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今から一年前、俺の全てを費やしたゲームのサービス終了が決定した。


「Unfinished Fantasy Online」、通称「UFO」


10年しか続かなかったが、それは仕方のない事だと思っている。

このゲームが始まった頃は、まだVRMMO自体が無いに等しかったのだ。

それから5年もすれば様々なゲーム会社がVRのゲームのサービスを開始し、それをきっかけにこの世界からプレイヤーはより自分の好みに合う世界へと行ってしまった。

Unfinishedと言っているが、終わってしまうのは皮肉な感じだ。

この世界はファンタジー世界で、魔王アンシエルが従えているモンスターや野良モンスターと戦う事が主だ。

大体はストーリー上の敵が魔王の従えているモンスターの戦いで、レベル上げなどのフリークエストは野良モンスターと戦う感じだった。

しかし選べる職業が、全部で4つしかない。

これが他のゲームに敗けた原因の1つだと思っている。

他のゲームでは最低でも6つくらいあるのだが、この世界は騎士ナイト魔法使い(ウィザード)召喚士サモナー錬金術師アルケミストの4つだけだ。

しかも錬金術師アルケミストは完全な生産系の職業だ。

つまり、敵と戦うのは3つの職業じゃないといけない。

これの所為でソロプレイが厳しいのだ。

敵の行動パターンと相性の良いスキルがあれば話は別だが、それでも苦戦はする。

故に協力プレイ前提の所為で、仲間との時間が合わないなどの問題が発生すると辛い。

そんな世界ではあったが、アイテムやモンスターの多さは他のゲームにも負けていない。

なにより、錬金術師アルケミストの装備錬金が凄い。

自作したアイテムが使えるのだ。

装備の外観も、いくつものパターンから選んだり好きな装備の一部を合体させたりと楽しかった。

合成なども出来て、初心者の剣を当時最強の剣と合成してPVPで油断させて倒した事もあった。

様々な思い出は沢山あるがどれも俺にとっては楽しく、かけがえのないモノだ。

そんな大好きだったゲームが、明日終わってしまう…。





「ぐッ…」

「ほんとコイツ、見ていてイライラしてくるな!」


「UFO」のサービス終了日なのに、最悪だ。


「それにしても、コイツって何でこんなに見ていてイライラしてくるんだろうな~?」

「知らね。とりあえず殴っておけばいいんじゃねえか?な?おい!」

「がッ!」


何で俺は蹴られているんだ?

昔からイジメみたいな事に巻き込まれて、痛い目を見ている。

現に今も、同じクラスの同級生に殴ったり蹴られたりしている。

そんな事より、早く帰って「UFO」したい。

最後なんだから、アイテム整理とか知り合いに最後の挨拶とかしたい。

こんな奴らに蹴られている場合じゃないんだ。


「おい!何か言ったらどうなんだよ!」

「ブッ…」


左頬を踏み付けられて、変な声が出る。

あぁ、こんな奴らがいる学校ならもう少し勉強しておけば…。

少しだけでも成績を上げておけば…。

…いや、「UFO」のする時間が無くなるのは避けないと。

その結果がこれなんだから、仕方がないな。

こういう奴らは、自分と違う存在を排除しようとしてくるんだ。

それが立場や存在が下だと判断したら、実力行使をして排除しようとしてくる。

今までも何回も見てきた、体験してきた光景だ。

問題無い、いつも通りだ。

俺は横に倒れながら思う。

後3発くらいで、この排除しようとする行為は終わる。




「おっ!大輔、連絡来たぞ。久美子が駅前で待ってるってよ」

「チッ!なら仕方ないな」


彼らはそう言うと、俺を置いてさっさとその場から立ち去っていく。

結局、5発だった…。

…全く、俺なんかよりも彼女を相手して上げろよ。

その方が俺もお前らも彼女も幸せなんだからよ…。

いや、そんな事を考えている場合じゃない!

早く帰って「UFO」したい!

俺はそう思うと、痛む体を起こして体がちゃんと動くか確認する。

これで骨折とかしたら、訴えてやれるのにな。

そして入院して、「UFO」やり放題!

なんて生活も夢見てたな…。

俺はそう思いながら歩き始め、少しずつ走り出す。

そうして痛む体を酷使して走って帰ってきた結果、あいつらに殴られたりしない時間とあまり変わらない時間で帰る事が出来た。

走っている時に、道で立ち話をしている奥様方達から変な目で見られたが、気にしてはいけない。

人生、他人の目なんて気にしすぎると生きていけない。


「ただいま~」


俺は家を鍵を開けて家の中に入る。

ま、誰もいないけど。

まだ小さい頃、両親は車の事故で亡くなった。

俺も一緒に車に乗っていたが、奇跡的に生き残ったんだ。

それからは伯父さんと伯母さんが保護者になってくれて、中学生まで面倒を見てくれた良い人達だ。

高校生になるのと同時に、伯父さん達が遺産を渡してきて、


「これからは君の自由だ。ここで暮らすのも良いし、君の家はまだ残っている」


そう言って来たので、元の自分の家に戻って来た。

掃除とかもされていて、俺はすぐにでも帰ってこれた。

別に伯父さん達の家にいたくなかった訳ではないし、追い出された訳でも無い。

伯父さん達は俺が家を出ると言った時に、寂しそうな顔をしていたし、伯母さんなんか泣いていた。

それでもこちらに戻ってきたのは、この家に戻って来たかったのと伯父さん達の生活をこれ以上邪魔したくないと思ったからだ。

従妹は普段、あまり話しかけるなとか無視をしてくるのに、俺が家を出るときには、


「た、たまには顔見せに来てよね…」


そう言ってくれたのだ。

なんて言うか、俺も泣きそうになったのを覚えている。

俺は過去の事を思い出しながら、軽く夕飯を食べて風呂に入ってから仏壇に手を合わせて、


「おやすみなさい」


そう両親に挨拶してから自室へ入る。

そして、自室に置かれているベッドに横になると、


「さて、今日で最後なんだ。存分に楽しむぞ!」


そう独り言を呟いて目を閉じ、


「スタート」


「UFO」の世界へ入るための言葉を口にする。

その瞬間、暗い空間に個人識別のIDとパスワードを入力する画面が出てくる。

これが目の前に出ている時点で、俺はもうゲームの世界に入っている。

俺はパスワードを入力すると、目の前が一気に眩しくなる!


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