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迫りくる手からどうやって平和的に逃れようかと考える。

目の前にいる人達は、正気では無く何かに憑かれているのではないかと思わせる程に冷静さを無くしている。

俺がそう思っていると、


「騒がしい、何をしている」


まるで威圧されている様な、そんな感覚にさせる程の重圧感がある声が聞こえた。

周りに人がひしめいて姿は見えないが、やはり女性の声だと言う事はすぐに分かった。

すると、


「男を捕獲できたので、これから皆で味見兼本気で食べてしまおうとしていました!」


おそらく俺とアンリを中心にして、外側にいる人が周りの音に消されない様に大きな声を出して報告してくる声が聞こえる。

女性の報告の声がした瞬間、


「静まれ!道を開けろ!」


一喝、慟哭の様な衝撃波を生み出しそうなそんな声がすると、今まで俺とアンリに触れようとしてきた女性達が一瞬で大人しくなり、道を開ける様にそれぞれが左右に分かれた。

すると俺とアンリの前に道が出来、そこから歩いてくる人が見えた。

彼女を見た瞬間に分かる、威厳が服を着て歩いている様な歩き姿に自然と緊張してしまう。

地を踏み締めるその一歩が、大型モンスターに匹敵するのではないかと思ってしまう程だ。

俺がそう思っていると、


「シェルガ様」

「マズい、あの方に目を付けられたら終わりだ…」


後ろにいた女性達の声でそう話しているのが聞こえた。

そんなに恐ろしい人なのだろうか?

見た目は、凄く恰好良い感じだが。

おそらく、レオノーラさんと同じ龍人だと思うのだが…。

レオノーラさんと違い、龍としての特徴がよく見える。

帝都で生活するから、あえて人に一番近い姿をしているのかもしれないな。

俺がそう思っていると、女性は遂に俺とアンリの目の前にやって来た。

頭から生えている4本の角、背中から拡がっている翼、肘と膝から先は龍の特徴が出ており鋭い鉤爪が光って見える。

龍の体の部分は漆黒の鱗に覆われている所為で上品に見えるが、反面人としての部分は褐色の肌を結構露出しており目のやり場に困ってしまう。

髪は濃い紫色をして長く、俺とアンリを見ている瞳は警戒している所為か凄く鋭い。

垂れている髪の隙間から僅かにだけ見える尻尾の先に、少し他の鱗とは硬さが違いそうな先端をしており、それだけでも人を刺すのには十分な鋭さがありそうだ。

それに尻尾の先端から滴り落ちている液体が、地面に落ちて何やら薄い瘴気の様な煙を出している…。


「まず先に、我の仲間が失礼な事を詫びよう」


俺が彼女の姿に夢中になっていると、彼女は眼を閉じて謝罪をしてくる。


「いえ、一応危害を加えられたという訳では無いので、気にしないでください」


俺がそう言うと、彼女は閉じていた瞳を開け、


「歓迎しよう。ようこそ存在が曖昧な者が集まる、狭間の町へ」


そう言ってきた。

存在が曖昧な者が集まる?

どういう事だ?

目の前の彼女の言葉が気になってそう思っていると、


「ここが貴様達の楽園だ」


龍人の彼女がそう言い、周りの女性達もその言葉に興奮し大きな歓声を上げる。

俺とアンリの楽園?

ますます意味が分からない、俺個人としては楽園と言っても過言ではないが、アンリからしたらそこまで楽園ではないだろう。

俺がそう思っていると、


「我はこの白髪の男を貰う。お前達はこの子供の方が良いだろう?」


女性は少し顔を横に動かして、周りにいる女性達にそう問う。

その言葉に、更に声が大きくなっていく女性達…。

いくら俺でも、亜人達が狂喜乱舞している光景は少し引いてしまうぞ…。

俺はそう思いつつも、


「待ってください。俺とアンリは貴女達と話し合いに来ただけなんです」


まずは落ち着いて話し合いができる環境にしたいと思い、女性に話を切り出す。

すると、


「我は話し合いなどするつもりは無い」


女性は不機嫌そうな表情でそう言い切った。

先程の歓迎ムードから一転、今にも襲いかかって来そうな威圧感を感じる…。

周りの女性達の感じからしても、彼女がここの主的な立ち位置なのは理解できる。


「…では、俺とアンリは帰らせてもらいます。ここへは、話し合いをする為に来たのですが、それが出来ないのならここに留まる理由は無いですから」


俺はそう言って一礼をすると、


「我は帰って良いなど言ってはいない。貴様達はここで、我らの伴侶として交わり続けるしか選択肢は無い」


あまりにも身勝手な言葉に、俺は思考が停止してしまう。

つまり、アンリを連れて来た理由って…。

俺はそう思いながら、隣で周りの女性を見ては少し怯えた表情をするアンリに視線を送る。

なるほど、確かにこの状況はアンリ1人では恐怖を感じるのは仕方がない。

女性達の視線が、アンリを舐める様に上から下へ、下から上へと何度も往復している。

アンリが大人気なのは良い事だとは思うが、これは流石に喜べる状況じゃないな。

俺はそう思いつつ、


「アンリのことも考えて、それは寛容出来る話では無いですね。申し訳ないですが、帰らせて頂きます」


少し嘘を混ぜてそう言う。

正直に言えば、帰る方法はわからない。

しかし、アンリと共に塔に戻る事は出来る。

この場は一度逃げ、頃合いを見計らって脱出する方法を考えるのには十分な時間があるだろう。

俺がそう思っていると、女性から威圧スキルが発動されたのを察知する。

周りの女性達も、威圧スキルに圧倒されて静かになった。


「帰らせないと、言ったはずだが?」


女性の少し苛立っている様子が、言葉から伝わってくる。


「では、話し合いに応じてください」


戦うつもりは無いので、危険視されない程度に俺も威圧スキルを発動させながら女性の言葉に答える。

すると、


「………その口を開けないようにすれば問題ないか」


まさかの戦闘態勢に移行し始めた?!

たいして挑発した訳でもないのに、いきなり攻撃するつもりなのか!

そう思った瞬間、


「まぁまぁ良いじゃんシェルガ~!話くらい聞いてもさ~」


まさかの最初に道案内をしてくれたハーピーが気楽そうにそう言う。

それを聞いた女性は、


「…何故わざわざ面倒な事をしなければならない。黙らせて押し倒せば良いだけではないか」


真剣な表情で、そんな事を言い始めた…。

それに笑いながら、


「でもでも~、そうやって前に来た人が発狂しちゃったじゃ~ん?今回はもっと優しくしてあげた方が、好感触で交わってくれるかもしれないよ~」


ハーピーも凄い事を言う…。

すると、ハーピーの言葉に説得力があったのか女性は少し考える素振りを見せ、


「…簡略して話せ。我は話が長い事は嫌いだ」


そう答えた………。


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