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「まずは1人っと…」


港で情報を得たアンリは、すぐにセンジンの屋敷の近くにある家に行くと、そこに男から聞いた通りの服装の男が出てきて、アンリは即座に男の首筋に噛みつき眷属にした。

男はアンリに首筋を噛まれた衝撃で後ろに倒れ込むが、そんな驚いた衝撃もすぐに治まり、今までアンリが眷属にしてきた男達同様に虚ろな表情でアンリの指示を待つ。

そんな男に、アンリは今まで通り同じ質問をして他の剣聖の仲間の情報を聞き出すのだが、彼は最初に眷属にした男と同様に、監視の任にしか就いていないらしく知っている者も港の男と自分達を随時監視していた最初の男だけだと答えた。

その答えに残念な表情をしつつ、


「まさかここまで徹底して情報を隠すなんて…。剣聖さんは凄いですね…」


敵である剣聖を褒めてしまう程、情報が集まらない。

思っていた以上に時間が掛かりそうな状況にアンリはため息を吐きつつ、


「今まで通りセンジンさんの屋敷の監視をしていて下さい。ただし、情報はあまり今の状況を動かさない程度で良いですからね」


新たに眷属にした男にそう指示を出し、次の目標へと向かい始める。


「えっと確か、基本的には宿屋にいるんですよね…」


アンリは男からの情報を思い出しながら独り言を呟きつつ歩き続ける。

男からの情報で聞いた次の目標の仲間の行動範囲は、基本的には宿屋に居て、情報がある程度集まり纏めてから書類を帝都に送るらしい。

アンリは港での男の言葉を思い出しながら宿屋に行き、そこで問題が発生した。

ジーグの宿屋は二ヶ所あり、一軒はセンジンの屋敷の様な大きな平屋の建物なのだが、もう一軒は帝都の様な二階建ての造りをしている。

今回の剣聖の仲間は二階建ての宿屋に泊まっているらしく、アンリは少し警戒してしまう。

平屋の宿屋も二階建ての宿屋もアンリもエルヴァンと泊まった事があり、内部の構造を理解している。

その中で問題だったのは、二階建ての吹き抜けであり店主から扉の前の様子が筒抜けなのだ。

その状況で、首筋に噛みつくのは少し難しい。

センジンの客人としてジーグにいるアンリが、宿屋でそんな事をしたら嫌でも噂になってしまう。

店主は剣聖の仲間では無い、彼を眷属にするのはヴァルダも望んでいないのはアンリも分かっている。

それ故に、どうしようかアンリは考えてしまう。

この際、窓から入ってしまおうか?

いやいや、それじゃあ変に目立ってしまう。

ただでさえ二階建ての建物はジーグでは珍しい。


「うぅ~ん、どうしたら良いでしょうか…」


そう呟きながら、アンリは正面の入り口から脇に逸れて建物の二階が見える位置で立ち尽くしてしまう。

すると、


「…誰だ!さっきから窓を叩いてくる奴はッ?!」


アンリが見ていた二階の窓が勢い良く開け放たれて、男が果物か何かを切る為のナイフを外に向けて怒号を放った。

アンリはその怒鳴っている男を見て、情報と同じ男だと理解し、一瞬でその窓から男を巻き込む様に勢いよく室内に侵入した!

男は衝撃で床に倒れるが、そこは騎士故か即座に反応し手に持っているナイフで応戦しようと試みるが、それよりも速くアンリが吸血する方が速かった。

男の首筋に噛みついたアンリはスキルを使用しながら、さっきのこの男はどうしてあんなにも怒っていたのだろうかと考える。

そうして男を眷属にすると、


「何であんなに怒ってたんですか?」


まず先に、先程の様子について質問を始めた。

アンリの質問を聞いた男は、


「いつもの様に帝都に送る書類などを書く為に作業をしていましたら、最初は小さな音で窓がコツコツ鳴りました。ガキか何かが石でも投げて遊んでやがるのかと思ったら、音がどんどん大きくなっていき最終的にはバンバンと掌で叩いている様な音になり、集中も出来なくなってイラッとして怒鳴りました。人影を見た気がしますが、正直あり得ない気持ちも今はあります。亜人族ではあまりに背が高いですし、巨人族では無かったです…」


素直にそう質問に答えた。

質問の答えを聞いたアンリは、男の言っている事が真実では無いと確信する。

自分が見ていた窓の付近に人影は無かったし、近くで子供達などが窓に向かって物を投げている姿も見ていない。

しかし眷属にしっかりとした状態で嘘は吐けないはず、なのに彼はアンリが見た光景とは違う事を言ってくる。


「どういう事なんですか~?流石に僕も分からないですよ!」

「申し訳ありません」


アンリが男にそう文句を言うと、男は虚ろな表情で謝罪をしてくる。

謝罪の言葉が聞きたかった訳では無いアンリは、とりあえずこの人の情報が本当かどうかを確認する為に、部屋のテーブルに会った書類を男に手渡すと、


「これを口に出して読んで下さい」


そう指示を出した。

もし何かしらの方法で、眷属状態でも嘘の情報を流す様に出来るのなら、ただ質問に答えて貰うだけでは信用できない。

アンリはそう思い、乱雑に置かれていた書類を全て男に朗読させた。

そうして剣聖側が今集めている情報を聞き出したアンリは、


「予想以上に剣聖さん達はジーグの情報を得ていますね…。これは早くしないと、先手を打たれてしまうかもしれないです…」


少し焦りながらそう呟き、男に偽の情報を纏める様に命令を出した。


「最後に、貴方は剣聖さんに会った事がありますか?」


アンリが窓から出ていこうとして、そう質問をすると、


「俺は会った事がありませんが、俺に全ての情報を置いて行く人が剣聖様の直属の部下です」


最初は首を振りながら答えたが、次の言葉をとても重要な言葉であった。

それを聞いたアンリは、相手の特徴を聞き出した後窓から飛び出した。

宿屋の男から得た情報と、剣聖に繋がる者の外見の特徴や服装を聞いたアンリは、一度センジンの屋敷に戻ろうと思い歩みを進める。

そうしてセンジンの屋敷に着いたアンリは、屋敷の玄関の扉をノックしていつも開けてくれるユキを待つ。

センジンはこの時間、他の亜人族の人達と話し合いをしているか、鍛錬を行っている事が多い。

その為、留守を任されているユキさんに開けて貰うしかなかった。

そうして扉の向こうからユキさんが歩いてくる音が聞こえてきた瞬間、


「ぽぽっ…」


アンリの後ろから変わった笑い声が聞こえて、アンリは後ろを向く。

その瞬間、アンリの中で背が高いエルヴァンよりも身長がある人の姿を一瞬見かけるが、


「お待たせしましたアンリさん」


玄関を開けてくれた声に反応して、アンリはもう一度前を向いて、


「ありがとうございます」


とお礼を言った後もう一度背後を見るが、そこには何もいなかった。


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