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つい先程歩いて見ていた青々とした森とは全然異なり、毒々しい色の木々が生えている。

今までいたジークの町並みとは正反対の景色に、俺は奇襲が来ないか警戒する。

すると、


「…ヴァルダ様、いますよね?」


アンリが少し不安そうな声でそう呟く。

一応、狭間の町というのには来れた可能性があり、


「すぐ後ろにいるぞ」


俺はあまり大きな声は出さずにそう答える。

俺の言葉を聞いたアンリは、少し安心した様子を見せつつ、


「ここは、前にも来た事があります。無事に狭間の町へ来れました」


そう答える。

アンリの言葉を聞いた俺は、アンジェの指輪を外して袋の中に戻す。


「それにしても毒々しい色をしているな…。…一本切っても良いだろうか?」


俺は周りの木々を見つめながらそう言うと、


「それは、ここにいる人達に聞いてからの方が良いと思いますよ」


アンリにそう注意されてしまった。


「そうだな。それより、これからどうするか?変に移動するのは止めておくべきか?」


俺がそうアンリに聞いてみると、


「前に来た時は、迎えに来てくれた人がいたんですけど…」


アンリがそう答えて、辺りをキョロキョロと見回し始める。

しかし、俺はここへ来た時から気配察知スキルを使用しているが、辺りに他の生き物の気配はしていない。

アンリを連れてくる時に、俺が一緒にいる事を察知して一度態勢を整えているのだろうか?

俺がそう思っていると、


「ぽぽ?」


またもやいきなり近くに出現した女性、八尺様に驚く。

すると、


「何やってるのデカ女ッ!?早く男を連れて行こうよッ!食べたい食べたい!」


毒々しい木の上に1人のハーピーが止まる。

見ると、アンリを呼び戻した時に彼が着けていたモコモコの羽毛と同じ様な羽をしている。


「あ、あの人、凄くくっ付いてきて怖いんですよ…」


アンリがそう言って、少し体を縮ませる。

ハーピーを見ると、顔を紅く染まらせて唇を湿らせる様に舌なめずりをしている…。

息も荒く、ハァハァと少し離れている俺の元まで聞こえてくる。

何だろう、食欲と言うよりも違う欲でアンリを見ている様な…。

俺がそう思っていると、


「ぽぽ。ぽぽぽぽぽ」


八尺様が木の上にいるハーピーに何かを言っている。

それを聞いたハーピーは、その言葉を聞いて頭を思いっきり横に振るうと、


「やだやだッ!私は今美味しいあの子供を食べたいんだッ!お前も冷静にしてるが、速くその子供を食べたくて仕方がないのだろうッ!」


我儘をいう子供の様な様子で、そんな怖い事を言う…。

ハーピーの言葉を聞いた八尺様は、少し顔を紅く染めて内股を擦る様にモジモジし始める。

おぉ、身長が高い女性が恥ずかしがっている姿は可愛く見えるものなんだな…。

種族は分からないが、初めてと言って良いくらい耳や爪、毛並みや尻尾などでは無く態度や様子で人を可愛く思えたかもしれないな。

俺はそう考えて、今考える事では無いと判断し思考を真面目な方向に持ち直し、


「待ってくれ、アンリは俺の大事な家族だ。危害を加えると言うなら、こちらも黙っておけない」


そうアンリをうるうるさせた目で見つめている2人に声を掛ける。

しかし、声をしっかりと発したにも関わらず、


「「………」」


2人はただアンリの事を見つめている…。

…ならばこれならどうだろうか?

俺はある作戦を思いつき、


「アンリ、2人を町か何かに案内してくれる様に頼んでくれないか?」


アンリにそうお願いをする。

それを聞いたアンリは、分かりましたと言ってから少し前に出て、


「あ、あの…。ここではゆっくりとは出来ないので、出来ればあの町に連れて行って欲しい…んですけど…」


低姿勢でお願いをした。

それを聞いた2人は互いの顔を一度見た後、


「ぽぽ、ぽぽぽぽぽ」

「じゃあすぐに行くよッ!早く早くッ!」


まるで慌てる様に忙しなく道案内をし始める。

俺とアンリは警戒しながらも彼女達に付いて行き、毒々しい色をしている森を歩き進める。

それにしても木に視線が持っていかれたが、改めて見ると草も紫色に赤色の模様がある凄まじい色をしているし、キノコなども毒キノコにしか見えない色をしている…。

それに、明るいのに空は夜の様に真っ黒なのに何故明るく見えるのだろうか?

謎が深まるばかりだな…。

そう思いながら、空を飛びながらも俺とアンリに視線を送ってくるのだが、アンリに対してだけ熱視線を送っている。

アンリに対しての熱量は、どこから来るのだろうか?

食べたいとか言っている割には、普通に町まで案内してくれようとしているし、何か裏があるのだろうか?

俺がそう思っていると、向かっていた先に建物が見え始める。

どうやら、彼女達はしっかりと案内してくれていたようだ。

もしかしたら俺達を騙してくるかもと思っていたが、杞憂だったようだな。

俺は少し前を進んでいる2人の認識を改めると、


「大丈夫かアンリ?」


凄く行きたく無さそうにしているアンリに声を掛けた。

俺の問いに対してアンリは、


「だ、大丈夫です…。怖いですけど、我慢します」


少し顔色を悪くしながらそう答えた。

アンリがここまで怖がる事って、一体何があそこにはあるんだ…。

そう思っているうちに森を抜けると、目の前に広がっているのはジーグと同じ様な建物が沢山並んでいた。

ここが、狭間の町なのか?

俺がそう思った瞬間、


「男の匂いだッ!」

「男を連れてきたのかッ!」

「お゛ぉ゛どぉ゛ごぉ゛ォォォッッ!!」


静かだった町が、一気に男だ男だと騒がしくなった。

俺とアンリを取り囲む様に狭間の町の住人であろう人達が集まってくるが、周りにいる人達が皆女性だという事が気になった。

すると、


「早く食わせてッ!」

「あんたは前に共有の男吸いすぎたでしょッ!今回の獲物はお預けッ!」

「私は小さい子が良いッ!」


鬼気迫る勢いで、俺とアンリを捕まえようと手を伸ばしてくる状況に俺はある意味恐怖心を抱き、


「アンリ、前に1人で来た時もこうだったのか?」


俺は伸ばされてきた手に捕まらない様にしているアンリにそう聞くと、


「そうなんです…。服脱がそうとしてくるし、反対に服脱ごうとしてくる人もいて怖かったです」


アンリは俺に身を寄せるようにしながらそう答えた…。


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