもピンピンしているドワーフの頑丈さに驚いてしまう。

だが、


「ふんぬッッ!!」

「~~~ッ?!?!?!……………」


ハンマーによる男性としては最凶の攻撃を食らったドワーフの男性が、悲鳴にもならない絶叫を出した後泡を噴いて意識を失ってしまった。

お仕置きのレベルが違う…。

流石のドワーフも、あの攻撃はダメージがある様だ…。

というか、男性が気絶してしまったら俺は一体どうしたら良いのだろうか?

元々男性が俺をここへ連れてきて、話があったようなのだが…。

俺がそう困惑していると、


「すみませんね~この人が」


女性は片手でハンマーを担ぎ、片手で倒れた夫である男性を引きずってどこかへ連れて行った…。

もう帰りたいのだが、帰ってはいけないのだろか?

俺がそう思っていると、


「あ、あの…父と母がすみません」


娘さんが頭を下げてくる。


「い、いや。気にしないでください」


俺がそう言うと、


「ギルベルタ、手伝って~」

「は、は~い!」


娘さんがお母さんに呼ばれてキッチンに向かう。

そうして少しすると、


「お見苦しいモノをお見せしてすみません」


お母さんである女性が、そう言いながら対面に座って俺にお茶菓子を差し出してくる。


「い、いえ…」


俺がそう答えると、


「改めて、あの人はゲルテンホ。私はデマリーザ。それでこの子が…」

「ギルベルタです」


自己紹介をしてくれた。


「俺はビステルと言います」


俺も2人に名前を告げる。


「ごめんなさいね、あの人の所為でこんな所に連れて来ちゃって」


デマリーザさんがそう言ってニコニコと笑ってくる。

俺は彼女の言葉に首を振るう。

何だろう、実力では負ける気はしないが気持ちの面で彼女に負けている気がする。


「いえ。何か話があったようですが、今日は話せる様子ではありませんよね?」


俺がそう聞くと、デマリーザさんが男性…ゲルテンホさんを連れて行った扉の向こう側に視線を送り、


「あの人の事だから、ギルベルタの事で変な言いがかりを言ってきただけよ~。ビステルさんはあまり見ない顔ですけど、外から来た人なんですか~?」


ある意味正解を言い当て、話題を変えてそう質問をしてくる。


「えぇ。帝都から少し用事があって…。今日はこの国で一泊する予定でここへ来たんですが、たまたまギルベルタさんとその連れの人の状況を見て、止めに入った感じですかね」


俺は誤解が無い様に、真実をしっかりと伝える。


「そうなのね~、ギルベルタはしっかりとお礼を言ったの?」


デマリーザさんがギルベルタさんにそう聞く。

その問いにギルベルタさんは少し焦った様な様子になる。

おそらく、色々とあった所為で記憶が曖昧なのだろう。


「大丈夫でしたよ。しっかりとお礼を言って貰いました」


俺はギルベルタさんにそう助け舟を出す。

その言葉に、ギルベルタさんはうんうんと頷く。

お母さん、怖いんだろうな…。

俺がそう思っていると、


「…あの、聞きたい事があるんですが…」


ギルベルタさんがそう声を出して俺の事を見てくる。

どうしたのだろうか?

俺はそう思いつつ、


「何ですか?」


彼女に聞き返す。

俺の言葉を聞いたギルベルタさんは、隣に座っている母の顔を見た後、


「帝都では、亜人族の差別が酷いと聞きます。それは、どれくらい酷いモノなんでしょうか?」


そう聞いてきた。

その問いに俺は、どう答えた方が良いのか考える。

別に真実を話すのは良いのだが、それをどこまで話せば良いのだろうか?

すると、


「包み隠さずに、本当の事を教えてあげてくださいビステルさん?」


デマリーザさんが先程の笑顔から、真剣な表情でそう言ってくる。

その言葉に俺は、


「分かりました」


そう呟いてから、俺は帝都で見た亜人族の差別の様子を大まかにギルベルタさんに教える。

街の光景から、奴隷にされている亜人族がどの様な扱いを受けているのかなど、少しずつ説明していく。

俺が亜人族の事を説明していく内に、ギルベルタさんは表情を曇らせてどんどん顔色が悪くなっていく。

流石に悪いと思いある程度説明が終わった所で話を切り上げると、


「お父さんの言ってた事、嘘じゃなかったんだ…」


引き摺られていった父の方を見ながらそう呟くギルベルタさん。

彼女とゲルテンホさんが顔を合わせない理由は、帝都の亜人族の話と繋がっている様に感じる。

すると、


「ギルベルタ、あの人も何も貴女が憎くて帝都に行かせない訳では無いのよ。ただ、ビステルさんが言う通り帝都ではまずまともな生活が出来る亜人族が少ないという事は理解して」


デマリーザさんが、落ち着いた声でギルベルタさんにそう言う。

なるほど、理由は知らないが帝都に行きたいギルベルタさんと、行かせたくないゲルテンホさんの親子喧嘩に少し巻き込まれたという訳か。

母の言葉に、ギルベルタさんは申し訳無さそうな表情で頷く。

それから少しの間、部屋にしんみりとした空気が支配していたのだが…。


「帝都にも、嫁にも行かせないぞギルベルタ~ッッ!!」


隣の部屋から聞こえてきた絶叫に、親子は引き攣った笑みを浮かべている。

俺は、もう帰っても良いだろうか?


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