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そうしてアンリと話し合いを続けて、剣聖側の事も狭間の町の住人もアンリが頑張りたいと言い切る…。
最初は俺も全てを請け負うのは大変だと言う事を説明し、他の者に任せてみないかと聞いたのだが、アンリは自分がやるべき事だと言い切って譲らないので、引き続きアンリに任せる事でその話は終わった。
今度はそれをする為に、どうするかという事を話し合うのだが…。
「やはり、ジーグに戻る為には八尺さんやジャブジャブさんとかの、狭間の町の人達の協力がなければここから出られないって事だな」
問題はそこにあった。
「ぽぽぽぽ、ぽぽぽぽぽぽぽ」
「私も、ハッシャクと同じで協力するのは良いんだけどね~。シェルガが何て言うかが問題だよ~」
ジャブジャブさんが言うには、シェルガさんの許可がなければこの町から外に出る事が出来ないそうだ。
八尺様はその資格を得ているが、彼女がアンリを外に出すにはアンリ自身にその許可が必要らしく、最初に戻す事が出来た事態が凄い事だったらしい。
つまり今の状況は、シェルガさんに信用してもらい許可をもらわなければここから出ることは不可能だという事だ。
俺はどうしようかと考えていると、
「そう言えば、ジャブジャブさんはハーピーですけど、シェルガさんは龍人で合ってますか?」
ふと気になって、ジャブジャブさんと外にいる八尺様にそう聞いてみる。
俺の質問を聞いたジャブジャブさんは、
「あぁ~、シェルガはジャバウォックって言う原初のドラゴンだよ~。ただ名前が嫌いらしくて、シェルガって自分で改めたんだけどね~。龍人っていうよりも、長い年月を掛けて体を変質させる事が出来る様になっただけだから、種族的に言えばただの長生きなドラゴンなんだよ~」
笑いながらそう答えてくれる。
つまり、レオノーラさんとは違うという事か。
それに、ジャバウォックならジャブジャブさんと同じ不思議の国関係の人だな…。
一体どういう経緯で、この世界に存在しているのだろうか?
俺はそう思いつつ、ある言葉を思い出していた。
存在が曖昧な者達が集まる町、それが狭間の町だと言っていたな。
「ジャブジャブさん、存在が曖昧というのはどういう事ですか?」
俺がそう聞くと、
「それは、私達が噂程度の認識でしかいられない存在って事だよ~。ハッシャクが良い例だね~。ハッシャクはジーグにいたお爺さんが、悪い事をした子供達にこういう事をしたら、○○っていう名前の怪物が出てきて悪い事をした子供を連れ去るんだぞ~っていう話から、噂が大きくなって存在が成長して今存在してるんだよ~。だから、噂されなくなったら私達は死んじゃうんだ~」
ジャブジャブさんは少し笑った後、悲しそうな表情をする。
彼女の言う通りならば、噂は噂でしかなく存在もいつまで持つか分からない。
もしかしたら、明日には仲が良い知り合いが消えているかもしれない。
「………」
そう考えたら、彼女達の切迫した状況である事を改めて認識した。
ならば、俺がする事は決まった。
狭間の町の住人の話を、誇張して帝都に流せば良いのだ。
それだけで、おそらく話はドンドン広がっていくだろう。
とりあえず取引材料は得たな、少し小さい気もするがそれくらいで十分だろう。
今は信頼され、狭間の町を出入りする事が出来たら十分な成果だ。
「…アンリ君ちゃんは食べちゃいたいくらい可愛いけど、ヴァルダくん押し倒されたい感じだね~。ハッシャクはどう~?」
「…ぽぽぽぽ、ぽぽぽぽぽぽ」
少し離れた所でそんな会話をしているジャブジャブさんと八尺様…。
八尺様は相変わらず何て言っているか分からないが、ジャブジャブさんは理解している様で結構楽しそうに話している。
「さて、俺もアンリもやる事はまだまだ沢山ある。早く話をしに行こう。ジャブジャブさん、シェルガさんの居場所はどこですか?」
俺がそう聞くと、ジャブジャブさんは外に向けていた顔を俺の方に向けてきて、
「シェルガの場所なら、案内するよ~。簡単にはいけない場所だからね~」
そう言い、開けていた窓?を外した木の部分をはめ込むと、先に上に上がってしまう。
俺とアンリも彼女に続いて入って来た扉を通り、八尺様がいる地面に降り立つと、
「じゃあ~、出発~!」
空を飛んでいたジャブジャブさんが、そう言って出発した。
「えっと、八尺さんも来ますか?」
俺がそう聞くと、
「…ぽぽ」
彼女はそう呟いて頷く。
少し分かった様な気がする、今のは…うんと言ったのではないだろうか?
俺がそう思っていると、
「早く早く~、置いてっちゃうぞ~!」
ジャブジャブさんはそう言いながら旋回しながら俺達を待っている。
待たせるのは悪いと思い、俺達はジャブジャブさんの後を追いかける。
狭間の町を通るらしく、再度狭間の町に戻ってくると、
「アンリ、耳を塞いでおくと良い」
俺はアンリにそう指示を出していた。
俺の指示を聞いたアンリは素直に俺の言葉を聞き、両手で耳を塞ぐ仕草をする。
町の住居から聞こえる女性の嬌声と、男性の悶えている様な声が聞こえてきて、俺はアンリに指示を出したのだ。
それにしても、随分と苦しそうな声が聞こえるが大丈夫なのだろうか?
すると、
「あの人達もそろそろ駄目だね~、もう苦痛に感じてるし~」
ジャブジャブさんが残念そうにそう言う。
「彼らも、誘拐してきた人なんですか?」
俺が彼女にそう問うと、
「そうだよ~。と言っても、あの人はまだ入ってきてそんなに経って無いんだけどね~」
そう答える。
「長い間いる人もいるんですか?」
ジャブジャブさんにそう聞くと、彼女は後ろを歩く八尺様を見て、
「ハッシャクが昔連れてきた人は、結構長くいたかな~。17年くらいいたよ~」
そう答えた。
そんな話をしているうちに狭間の町を通り過ぎ森を抜け、岩肌が目立つ山にたどり着いた。
ここに住んでいるのだろうか?
俺がそう思っていると、凄い勢いで山から何かがこちらに向かってくる…。
「気配を感じて向こうから来てくれたね~」
ジャブジャブさんがそう言うと、地面に勢いそのままで衝突し、
「何の用だ?」
シェルガさんが今地面に衝突したとは思えない優雅な仕草をしながら、鋭い視線を俺達に向けながらそう聞いてきた。
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