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男は俺の事を見ると、短く悲鳴を出した後震える手で剣を掴み、俺に向けてくる。
だが、
「そんなモノで何をするつもりだ?」
剣は真ん中辺りから折れており、剣先は無い。
俺がそう問うと、
「ま、魔族の分際で人族に話しかけてくるんじゃねえ…」
男は俺にそう言ってくる。
魔族でないと証明するよりも早く、俺は目の前で剣を向けてくる男が言った発言に不快感を感じる。
この男は魔族を下に見ている。
…助けようかと思ったが、こんな奴はどうでも良いな。
さっさと死んでくれ。
俺はそう思い、何も言わずに来た道を戻る。
男も俺の事を危険視している所為か、わざわざ声を掛けてくる事はない。
そうして歩いていると、
「ヴァルダ様、どうしたのでしょうか?」
アレクシアが迎えに来てくれる。
「いや、特に問題はない。先を急ごう」
俺がそう言ってアレクシアの背中に手を乗せた瞬間、
「お、おいそこの亜人ッ!お前、この俺を乗せろッ!」
後ろから大きな声が聞こえた。
この場にいるのは、俺とアレクシアとボロボロの男。
つまり、大きな声を出したのはボロボロの男だ。
俺が振り返ると足が折れているのか、ボロボロの男は這いずる様に移動して、こちらに近づいてくる。
「何なんですかお前は。私はヴァルダ様以外に命令される様な事はありません。…薄汚いクソが…」
アレクシアが男にきっぱりとそう言う。
…最後の言葉も聞こえてたからなアレクシア。
綺麗系美人が汚い言葉を使う…一部の人に需要がありそうだ。
俺がそんなくだらない事を考えていると、
「あ、亜人の分際がッ!人でもない獣でもない半端者の分際で舐めた事……ひいぃぃッッッ!!!」
男がアレクシアを侮辱してきた。
俺の大切な家族を貶すこの男を、今ここで生かす必要などない。
俺がイライラしながら近づこうとすると、男が白目を剥いて地面に倒れる。
何が起きたのか分からずに俺が呆然としていると、排泄物の刺激臭が漂ってきた。
何故かは知らないが、色々と漏らしながら倒れたようだ。
俺がそう思っていると、
「ヴァ、ヴァルダ様…」
後ろから震える声が聞こえる。
振り返ると、怯えた表情で震えているアレクシアが俺の事を見ている。
見ると、足がガクガク震えており立っているのがやっとの様だ。
「どうしたアレクシア!?」
俺が慌ててそう声をかけると、アレクシアが膝を曲げて地に座る。
大きく深呼吸をしているアレクシアを、俺は彼女の人の部分の背中を撫でて落ち着かせようとする事しか出来ない。
それから少し経ち、アレクシアが落ち着いたのを確認してから、
「もう大丈夫か?」
俺がそう聞く。
「は、はい。申し訳ありませんヴァルダ様。もう大丈夫です」
そう言って彼女が立ち上がると、アレクシアの下にあった地面と草が少し光っているのが見える。
…汗だよな、汗に決まってるよな!
俺はそう思いながら視線を地面からアレクシアに移すと、
「それにしても、ヴァルダ様の威圧は凄かったです…。死が空気に乗って体を包み込み体内に入り込んでいる用に感じました。立ち向かう事すら許さない程圧倒的でした」
そう言ってきた。
…もしかして原因は俺だったのか?
威圧スキルは取得しているが、まさかあの時に発動していたのか。
そう思っていると、
「あれに慣れれば、ヴァルダ様の殺意に包まれるという私たちの夢が叶うんですね…」
アレクシアがそんな変な事を言ってくる…。
「何だその夢は?」
俺がそう質問すると、アレクシアが身を屈めてくれる。
俺はアレクシアに跨るとゆっくりと走り出し、
「ヴァルダ様と契約している私達は、自分達の全てをヴァルダ様に委ねています。生も死も…です。ですがヴァルダ様はお優しいですから、私達に対して攻撃的ではありません。そんなヴァルダ様が授けて下さる死の恐怖を味わうためには、ヴァルダ様が威圧のスキルをお使いになる瞬間にその場にいる事です。…今日はとてもいい日になりました。塔へ帰ったら皆に自慢します。…嗚呼、思い出しただけでも果ててしまいそうです…」
俺にそう説明してくれるのだが、正直よく分からなかった。
よく分からなかったが、とりあえず何か契約している皆がヤバい趣味にはまり込んでしまいそうだ。
…何か対策をしておかないとな…。
あと今息が荒いのは走ってるからだよね?
そんな感じにアレクシアの上で色々と考えている内に、
「ヴァルダ様、見えてきました」
アレクシアが脚を止めて声を掛けてくれる。
見ると、壁に囲まれた町が見える。
流石に栄えている街だと防衛も強化されているな。
俺はそう思いながら、とりあえず日銭くらい稼がないとこれからの生活に色々と支障が出てしまう。
ここよりもっと栄えているのが王都とかなのかな?
俺はそんなことを考えて、
「アレクシア、ここまで運んでくれてありがとう。本当なら一緒に行きたいんだが、さっきの男の事も考えて、お前は戻っていてくれ」
アレクシアにそう言うと、
「分かりましたヴァルダ様。お気をつけて」
アレクシアはそう言って頭を下げる。
「帰還」
俺が本の中の世界を開いてアレクシアを帰還させると、街に向けて歩き出す。
ワクワクすると同時に、緊張もする。
それに、さっきの出会った男の様な人が大勢いるところだ。
威圧スキルを乱発しないようにしないといけない。
俺がそう思いながら歩き続け、遂に街の出入り口の門に辿り着くとそこには、
「「……」」
門番である男が2人と、門の側に立っている小屋の中にいる数人が黙って俺を見ている。
警戒されているのか?
今までの様子を見ると、今の俺の外見は魔族に間違われているからな。
だが、警戒しているなら何で声を掛けて来ないのだろう?
俺はそう思いつつ、門番の横を通り街へと入った。
そしてそこには普通に賑わい活き活きとした人達と、そんな人達に繋がれ表情が死んでいたり苦しんでいる亜人達が目に映った。
…どうやら、俺が思っていた以上に身分制度は深刻なのかもしれない。
俺はそう思い、怒って威圧スキルを発動させないように深呼吸をする。
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