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209頁

アンリが落ち着いてくると、センジンさんは追加で座布団をアンリの為に持って来てくれた。

それにアンリは座り、体中に付いている羽毛を外して目の前の床に置くと、


「助けて頂き、ありがとうございますヴァルダ様」


アンリが改めてお礼の言葉を伝えてくる。


「気にするな、何か俺もアンリも予想出来ない事態に巻き込まれた様なものだろう」


俺がアンリにそう伝えると、アンリは安心した様な顔つきから、少し焦った様な表情に変化する。

そして、


「そうだヴァルダ様!助けてください!このままじゃ僕、よく分からないですけど結婚させられてしまいます!」


そう言ってきた。

突然の、予想もしていなかったアンリの言葉に俺は意識を一瞬失ってしまったが、何とか冷静さを取り戻し、


「相手は誰なんだ?俺は相手の事を一切知らないぞ、そんな結婚など認められない!」


そう静かに言い切った。

それを聞いたセンジンさんが、


「落ち着けヴァルダさん?凄く動揺してるぞ?」


苦笑しながらそう言ってくる。

センジンさんに指摘され、俺は再度精神を落ち着かせるために深呼吸をする。

そうして先程の発言がおかしい事にしっかりと気づき反省をし、


「どうしてその様な事態になっているか、説明をしてくれ」


アンリにしっかりとお願いをする事が出来た。

アンリが結婚する事に反対する気はない、アンリだって生きているのだ。

好きな相手が出来ていてもおかしくない。

しかし、どうしてその様な状況になっているのか知りたい。

俺がそう思っていると、


「実は、ヴァルダ様の指示に従い剣聖さん達の情報を操作している時にとても大きな女性が、「ぽぽぽぽ」って言って僕に触れた瞬間、今まで僕がいた場所では無い不明な場所に一瞬で移動してたんです。そこからは一斉に色んな人達が歓迎してくれて、でも僕はヴァルダ様の為に動かなくてはいけないから、やるべき事があるって言って帰ろうとしたら、帰り道が分からなくて…。帰り道を聞こうとしても誰も教えてくれず、途方に暮れてたら1人のハーピーの方に戻る為なら、私達と結婚するしかないよって言われて…」


アンリが俺の質問に答えてくれるが、アンリの説明を聞いても状況がよく分からない。

とりあえず、アンリが誘拐されていた事は理解した。

だが、何で結婚なんて言ったのだろう?

まぁ、アンリは外見は美少女みたいな可愛らしい男の子だから、気持ちが分からない訳では無いが…。

それにアンリである必要性もあったのだろうか?

ますます分からなくなってくる。

俺がそう思い首を傾げていると、


「おそらく、アンリが連れていかれたのは狭間の町だ」


センジンさんがそう言ってきた。


「「狭間の町?」」


俺とアンリが声を揃えてセンジンさんの言った言葉を復唱すると、センジンさんは一度頷いてから、


「たまに起きる誘拐騒ぎの元凶だ。行き方も分からず、どの様な者達が生きているのかも分からない町だ。帰ってきた者もいるが、どいつも夢を見ていたようだと言い数ヶ月は動くのすら億劫になると聞いた」


そう説明してくれる。

そんな所に、アンリが連れて行かれたのか。


「おそらくアンリは、やるべき事があるという強い決心があったから狭間の町の奴らの誘いに乗らずに、しっかりとした意識を持ちながら生還出来たんだろう」


センジンさんは、アンリの事を見ながらそう分析した事を言ってくる。

それにしても、行き方も分からない町なんて面白いな。

俺がそう思っていると、


「どうしましょうヴァルダ様…。僕が結婚するまで、逃がすつもりは無いって言ってました…」


不安そうにそう言ってくるアンリ。

アンリの言葉通りに受け取るのなら、アンリがジーグに戻って来たのを知った狭間の町の住人がアンリを攫いにまた来る可能性が高い。

アンリは剣聖達の情報操作で忙しく、その者達をまともに相手をしながらそんな繊細な事をさせるのは危険である。

俺はそう考え、


「その狭間の町の隠密力は、少し気になる。それとどんな亜人族がいるのかも知りたい。…俺も連れて行って貰う事は出来るのだろうか?」


返答をしてもらうつもりは無いが、俺の考えを2人に聞いて貰おうと独り言を発する。

俺の独り言を聞いたセンジンさんが、


「待て待て、アンリはヴァルダさんが呼び戻す事が出来たから無事で帰って来れたが、あんたは違うだろう?」


そう返してくる。

確かに、俺自身が狭間の町の住人に認められなければ帰る事が出来ない可能性もある。

俺がそう思っていると、


「…ヴァルダ様、僕はッ」

「ぽぽぽ、ぽぽぽぽ?」


アンリが何かを言おうとして、それを遮る様に変な言葉が聞こえてきた…。

慌てて声が聞こえた方に向くと、女性が屈んで部屋の様子を見ていた。

屈ませた体を見るに、エルヴァンよりも背が高いと予想出来る。

と言うか、脚長ッ!

俺がそんなくだらない事を考えていると、


「まさか、八尺様かッ!」


センジンさんが、どこかで聞いた名前を発する。

八尺様………、あ、昔ネットで亜人関係の事を調べた時に出てきたっけ。

ただ背が高い女性ってイメージだったから、あまり琴線に触れる事は無かったが…。

というか、何で日本の怪異なんかがいるんだ?

俺がそう思っていると、彼女は俺の斜め後ろに立っているアンリを見た瞬間、


「ぽぽっ」


にこやかに笑うと、すぅ~っと透明に消える様に姿を消した。

気配察知のスキルを使用するが、もう近くに彼女の反応は無い…。

動くのが速いと言うよりも、本当に消えてしまった可能性があるな。


「アンリ、大丈夫だったか?」


俺がそう声を掛けると、


「は、はい。あの人が、僕を連れて行った人です。…また迎えに来たって事ですよね?」


アンリはため息交じりにそう言う。

すると、


「まさか、本当に実在していたなんて…」


センジンさんが少し怯えている様な表情をする。

戦闘系の彼が、怯えているのは珍しい。

何でも敵だったら斬り尽くす勢いだと思っていたが…。

俺は少し失礼な事を考えつつ、


「何であの人の正体を知ってるんですか?」


センジンさんにそう聞く。

すると彼は、


「爺さんが、昔ガキだった俺や近所の仲間達に悪い事をしたら、手に触れられないオバケやヨウカイ、カイイが襲いに来るって言ってたからだ」


俺の問いにそう答えてくれた。


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