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アンリと共に、ジャブジャブの後を付いて行く。
最後尾に、八尺様がアンリの事を見つめてゆっくりと追いかけてくる。
身長が高く、脚が長い故かゆっくりと歩いて来てもあまり距離が離れる事は無い。
そうして4人で狭間の町の端の方までやって来ると、
「ここが私の家~っ!ようこそ~」
ジャブジャブさんはそう言って、樹木の枝に止まった…。
…家らしいモノが見えないのだが、どこに家があるのだろうか?
俺がそう思っていると、
「この木の上で寝てるんですか?」
アンリが少し上にいるジャブジャブさんにそう質問をする。
それを聞いたジャブジャブさんは笑って、
「そんな事無いよ~。この木の中が住む場所なの~!ハーピーだからって、馬鹿にするんじゃないぞ~!」
怒っているんだぞって言う様に、頬を膨らませてアンリの言葉にそう返す。
しかし、ジャブジャブがいう割には窓や玄関の扉が無い様に見えるのだが…。
俺がそう思っていると、
「ぽぽぽぽ」
後ろから声が聞こえて振り返ると、八尺様がジャブジャブさんのいる樹木の上の方を指差す。
まさか、上から入るのか?
俺がそう思っていると、
「上から入るのが好きなんだ~」
ジャブジャブはそう言って、樹木の上の方に飛んでいく…。
おいおい、それは家としてどうなんだ?
来客とかどうしてるんだろう?
そう思いつつ、俺は地面を蹴って樹木の上に移動する。
すると、
「あれ?何で昇ってくるの?」
ジャブジャブさんが、驚いた様子でそう言ってくる。
「あれ、ダメでしたか?」
もしかして失礼だっただろうか?
俺が少し不安になっていると、
「う、ううん!ちょっと惜しいけど、びっくりしちゃった~」
ジャブジャブさんが空笑いをしながら俺にそう言ってくる。
どうやら、何か企んでいた様だ…。
俺がそう思っていると、
「だ、大丈夫ですよ!落としたりしないですから!」
「ぽ、ぽぽ!ぽぽッ!」
下からアンリと八尺様の声が聞こえてくる。
何かあったのかと思い下を覗き込んでみると、羽を出したアンリが八尺様の手を掴んで飛ぼうとしているのだが、それを怖がってか八尺様が髪を振り乱す様に頭を振っている…。
「ハッシャクは待ってるから大丈夫だよ~!気にしないで、アンリ君ちゃん~」
ジャブジャブさんがそう言うと、
「でも、折角ですから一緒に行きましょうよ!」
アンリはアンリで八尺様を連れて行きたいのか、引き下がらずに八尺様の手を掴んだままだ。
…悪くない、長身美女が可愛らしく怖がって髪を振り乱している姿、可愛いのぅ。
俺はそう思いつつ、
「アンリ、流石に無理強いは良くないぞ。彼女が嫌がっているのなら離してあげなさい」
アンリにそう声を掛けると、アンリは残念そうな表情をして八尺様から手を離した。
「ハッシャク的には、アンリ君ちゃんが自分を持ち上げられないと思ってるんだよ~。ハッシャクは背も高いし、ボインボインだもんね~」
ジャブジャブさんが笑いながらそう教えてくれる。
なるほど、アンリに落とされるのが怖かったのか。
「…背は高くないですけど、力は結構ある方なんですよ!」
アンリが少し怒った様にそう言う。
まぁ、アンリは子供みたいな見た目をしているから、そう思われるのも仕方がないだろうけど…。
「アンリ、あまり無理強いは良くない。アンリが力持ちなのを証明するのは、また後で良いだろう」
俺がそう言うと、アンリは分かりましたと言って俺達の元に来る。
そうすると、樹木の幹の中に入れるような扉があり、その扉をジャブジャブさんが開けて家に入ると、凄くシンプルな内装に驚いてしまう。
ベッドしか置いていないのだ。
それ以外の家具が置いておらず、食べ物すら置いていない。
「ここで生活してるんですか?」
思わずそう聞いてしまう程、本当にここに住んでいるのか気になってしまう程生活感が無い。
ベッドも、あまり使われていなさそうだ。
俺がそう思っていると、
「たまに寝る為に来るだけだからね~。場所が場所の所為で来客もほとんど来ないし、私も基本は他の所で寝てるから~」
ジャブジャブさんが笑いながらそう言い、
「誰も来ないっていう点では、私の家は最適だよ~。それに…」
そう続けて、壁である幹に触れるとそこが開き、
「ハッシャクは話が聞こえるよね?」
「ぽぽ」
外にいる八尺様の声を掛け、ジャブジャブさんの問いかけに八尺様が返事をした。
アンリも珍しそうな表情で部屋を見ていると、
「ヴァルダくんもアンリ君ちゃんも、ベッドに座って良いよ~」
ジャブジャブさんがそう言ってくれる。
「ジャブジャブさんはどうするんですか?」
俺がそう聞くと、ジャブジャブは笑って、
「私は大丈夫だよ~。足腰は強いんだから~」
そう答えると、
「2人で話したい事があったんでしょ~?ゆっくりと話してね~。私はハッシャクと少し話してるから気にしないで~」
ジャブジャブさんはそう言って、開けた場所から外にいる八尺様に声を掛け始める。
ジャブジャブさんが気を遣ってくれている姿を見て、彼女を含めて八尺様も良い人達なのだろうと思う。
種の存続の為に必死なのは分かるし、その所為で強引に色々しているのだろうと考える。
俺はそう思いつつ、ジャブジャブさんのベッドに浅く座ると、アンリが俺が座ったのを確認してから同じ様に浅く座る。
すると、
「ヴァルダ様、これからどうしましょうか?」
先にアンリが質問をしてきた。
「そうだな。…まずはアンリの情報操作の件なのだが、それは今の状況次第だと思う。故にまず先に、狭間の町に住人達との友好関係を築く事が重要ではないかと俺は思っている」
俺がそう言うとアンリは、はいっと言いながら頷く。
「ここの人達との友好関係は、隠密に動くには適していると感じる。彼女達に力を貸してもらうために、どうしたら良いだろうか?」
俺がそう疑問を声にすると、
「…やはり、僕が彼女達と婚姻した方が良いんでしょうか…」
アンリがそう呟く。
正直、少し色々と問題はあるが悪い人達では無さそうだしな…。
アンリの言葉に、ジャブジャブさんが完全に俺達の事を見ているのが視界に入る…。
「婚姻関係はともかく、彼女達に俺達と取引する事で得られるメリットを提示しなければいけないな…」
俺はそう言いながら少し考えると、
「私達は種の存続もそうだけど、男の精が食料だよ~」
ジャブジャブさんが、小さな声でそう伝えてきた…。
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